事件のその後
「長くお休みをいただいてしまい申し訳ありません」
結局私は一ヶ月ほど休んだ後に図書館の仕事へ復帰した。
社会人としてはかなり長期の休みということもあってグノシー伯には迷惑をかけてしまったと思う。
それでもグノシー伯は、体調が良くなってよかったと笑って受け入れてくれた。
「なぁに。人は誰でも休みが必要な時があるんじゃ。気にすることはない」
その言葉に、たとえ仕事ができなかったとしてもここにいていいのだと、そんな安心感を覚えた。
「詳細はベラルド卿から聞いておる。その後の処遇はすでに決まったんじゃろう?」
「はい」
そう。
ベラルド卿はあの後すぐに屋敷の捜索を済ませ、さらにはもろもろの書類も整えた上でヴァニタス家を裁判にかけた。
事件の発覚から裁判までがかなり早かったから、こちらの世界ではそういうものなのかと思いきやそうではないと知ったのは裁判が終わってからだ。
どうやらベラルド卿はいつにも増してスピーディーにヴァニタス家の罪を暴いたらしい。
考えてみれば彼はこの国の事務方を取り回す有能な宰相。
それを思えば今回の結末も当然と言えるのだろう。
『あなたの不安を少しでも早く取り除きたい』
そう言ってくれたのは「一人で抱え込まないで欲しい」と言われたすぐ後だ。
たしかに、さらわれた時のことがたびたびフラッシュバックしていた私としては、ヴァニタス家がいまだ自由にしている状況には不安を感じていた。
また何かされるのではないかという恐怖心がなかなか無くならなかったからだ。
そして不眠につながる悪夢の原因にもなっていたと思う。
それを察したのかどうかはわからないけれど、ベラルド卿は最速で事件のかたをつけてくれた。
結果として、ヴァニタス家当主は他にも多くの余罪が発覚し重い罪を犯した者が送られる離島へ流刑。
そしてレイラ嬢と当主の妻は二度と出ることの叶わない北の修道院へ入れられた。
しかし罪を犯していたのは主に当主一家のみだったため、ヴァニタス家自体は遠縁の者が継ぐことになる。
とはいえ、当主一家の横暴を止められなかったことは家門としての問題となり、ヴァニタス家は侯爵家から子爵家へ降爵の上罰金刑が科せられた。
そうして事件は一定の区切りを迎え、私はまだ不安定さが残る状態ではあるものの職場に復帰したのである。
「今日からまたお世話になりますので、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げたら、グノシー伯は「ではまずはティータイムじゃな」と言い出した。
「え!? 今からですか?」
「そうじゃ。今も飲んでおるのじゃろう?」
その一言で、グノシー伯が私の状況を詳しく知ってくれているのだと知る。
私は今セラピアさんのハーブティーを定期的に飲んでいる。
体も温まるし気持ちも落ち着くから重宝していた。
「そう……ですね。ではご一緒してくださいますか?」
そう私が言えば、
「もちろんじゃ」
と答えてくれる。
親身になってくれることに感謝しながら、私はグノシー伯との久しぶりのティータイムを楽しんだのだった。
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