事件の結末
結局私が目覚めたのは翌日だった。
そして私が呑気に眠りこけている間に事件は驚くほどのスピードで解決をみる。
「え? もう証拠がそろったんですか?」
「そろった、というのは正しくはないですね。罪に問えるだけの証拠がすでにたくさん発見されているから裁判の事前手続きに入るというだけです。ただ、まだ余罪が出てきそうですから実際に裁判に至るのはもう少し先になるでしょう」
どうやら私が気を失ってから行われた屋敷の捜索でこれでもかというほどの罪の証拠が押収されたらしい。
ええ……どれほどの悪事を重ねてたのよ。
私を拉致したのだって相当な事件なのにそれだけじゃないなんて。
やっていることは抜けているところも多かったし、どちらかというと小物な悪党という感じだったのに、実際はそうではなかったのだろうか?
「それにしても、あの時私たちが屋敷の周りまで来ていたことによく気づきましたね」
そうなのだ。
ヴァニタス卿が来る直前までべラルド卿からのコンタクトが無かったから、いよいよ自分でどうにかするしかないと覚悟を決めた私の視界に彼らの姿が飛び込んできたのは偶然だった。
どうやってここから抜け出そうか、そう思い攫われた日にも窓やドアをくまなく調べていたけれどもう一度と思って窓辺に立った時だった。
あの屋敷は高台にあり、そして私の監禁されていた部屋は二階。
比較的見晴らしが良い窓から遠くを見渡した時に視界の端に映ったのだ。
近衛騎士団の身につける制服が。
その瞬間、ウィラー青年がちゃんとべラルド卿に会えたことを私は確信した。
助けが来ているというのなら話は早い。
あとはべラルド卿たちが来るまでどうやって時間を稼ぐかと、ヴァニタス卿が犯した罪をはっきりとさせることを考えた。
「ウィラー卿はヴァニタス家の騎士でありながらも現状に対して憂いを抱いていたようですし、騎士道精神を尊ぶ気持ちの持ち主のようでしたから信用しておりました。ただ、間に合うかどうかは心配していましたが……」
「信用していた、と。ウィラー卿を?」
「……? はい」
信じなければベラルド卿への伝言を頼むことはできなかっただろう。
もし彼が正しき行いよりもヴァニタス家を重じていたのなら、私が言った言葉をヴァニタス卿へ伝えて私はより酷い目に遭っていたはずだ。
「私よりも、ウィラー卿を?」
……はい!?
「私が助けに来るとは思いませんでしたか?」
いやいや。
きっと探してくれているだろう、とは思っていましたとも。
何と言っても私は名目上とはいえ聖女と同等の存在。
もし所在が確認できなかったらいろいろな意味で必ず捜索は行われたはずだ。
「もちろん、べラルド卿も助けるために動いてくださっているだろうと思っていました」
「……そうですか」
何となくべラルド卿の歯切れが悪い。
いつもなら明瞭に話すタイプなのに。
「ああ、目覚めたばかりなのに長々と話してしまい申し訳ありません。医師を呼んできますので一度診察を受けてください。何かあるといけませんから」
どこも問題はないと思うんだけど……と思ったものの、一応気を失っていたことだしべラルド卿もそう言ってくれているので了承した。
「何かありましたらリリアへ申しつけください。そうそう、ここはべラルド公爵家の屋敷ですので私に用がある時もリリアに伝えていただければ駆けつけます」
「では……」と言ってべラルド卿が部屋を出て行った。
「……え?」
今ベラルド卿は何と言った?
べラルド公爵家の屋敷!?
「なんで!?」
私の住まいは王宮の中だ。
なのになぜべラルド公爵家にいるというのか。
その理由がまったくわからず、私は少しの間呆然としてしまったのだった。
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