考察
ヴァニタス家に攫われて初めての夜が明けた。
私が予想した通りあれ以降彼らが部屋に来ることはなかった。
飢えさせるつもりはないのか軽い朝食が出されたことにチグハグな印象を受けるが、何というかヴァニタス親子は悪党と言うにはどこかしら小物感が漂っている。
まぁ、そんなことを思われていると知ったら怒るでしょうけど。
「これってけっこうな証拠よね?」
私は手元に残された書類を眺めながらそう呟いた。
書類には昨日言われた内容が書かれているわけだが、私が無事に救出されればこれが脅迫の証拠となることに彼らは気づいているのだろうか。
悪事に手を染めている割には彼らのやっていることに抜けているところが多く、そのせいか私自身昨日よりも少し気持ちに余裕が出ていた。
「ウィラー青年はちゃんとべラルド卿と会えたかな」
窓から外を見れば太陽はだんだんと上がっていっている。
とはいえヴァニタスが言っていた期限にはまだ時間があった。
何もない状態でベラルド卿が助けに来てくれるとは思わなかったが、SOSを出したからには彼は何かしら動いてくれるだろう。
それくらいの信頼はある。
問題はウィラー青年が無事に会えたかどうかだ。
べラルド卿はトルス国の宰相。
対してウィラー青年は一介の騎士に過ぎない。
普通に考えれば簡単に会える相手ではないよね。
そこら辺はウィラー青年の手腕にかかっている。
それにしても、レイラ嬢が私を疎ましく思うのはわかるけどヴァニタス卿はなぜああも法案に反対するのだろう?
たしかに家門としての仕事が決まっていれば収入源が確保されているわけだから安心だ。
ただ、競争相手がいないことで切磋琢磨される機会が少なく、ある意味漫然と仕事をし続けても許されてしまう土壌ができているように思えた。
何となく世襲議員を思い出しちゃうよね。
そういえば日本では金融機関の人とかは癒着を防ぐためか一所に留まることなく、配属先が数年に一度変わるんだっけ。
そんなことを親が金融勤めの友だちが言っていたように思う。
「まさか……」
そこまで考えたところでふと気づいた。
「もしかして、何か後ろ暗いことをしてる?」
だからこそ書類に資金の横領などという内容が盛り込まれているのではないだろうか。
何も悪いことをしていない人ならこんなこと思いつかないだろうし。
何よりも法の改善に強固に反対しているのも怪しかった。
少しでも国を良くしていこうという姿勢があれば、悪いところは改善して良いところを残していくのが一番。
でも既得権益を得ている人ほど変化を求めない。
なぜなら都合が悪くなるからだ。
「どこの国も一緒ね……」
おそらく私の予想は大きく外れていないはず。
だったら変化を起こすためにも膿は出し切らなければならない。
「レグルスくんの相談に乗った時点で、巻き込まれることは避けられなかったってことか……」
ある意味自業自得?
いや、ヴァニタス家が悪いことをしていなければ問題なかったはずなんだから、私のせいではない……と思いたい。
そんなことを考えながら、私は事態が動くのを待ったのだった。
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