目覚め
ふっと意識が浮上して、一番最初に感じたのは頭の鈍い痛みだった。
「気持ちわる……」
呟いた声が掠れている。
頭をどこかにぶつけたとかそう言った物理的な痛みではなく、変な薬を嗅がされた後遺症なのか頭痛がした。
何となく思考も鈍くぼんやりとしてしまっているのは薬がまだ切れていないからだろうか。
それでも何とか目を開けて周りを見回す。
どうやら私が寝かされているのはどこかの部屋のベッドの上だった。
見える範囲ではそれほど上質な部屋ではないあたり、ここが王宮の中ではないことが伺える。
えっと……何があったんだっけ?
いまだ鈍い痛みを訴え続ける頭を振って記憶を引っ張り出す。
ああ!
たしか王宮の中庭にうずくまっている侍女がいて……。
…………つまり、攫われたということだろうか。
記憶が途切れたところまで思い出したところで疑惑は確信に変わった。
あの侍女はどうなったのか。
私が攫われた時の表情を思うに、不本意ながら協力したような感じだったけど。
そんなことを考えているうちに思考もハッキリしてきた。
幸い手足を拘束されているわけでもなかったからまずは立ち上がってみる。
手を閉じたり開いたり、体全体を確認したところ特に怪我はない。
部屋の中にはベッドが一台とテーブルに椅子が一セット。
あとは古ぼけた本棚が一つだけあった。
今まであまり使われていなかった部屋を急遽掃除でもしたのか、全体的にどことなく埃っぽい気がする。
試しに部屋のドアを開けようとしてみたけれど、当然鍵がかかっていた。
今度は窓に近づき押してみる。
「ま、開くわけないよね」
そう呟きながら窓の向こうを見ればここが二階だということがわかった。
目の前には大きな木があり日差しを遮っている。
陽の高さから考えると夕方頃?
攫われたのが昼過ぎだったから数時間は経っているだろうか。
まさか日を跨いでいることはないと思うし……。
となると、少なくともここは王都の中?
王都から出れば次の都市まで移動するのに半日はかかる。
正確な時間を知ることができないから王宮からどれくらい離れているかはわからないけれど、そこまで移動しているとは思えなかった。
そして私は自分の手元に今何があるかを確認する。
ハンカチと針が仕込んであるメタルペン、あとは髪の毛を留めていたピンぐらいだろうか。
護身グッズの一つである刺激物を詰めた容器がないところをみると、あれはあの場に落としてきたのかもしれない。
誰かがあの容器を見つけて不審に思ってくれるといいんだけど。
花音ちゃんの部屋と図書館はそれほど離れていないこともあって、私の荷物は基本的に自分の部屋か職場である図書館にしか置いていない
そのため今持っている物がほとんどなかった。
これでどうにか逃げ出そうなんて、やっぱり無謀よね……。
でもこのまま大人しくここにいたとしても何も解決しない。
むしろ犯人が戻って来たら身の危険は一気に跳ね上がりそうだ。
どうする?
どうしたらいい?
目まぐるしく考えるものの、何も良い考えなんて浮かばなかった。
ベッドのシーツを割いて紐を作って窓から垂らして逃げる?
いや、そもそも窓が開かないし、仮に開いたとしても私の腕力では下に辿り着くまでに落ちてしまうだろう。
入り口のドアの鍵をピンで開けられるか試してみる?
……いや、どこぞの名探偵でもあるまいし、そんなことが上手くいくのは物語の中だけよね。
それにドアの向こうには見張りがいるかもしれない。
屋敷から逃げ出す前にどこかで捕まってしまうのがオチだ。
もし逃げるのに失敗したら今度は拘束されるだろう。
チャンスは一度だけだと思った方がいい。
それにしても、一体誰が私を攫ったのだろう?
そう思ったところで、目の前のドアがガチャリと音を立てた。
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