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ティータイム

 リリアが入れてくれた紅茶はダージリンだろうか。

 私でさえも知っている香りが辺りを満たす。

 クロテッドクリームといちごジャムが添えられたスコーンは焼きたてのようですっかり忘れていた空腹を思い出させた。


 そういえば、こちらの世界に飛ばされたのは向こうの夕方だった。

 珍しくも仕事が早く終わっていつもよりもだいぶ早い時間帯の帰宅を喜んでいた矢先だったと思う。


 家に帰ってから食べるのを楽しみにしていたコンビニスイーツ。

 あれはどうなっちゃったんだろう。

 私が消えた場所にスイーツだけが残されたのだろうか。


 そう思うと急に甘いものが食べたくなって、私は目の前に置かれたデザートプレートを凝視した。


「良ければお茶をしながら話すことにしよう」


 ベラルド卿がそう言ってくれたのは私のせいに違いない。

 そんなに物欲しそうな顔をしていたのか、と思うと若干の恥ずかしさを感じる。


 でも空腹には勝てないのよー!


 そう思いながらスコーンに手を伸ばそうとした私に、お茶を勧めたはずのベラルド卿が待ったをかけた。


 ええ……なぜ?

 美味しそうなスコーンを目の前にしてお預けですか?


 そう思ったところで、ベラルド卿がフロックコートの内ポケットからスッと取り出した大判のハンカチを差し出してくる。


「気が利かなくて申し訳ない。これを」


 そう言われて初めて気がついた。

 そうだった。

 今日の私の服装はタイトスカートにブラウスという、わりと体にフィットした服。

 さらに言えば応接テーブルはいわゆるローテーブルであり、このまま私がスコーンに手を伸ばせば前屈みになること必須。


 おそらくこの世界の人にしてみればものすごく露出の高い格好をしている私が際どい体勢になるに違いなかった。


 ちらりと伺い見ればベラルド卿は失礼にならない程度に私から視線を外している。


 ……大人の対応だ。


 そう思ながらありがたくハンカチを受け取ると私は膝の上に広げた。

 そうこうしている内にベラルド卿はリリアに膝掛けを持ってくるように指示している。


 そつなく対応する辺り、手慣れてそうだ。


 でも考えてみれば聖女と呼ばれたセーラー服の彼女もかなり露出が高かったのでは?

 だってミニスカートだったよ!

 この世界の服装に関してはまだわからないけれど、昔の西洋的な価値観であるならば高貴な女性は足首すら見せないのかもしれない。


 そんなことを考えながら、しかし空腹には勝てずに私は美味しいスコーンをお行儀良く食べた。


 いや、本当に美味しいよこのスコーン!

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