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異世界に行った、そのあとで。  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


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事件

 ヴァニタス親子の密談を聞いてから一週間。

 私は変わらない日常を過ごしていた。

 念の為リリアに護身用のグッズをいくつか購入してきてもらったけど、幸いなことに今のところ活躍の場はない。


 リリアには怪訝そうな顔をされたのよね。


 突然護身グッズの購入を頼まれたのだから無理もないけど。

 グッズを手に入れるに当たって私が外に買いに行くわけにもいかず、何よりどんな物があるのかがわからなかったからリリアを頼るしかなかった。


 そうやって手に入れたグッズは二つ。

 一つは小さな容器に唐辛子のような刺激物が詰められた物。

 これは誰かに襲われた時にキャップを外してその刺激物を相手に浴びせるらしい。


 そしてもう一つはペン先に針が仕込まれた物。

 この世界字を書くのにメタルペンを使っているんだけど、そのペン先に針が仕込まれていて、いざという時にペンの背を押すと先から針が出る仕組みだ。


 どちらもある程度至近距離にいる相手にしか通用しないグッズではあるし、果たして何かあった時に自分が冷静に行動できるかは自信がない。

 それでも無いよりはマシと思ってここのところは毎日持ち歩いている。


 まぁ、グッズの出番がないのが一番なんだけど……。

 結局のところどちらも自分が逃げる時間を少しでも稼ぐための物でしかない。


 防犯グッズなんていくら種類があっても良い物なのに、こちらの世界では選択肢があまりなかった。

 ああでも、良家のご令嬢であれば移動は常に馬車だろうし、護衛も雇っているのだから必要ないのか。

 

 その点私の立場って……と思わないでもないんだけど。

 異世界からの客人、王室預かりで聖女に準ずる存在、そう周知しながら野放しもいいところである。

 

 いくら王宮内から出ることがないといはいえ、王宮には案外いろいろな人が出入りしているんだけどねぇ。

 まぁそれだけ王家にとって私の存在は重要ではないということなのだろう。


 ……何だか虚しくなってくるわ。


 そんなことを考えながら私は図書館へと向かっていた。

 今日は久しぶりに花音ちゃんと会って来たところだ。

 定期的なお茶会は花音ちゃんの希望で開催されているけれど、私にとっても良いストレス解消の時間だった。


 以前の世界のこととか、この世界のおかしいと思うところとか、他の人に理解されにくい話もできるからそれだけでも気分的に全然違う。

 たぶんそれもあって私は呼ばれているのだろう。

 ある意味花音ちゃんのメンタルケアのためであり、同時に私の精神安定のためでもある。


 お茶会は午前中だったから図書館へは午後からの出勤と伝えてあった。

 今日のお茶会は花音ちゃんの部屋で行われていたこともあり、私は中庭を突っ切って図書館へと向かう。


 特に急いでいたわけではないけれど何となく足早に中庭を通り抜けようとして、私は花壇のそばに女性がうずくまっていることに気づいた。


 あれは王宮の侍女の制服?

 

 口元を押さえながらうずくまっている女性の顔は見えなかったけれど、いかにも体調が悪そうだ。

 そのまま通り過ぎることもできるもののさすがにそれは人としてどうなのかという考えが頭の中をかすめる。


 とはいえ今までそういった状況に遭遇したことがなく、これが何かの罠なのではないかという疑いが拭いきれなかった。


 でももし本当に体調不良の人だったら……?


 少し迷って、結局私は女性に近づいていく。

 念の為例の護身グッズである刺激物入りの容器をすぐに相手にかけられるように手に持って。


「あの……どうしましたか? 体調が悪いのでしょうか?」


 恐る恐る声をかけると女性が顔を上げる。

 青白いその顔色はいかにも調子が悪そうだ。


「大丈夫ですか!? すぐに医務室へいった方が……」


 顔色に驚いてさらに彼女に近づこうとして。

 私は急に背後から伸びてきた手に口を塞がれて拘束された。


「んー!!」


 背後の人物は何かの液体を染み込ませた布を手に持っていてその布で私の鼻と口を覆う。


 抵抗しようとして私は護身グッズの容器の蓋を開けたけれど。

 それを後ろの人物へかける前に手から力が抜けていく。


 ポトリ、と容器が地面に落ちた音がして。

 そして同時に自分の意識が薄れていくのを感じた。


 最後に認識できたのは目の前の女性の申し訳なさそうな顔。


 そんな顔をするくらいならなんで罠にかけるのよー!

 そう思ったところで。


 プツッと私の意識は途切れたのだった。

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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