思案
さてどうしたものか。
早退して部屋に帰り、私は机の前で頭を捻っていた。
通常よりもだいぶ早く帰って来た私に驚いたリリアにお茶を用意してもらってから、私はノートにヴァニタス家対策を書き出している。
リリアにも心配をかけてしまったわ。
そう思いながらノートに向かっていたのだけど。
いかんせん私には選択肢があまりなかった。
一番有効な手は彼らと接触しないことだけど、私が仕事以外どこにも出かけなかったとしても、相手が何かしらの手を打ってきたら避けることは難しい。
たとえばお茶会のお誘いがあったとして、立場上断ることはできても周囲には良くない印象を与えるだろう。
そしてこの世界にも警察のような組織はあるものの、まだ何も起こっていない状況で彼らにどうにかしてもらうこともできない。
ましてや王宮内でのことになるならその担当は近衛騎士団。
私が聞いた話だけでは誰も信じないよね。
相手はトルス国の侯爵家で、かたや私は異世界から来た聖女ではないただの人なのだから。
周りがどちらの肩を持つかなんて考えるまでもない。
こんなことを相談できる人は……。
そう考えて一番初めに思い浮かんだのはやはりベラルド卿だった。
困った時に頼りたくなるなんて、いつの間にそんな存在になってしまったのか。
そう気づいて、怖いなと思った。
誰かに頼ることを覚えてしまうと自分の足で立ち続けることができなくなりそうで。
ベラルド卿はあくまで仕事上私を気にかけてくれているだけ。
もしくはこの世界に呼び寄せてしまった責任感か。
いずれにせよ必要以上に頼るのは負担になると思う。
他の方法としては護衛を個人的に雇うとか?
でもその場合も私の生活の場が王宮内だということがネックになるだろう。
うーん……解決策が思い浮かばない。
ヴァニタス親子の会話に危機感を覚えたのはたしかだけど、今のところはまだ彼らが何かするという確信があるわけではないのよね。
…………。
やはり当面の間は外出を控えて、あとは護身用のグッズをそろえるくらいが妥当かも。
その上で本当に身の危険を感じるようなことがあったらべラルド卿に相談しよう。
実際的な話をすればベラルド卿にも簡単に会えるわけではないのだから。
今までだって彼が図書館へ様子を見に来てくれていたから会えていただけだった。
しかし正式にお披露目が終わった今それももうあまりないかもしれない。
今の私の立場は正式に王室預かりとなり、その身分は王家が保証している。
さらには図書館職員という職も与えてもらっているからこれで生活も安定するはずだ。
そうなるとべラルド卿に会う用事がなくなるのよね。
もしかすると今までのようにたまに様子見には来てくれるかもしれないけれど。
そう思って何となく寂しく感じたのは、初めてこの地に飛ばされた時に彼だけが私を気にかけてくれたから。
きっとそうに違いない。
私は自分に言い聞かせる。
そうでなければいけないと、本能的に気づいていた。
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