お披露目
その日王家の舞踏会には王都の名立たる貴族たちが一堂に会した。
異世界より来たりし聖女を一目見ようと集まった彼らは、その場に黒髪黒眼の女性が二人いることに驚いただろう。
「異世界から呼び寄せられる聖女様はお一人のはずでは?」
「未だかつて聖女様が二人降臨されたなんて聞いたことがないぞ」
「どちらかは偽者なのではないか?」
「しかし王家の主催する舞踏会に参加しているということは、お二人とも正式に認められているということだろう?」
ヒソヒソとあちらこちらで憶測が噂されているのが私の耳に入った。
王家の舞踏会は国王の挨拶で始まるのが通例だ。
ホールへの入場は家格の下の者から始まり、最後は公爵家、そして王族である王太子が登場する。
人々の注目の中で王太子であるソレイユと宰相のルシウスが花音ちゃんと私を伴って入場した。
花音ちゃんはプリンセスライン、そして私はスレンダーラインの白を基調としたドレスを身につけている。
まるで花嫁のドレスのようだよね。
そう思ってしまうのはドレスの色のせいもあるけれど、見た目が日本でのウェディングドレスと似ているからだ。
まさかここでこんなドレスを着ることになるとは。
正直自分には縁のない物だったから一生着ることはないと思っていたのに。
そんなことを思っているうちにすべての貴族、そして王族の入場が終わった。
そして会場内のざわつきは国王陛下と王妃殿下の登場に静まる。
国王が正面壇上に設けられた王座につくと全員の視線が集まった。
「この度異世界より聖女様に降臨いただいた」
国王の言葉が会場の隅々にまで響き渡る。
人々は一言も聞き漏らすまいと耳を澄ませているように思えた。
「また、今回は聖女様だけでなくもう一人異世界からの客人がいらっしゃる」
そう言うと国王は会場中をゆっくりと見回す。
「異世界からの客人を二人も迎えることは我が国始まって以来の出来事である。そしてこれは大変光栄なことであると皆心して欲しい」
イレギュラーである聖女以外の異世界人。
その存在に対して国王がどう考えるか、それは私のこれからに大いに影響することだ。
舞踏会の前にレグルス卿から陛下の意向を聞いていたとはいえ、実際にその言葉を耳にするまではドキドキが止まらなかった。
とりあえず陛下が私の存在を好意的に紹介してくれて良かったよ。
最初感じていた訝しげな視線も、陛下の言葉によってかなり緩和されたように思う。
まぁ、私ではなく花音ちゃんが聖女様なのは見てすぐにわかることだしね。
トルス国に降臨する聖女は『黒髪黒眼の少女』だ。
どこからどう見ても私は『少女』ではない。
逆に花音ちゃんは可憐な少女にしか見えないのだから、どちらが聖女なのかは一目瞭然だった。
「王太子のソレイユがエスコートしているのが聖女であるカノン様、そして宰相のルシウスがエスコートしているのが異世界からの客人であるナツメ殿だ」
陛下から正式な紹介を受け、花音ちゃんと私がそれぞれ一礼する。
まだこちらの世界のマナーを身につけられていないからカーテシーをすることはできなかったけれど。
そしてこれをもって無事にお披露目がされたこととなり、この後には舞踏会というだけあってダンスを楽しむ時間が待っているらしい。
皆の見守る中、陛下の合図をきっかけに会場に優雅な音楽が流れ始めた。
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