エスコートの相手
結局ドレスはベラルド卿から受け取るとして、残る問題はエスコートの件だ。
リベルタ嬢のお兄さんにお願いする場合、エスコートだけなら気分的にだいぶ気楽に頼める。
とはいえ会ったことのない相手なんだよね。
社会人だったから初対面の相手であってもコミュニケーションは取れると思うけど。
あと女性に人気そうな点も余計な揉め事を起こしそうで気になった。
結婚適齢期の公爵令息。
どう考えても優良な相手だからなぁ。
その上見目麗しいともなれば……ご令嬢たちの反応が怖い。
エスコート無しには参加できないだなんて、上流階級のつき合いって面倒だわ。
相手のいないご令嬢はどうするのか、と思ったけれど、考えてみれば良家であればあるほど早々に婚約者が決まるからそんな心配はいらないのだろう。
そんなことをつらつらと考えていたら、ベラルド卿が私の心を読んだかのようにその話題を口にした。
「ところで、当日のエスコート相手はもう決めているのでしょうか?」
「……いえ。お誘いはいただいたのですがまだはっきりとは」
「お誘い?」
私の返答にベラルド卿が怪訝そうな顔をする。
そりゃあそうだろう。
どう考えても私にエスコートの当てなどなさそうなのに、お誘いがあったとなれば不審感を覚えるはず。
「差し支えなければどなたからのお誘いなのか教えていただいても?」
別に何もかもをベラルド卿に報告する義務はない。
それはわかっているけれど、逆に言えばあえて隠す必要もなく、私はリベルタ嬢からのお誘いについて話した。
「リカルド卿が?」
どうやらリベルタ嬢のお兄さんはリカルド・ブレイブという名前らしい。
そんな基本的なことすら知らずにエスコートをしてもらおうだなんて、やっぱり図々しいよね。
「はい。リベルタ嬢が気を遣ってくださったのだと思うのですが、もしエスコート相手に困っているのなら彼女のお兄さまを紹介してくださると」
「なるほど。ナツメ殿もリカルド卿のエスコートを望んでいるのでしょうか?」
「いえ。そもそもお会いしたこともない方なので」
「であれば、相手は別にリカルド卿でなくてもいいということですよね?」
「まぁ、そうですね」
もっと言ってしまえば舞踏会自体参加したくないんだけど。
しかしそれは無理な話だから。
「それならエスコート相手も私に任せてくださいませんか?」
え?
今何と?
「ですから、ナツメ殿がよろしければ今度の舞踏会でのエスコートの栄誉を私に与えてくれませんか、ということです」
「ええ!?」
いやいや、ベラルド卿にエスコートされたいご令嬢はたくさんいるでしょう!?
「それとも、私よりもリカルド卿の方がいいのでしょうか? 会ったことのない相手よりは気心が知れているかと思うのですが……」
もちろんそうだ。
私にしてみれば見ず知らずのリカルド卿よりもベラルド卿の方がいいに決まっている。
しかしドレスだけでなくエスコートまでもお世話になるのはいかがなものか。
そんな私の気持ちを察したのかベラルド卿がさらに言葉を重ねた。
「以前息子の相談に乗っていただいたのにそのお礼もしていませんので。ナツメ殿のお役に立てるのであれば、ぜひエスコートさせてください」
さらには麗しい笑顔も追加されて、私は断る言葉を失ったのだった。
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