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異世界に行った、そのあとで。  作者: 神宮寺 あおい@受賞&書籍化


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公爵令嬢

 なぜ……。

 なぜこんなことに?


 私はつい最近思った感想とまったく同じことを胸の内で呟いた。


 聖女である花音ちゃんの私室で。

 テーブルの角を挟んだ左側に花音ちゃん、そしてその向こう、私の対面にトルス国の公爵令嬢であるリベルタ嬢が座っていた。


 リベルタ嬢はソレイユ殿下の元婚約者である。

 つまり、この場に殿下の元婚約者と現在求婚されている二人がそろっているということだ。


 正直、なぜこの場に私が呼ばれたのかまったく不明である。

 先日花音ちゃんから招待を受け、てっきり二人でのお茶会だとばかり思っていたのに。


 いざ来てみればそこにはリベルタ嬢も同席していて……の今だった


「初めまして。私はトルス国公爵家のリベルタ・ブレイブと申しますわ」

「こちらこそ初めまして。私は聖女様と同じ国から来たナツメ・シンカイと申します」


 振る舞われたお茶に口をつけたところでひとまずお互い自己紹介を交わす。


 ジロジロ見ることはできないけれど、リベルタ嬢はさすが公爵令嬢なだけあって品がありさらにはとても美人だった。

 ガーネット色の髪の毛にピンクゴールド色の瞳。

 大人っぽさが見え隠れする彼女はスタイルも良い。

 花音ちゃんがどちらかというと可愛いとか可憐な感じだからか二人の雰囲気は対照的だ。


「お二人のお茶会に突然お邪魔してしまったこと、謝罪いたしますわ」


 そうなんだ。

 つまり、リベルタ嬢の参加は急遽決まったってことね。


「ごめんね、ナツメさん。リベルタの話を聞いてたらぜひともナツメさんを紹介したくなっちゃって」

「花音、無理に頼んだのは私なのだから、あなたではなくて私が謝るべきでしょう?」


 ん?

 んん?

 

 二人のやり取りがかなり親しい感じで私の頭の中にはてなが飛び交う。

 はたから見た二人の関係は殿下を間に挟んだライバルのように思えるのだけど、違うのかしら?

 『リベルタ』『花音』と呼び合っているところからしても二人の仲は良さそうよね?


「実は、花音とは殿下の婚約者……あ、今は元婚約者ですけれど、と聖女様として出会ったのですが、話せば話すほど気が合いまして」

「そうなの! こちらの世界の令嬢には何人も会ったけどリベルタほど話の合う子はいなかったわ」


 ハキハキと話すリベルタ嬢はとてもしっかりしているように見える。

 なるほど。

 これくらいの才女でないときっとあの殿下を支えたり御したりすることができないのだろう。

 そう思わせるくらいの賢さが感じられた。

 

「この度殿下の婚約者の役目を解任されることになり、今後の身の振り方を考えていたのですが……」


 婚約者の立場を辞めることを解任と表現するとは……なかなかに斬新。

 その言葉選びからも、彼女が恋愛的な意味で殿下の婚約者になっていた訳ではないとわかった。

 おそらく政治的な意味合いの強い婚約だったのだろう。


「このタイミングで新しい婚約者を探すこともなかなか難しく」


 それはそうよね。

 良い相手であればあるほど婚約は早く決まる。

 さらには公爵令嬢ともなると相手の家格も考えなければならないから、誰でも良いというわけにもいかない。


「公爵家は兄が継ぎますから私がそのまま残るわけにもいきませんし、殿下は自分の我がままによる婚約解消なので責任を持って相手を探すと言ってくださったのですが……」


 話から推察するに、殿下との婚約解消自体に不満はなくさらには聖女である花音ちゃんとの関係も良好なのだろう。

 そこでなぜ私が呼ばれるのかはさっぱりわからないままだけど。


「新しい婚約者とご縁があったとして、結局この先も誰かの意思に従って生きていかなければならないのかと思ったら嫌気が差してしまったのです」


 うんうん、そういう気持ちになることはあるよね。


「だから、ナツメ様に相談にのっていただきたいと思いまして」


 うんうん、相談ね……って、相談!?

 いったいどんな!?

数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。


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