子息の相談
いくら図書館が閉館時間だとはいえ、そのままレグルスくんを放り出すわけにもいかず。
かといって外での立ち話で済むような雰囲気ではなかったこともあり、結果として私は彼を図書館のカウンター裏にある作業スペースに案内した。
私は三十も半ばであり、彼は十五歳。
ある意味親子とも言える年の差だし何も起こらない自信はあったが、この世界男性と女性が二人だけで部屋にいるというのは誤解を招きかねない……らしい。
たとえそれだけの年の差があっても、だ。
親切なグノシー伯は、自分はカウンターで本でも読んでいるからと言い置いて私たちに作業スペースを使わせてくれた。
カウンターへと続く扉は開け放ち、しかし何を話しているかまでははっきりとわからない場所まで離れると、グノシー伯は手持ちの本を開いた。
「急にこんな時間にすみません」
レグルスくんはきちんと教育されているからか、自身の訪問が非常識だという認識はあるらしい。
そうよね。
たしか、女性の元を訪ねるにはいちいちお伺いというか、先触れを出さないといけないんでしょ?
よほど親しい間柄の相手であればよいのかもしれないけれど、そもそも私とレグルスくんは初対面である。
そんなことを思いながら、私は椅子に腰掛けた彼の前に温かい紅茶を差し出した。
そういえば昼に父親であるべラルド卿にも入れたんだったなぁなどと思いながら、昼と同じくクリーマーとシュガーポットも横に添える。
さらにはクッキーもつけましたとも。
「初めまして、ですよね。私はナツメ・シンカイと申します」
「あ! 俺はレグルス・べラルドです」
椅子の上の大きな体を小さく縮めながら、彼はペコリとお辞儀した。
見た感じとても素直そうな少年である。
少年……少年でいいのかしら?
それとも青年?
見た目と実年齢にギャップがあるわ。
そんなどうでもいいことを考えながら、私は彼が口を開くのを待った。
こういった場合、下手にこちらから話を向けるよりも本人が話したくなるのを待った方が良いだろうと思ったからだ。
「あの、父上……あ、いや、父は何か言っていたでしょうか?」
日頃の呼び方が透けて見えている。
そんなある意味誤魔化すのが下手そうな感じに、図らずも可愛らしさを感じてしまった。
いや、図体は大きいんだけどね!
「何かというと?」
彼が何を聞きたいかなんて想像できる。
しかしそこははっきりとさせたいところだ。
「お昼に図書館で父と言い争っていた時、あなたもあの場にいましたよね?」
確信を持ってレグルスくんは聞いてくる。
「あの時あなたはすぐに行ってしまったけれど、気づいていたの?」
少し驚いて問い掛ければ「もちろん」という返事が返ってきた。
いやいや、あの状況で私の存在にまで気づくなんてすごいと思うけど?
「あの後、俺のことについて父は何か言っていましたか?」
レグルスくんは改めて聞いてきた。
彼にとっても父親であるべラルド卿がどう思っているのかというのは気になるところなのだろう。
……というか。
これって結果として私は親子のやり取りに巻き込まれているということよね?
何につき合わされているのか、と思わなくもないけれど、それだけ彼らは真剣ということだろう。
そう思って、私は彼の疑問に答えることにした。
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