秘密の隠れ家
花音ちゃんとの楽しいお茶会を終えた私の日常がどうなったかというと、今までと変わらず毎日図書館へ出勤するという日々だ。
それでも図書館での仕事にだいぶ慣れてきた私にグノシー伯から新たな仕事が与えられた。
「ここで整理すればいいですか?」
グノシー伯に連れられて私がやってきたのは、以前チラッと話題にも出た王族と聖女に関する本が集められている部屋の前。
なぜかそこは少しだけひらけていて、教室の四分の一くらいのスペースにデスクとチェアが一セット、さらにはサイドテーブルを挟んで一人がけのソファが二台置かれていた。
「ここには基本的に人は来ん。ナツメ殿はトルス国についてや王族について知りたいと言っていたし、異世界から来たということは聖女様と無関係ということもないじゃろう」
そう言いながらグノシー伯は鍵を取り出すと目の前の扉を開けた。
「ここには国や王族、聖女様のことが記された昔からの書物が集められておる。しかしただ集めてあるだけで管理は行き届いてはおらん。中には修復が必要な本もある」
グノシー伯の示した先には、たしかに修復しなければ今にも壊れそうな本が何冊か見える。
「今回ナツメ殿考案の図書館管理を始めるにあたって、ここの本たちも一覧表にしておく必要がある。それと合わせて修復もな」
パッと見部屋の中にはいくつもの本棚が置かれ、ある意味所狭しと言ってもいいくらいに本が収められている。
しかも本棚以外には腰をかける場所すらなく、いかにも本を置いておくためだけの部屋だった。
なるほど。
だからこのスペースがあるのか。
私は心の中で納得する。
おそらく、鍵で閉められた先の部屋ではゆっくり本を読むことも確認することもできないだろう。
だから必要な本だけ持ち出してこのソファに座って読んだり、何か書きたければ机と椅子を利用する、そのために設置されたスペースなのだと思う。
「図書館内では基本的に飲食は禁止じゃが、この場所だけは軽く摘めるお菓子や飲み物が許されておる」
ああー……。
つまり、王族やらのお偉いさんが来た時はここでお茶を楽しみながら本を読むと、そういうことね。
「図書館は利用資格がある者なら誰でも入れるが、この区域だけは高位貴族のみ立ち入りが許されておるのじゃ」
グノシー伯いわく、一階で通常の床よりも少し下がったところから先は立ち入りが制限されているため、私がここで作業をしていても誰かに見られることは少ないということだった。
「急いではおらんし、一覧にしたり修復したりする作業の合間に中を見ても構わん。知りたい内容の本であれば読んでもいい。だからこれからしばらくナツメ殿にはここでの作業をお願いしたいのじゃ」
「多少ならお茶を飲んだりおやつを食べても良いぞ」なんて、ウインク付きで楽しげに言ったグノシー伯はお茶目なおじいさんだと思う。
そうして私はその場での作業に入ったわけだけど。
まるで秘密の隠れ家みたいじゃない!?
基本的には誰も立ち入らない、本棚に囲まれてできた小さな空間。
さらにはそこでお茶もできるし本も読めるときたら、気分としては『隠れ家』だった。
だから。
密かに私のテンションが上がったことは誰にも内緒だ。
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