聖女との面会
先導の騎士に連れて行かれたのは王宮庭園の中にあるガゼボだった。
図書館での仕事を始める前までは運動のために毎日のように通っていた場所だ。
ガゼボに近づいていくにつれてその場にすでに誰かがいるのがわかる。
太陽の光を弾くくらいに輝く濡羽色の髪は肩口で切りそろえられていた。
細身の体は淡いピンク色の柔らかな生地で作られたドレスに包まれてその華奢さを強調している。
私たちの足音に気づいたのかこちらを向いた彼女の瞳は吸い込まれるような黒。
まるでお人形さんのように整った容姿だ。
ふぁぁぁ。
はっきり言おう。
可愛い!
聖女と呼ばれるにふさわしい清らかさをまとった彼女の姿につかの間見惚れてしまったのは仕方のないことだろう。
「ようこそお越しくださいました」
そして発した声は鈴を転がすような声。
すごいね。
完璧だわ。
おそらく多くの人が思い浮かべる聖女、正しくその姿を体現したかのようだった。
「あなたたち、私は彼女と二人でお話ししたいのです。少し離れていてちょうだい」
そんな彼女はそばに控えていた侍女と思しき女性と私をここまで連れてきてくれた近衛騎士にそう指示する。
よく見ればガゼボのテーブルにはすでにお茶とお菓子がセッティングされており、侍女がいなくても問題はなさそうだった。
「しかしお二人だけにするのは……」
彼女の言葉にそう近衛騎士が言う。
ん?
それはいったいどういう意味で?
まるで私が彼女に何か危害を加えるとでもいうような言いように疑問を感じた。
思い返してみればこの彼は私たちが召喚されたあの場にいた騎士だ。
そして私の存在を丸々無視した騎士でもある。
「口が過ぎますわ。控えなさい」
そしてそんな騎士を彼女がピシャリと叱った。
結局『聖女の命令』に逆らえないからか、彼らは私たちが視界には入るが声は聞こえない距離まで離れる。
何もしていないのに疑われるのはちょっと気分悪いよね。
しかも呼んだのはそっちなのに?
そんな気持ちが心の中でモヤモヤと広がっていったところで、彼女から話しかけられた。
「私が会いたいと思ってのことなので本当はこちらから出向いて行くのが筋だと思うのですが、ご足労をおかけしてしまい申し訳ありません」
私の気持ちを察したのかそれとも元からそう思っていたのか、彼女の口から謝罪の言葉が出る。
そこで私も自分が少し恥ずかしくなった。
十歳くらい年下の子に気を遣わせちゃダメでしょ。
しかも失礼なのは彼女ではなく近衛騎士の彼だ。
そう。
考えてみれば彼女はまだ女子高校生なわけで。
普通ここまでちゃんとしているだろうか?
自身の高校生時代を思い返してみても彼女の態度は立派だと思う。
「いえ。お気になさらず」
だから、私はこれ以上彼女が気を遣うことのないようにそこでこの話題を終わらせた。
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