聖女のお誘い
図書館での職を得て数日。
私は毎日張り切って仕事をこなしている。
日々の生活はルーティン化してきており、部屋で朝食を取ってから図書館へ行き仕事、お昼を挟んで夕方まではそのまま仕事を続けてその後部屋に戻り夕食。
そして入浴してから日本にいた時とは比べ物にならないくらい早めの時間に就寝という、本当に健康的な生活だ。
おかげで体調もすこぶる良い。
グノシー伯との関係も良好だし、職場環境はこれ以上ないくらいにいいだろう。
異世界転移に巻き込まれたこと自体はとんでもない事故だったけれどね。
そして今日もまた私は図書館での仕事に勤しんでいたのだが。
「聖女が……ですか?」
突如として聖女からの呼び出しがかかった。
「ああ。何でも聖女様が同じ世界から来たもう一人の女性に会いたいとおっしゃっているようじゃよ」
なるほど。
あの召喚の場で彼女はすぐに連れ出されてしまったから、いったいどんな子なのかはいまいちわからないんだけど。
できれは話の通じる子だといいんだけどね……。
ジェネレーションギャップとでも言うのか、時々同じ言語を話しているとは思えないような子がいるのはたしかだ。
「後で聖女様の近衛騎士が迎えにくるようじゃから、今日の仕事はここまでにしておくがいい」
そうグノシー伯に言われたので、私はその言葉に甘えて帰り支度をする。
迎えが来るまでの少しの間、午後の日差しが差し込むホールのソファに座って読みかけの本を開いた。
あー……。
至福の時間よね……。
読んでいたのは最近王都で流行しているという小説だ。
公爵令嬢という婚約者のいる王子が異世界からやってきた聖女と恋に落ちるというなんともベタな展開の話だけど。
ありがちと言われてしまっても王道の話はやっぱり安心して読める。
他にも『王女と騎士の身分違いの恋』とか『敵対する国同士の王子と王女が恋に落ちる話』とか、どの世界でもドラマチックな展開は人気なんだなぁなんて思いながら読んだ。
思えば日本にいた時もプライベートな時間はほぼ読書やゲームに費やしていたと思う。
彼もいなかったし家族と一緒に暮らしていたわけでもない。
なんといっても一日の時間の大半は会社に費やされていたから友人と会うことすらままならなかった。
そうこうしている内に友人とも疎遠になって……。
女友だちは時間の共有ができなくなるとその友情を維持し続けるのが難しくなると思う。
例えば結婚したり子どもを持った子と独身とでは時間の使い方も違うし。
思えば私の癒しは物語なのよね……。
本であれゲームであれ、疲れた心を癒してくれるのは甘々な恋愛ものだ。
切ない話ももちろん好きだけど、疲れた時は恋人に甘やかれされるような話が一番。
もちろん、現実に自分の理想の人が存在するとは思ってないよ。
ただ、ヒロインが甘やかされている話を読むと心に糖分が染み渡る感じがするのだ。
疲れた時に甘い物を食べたくなる心理と一緒なのかもしれない。
そんなことをつらつらと考えているうちに、迎えだという騎士が、来た。
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