図書館の仕事
この世界での女性の服装はいわゆるドレスだ。
中でも腰回りをふんわりとさせたプリンセスラインのドレスが人気らしい。
というのも、身一つで異世界に飛ばされた私には手持ちが何もなく、着るものをすべて用意してもらったからわかったことだ。
しかし、だ。
プリンセスラインのドレスというのは見た目が可愛らしい。
人気というからにはトルス国では年齢が上の女性も着ているのかもしれないが、私には無理だった。
それにふわふわとしたドレスを着て仕事なんてできない。
とはいえ郷に入っては郷に従えというように、この世界で暮らすならある程度合わせていく必要はあるだろう。
ということで、私としては足首まであるスレンダーラインのドレス、というのが落とし所になった。
日本ではコンサバ系のファッションを好み、活発に動く必要のある時はパンツスーツを着ていた身としては、そもそもドレスで仕事すること自体が違和感なんだけど。
「おお! そうかそうか。ナツメ殿が図書館職員になってくれるのか!」
ただでさえ人員が減って困っていたからかグノシー伯はとても歓迎してくれた。
「この前話していた図書の分類や並べ方についてもぜひ相談させてもらいたい」
またしてもキラキラとした瞳でこちらを見てくるグノシー伯の迫力に若干押され気味だ。
「もちろんです。この図書館は蔵書数が多いので時間がかかるかもしれませんが、一度整理すればそのまま維持していけばいい訳ですし、この機会にぜひ!」
それにしても、図書館は私にとっても理想的な職場だ。
好きな本に囲まれて仕事ができ、一番危険が少なそうな王宮内で生活できるのだから。
……あれ?
そういえば生活の場ってどうなるのかな?
仕事が決まれば客室である今の部屋は出ることになるんだろうし。
そこまで考えたところで、結局のところべラルド卿に確認するしかないかという結論に達する。
「そうそう、仕事を覚えてもらう必要もあるし、安全性を考えてもナツメ殿には基本的に奥での仕事をお願いしたいと思っておる」
「そうですね。今のところあまり人目につかない方がいいでしょうし、当面はそうさせていただきたいかと」
そんなことを話しながら、グノシー伯はカウンター横の扉を開けて奥へ向かった。
カウンターの裏には学校の教室一室分くらいのスペースがある。
そこにはいくつかの作業机と共に多くの本が置かれていた。
「図書館の本は常に増えておる。同時に古い本は別の倉庫へ移動させておるのだ」
なるほど。
考え方は日本の図書館で言うところの開架と閉架ということだろう。
「さらには、この図書館の一階の奥に半地下へと続く扉があるんじゃが……その向こうにはトルス国の王族に関する本や聖女様に関する本が収められておる」
「その本は誰でも借りることができるのでしょうか?」
「いや、貸し出し禁止じゃ。その部屋へと入室するにも特別な許可が必要じゃからな」
ということは、私もそこへ入るのは難しいのでは……?
「今後仕事上そこへ入ることも必要になってくるじゃろう。入室許可の届出を出しておこう」
「よろしくお願いします」
まずは館内のどこにどんなジャンルの本が置かれているかを覚える必要がある。
そう思いながら、図書館全体を把握するために私はその案内図を頭に叩き込んだのだった。
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