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聖女

「ようこそ聖女殿。我が国を救うために降臨していただけたことに感謝する」

 金髪碧眼の美形がセーラー服女子の手を取って恭しく挨拶をしている。

 

 周りを見回せばそこは円形の大きなホールのような場所で、各壁に取り付けられた広い窓からはガラスを通して明るい光が差し込んでいた。

 美形の彼とセーラー女子の傍らにはこれまた位の高そうな雰囲気の男性が二名。

 一人は騎士のような格好をしているから美形の彼の護衛なのかもしれない。


 そして足元を見れば白い床一面に模様が描かれている。

 描かれている文字の意味などわからない……が。

 

 いわゆる魔法陣、だよね?


 そして思う。


 やっぱり、これはどう見てもあれでしょう。

 あれよ、あれ。


 そう、つまり異世界転移というやつでは?


 そう思ってしまった私はその時点でまだ確実に動揺していた。

 だって目の前で繰り広げられている光景が現実と認識できていなかったから。

 まるで映画でも見ているみたいに現実味がない。


 美形の彼はジレにフロックコートを身に纏い、左側の肩に豪奢なマントを羽織っている。

 いかにもお金がかかっていそうな衣装だ。


 そしてよくよく見れば他の二人も容姿端麗と言える見栄えで。


 さらには白いローブを着た何人かの男性たちが私たちを囲うように立っている。


「おめでとうございます、殿下! 召喚は成功です!!」


 周りの男性たちの中で、一人だけ緻密な刺繍がほどこされているローブを着た男が美形の彼に向かって歓喜の声を上げた。


「ああ。よくやった」


 殿下と呼ばれた彼はローブの男性に一声かけるとすぐにまたセーラー女子に向き直る。

 そして蕩けるような笑顔を浮かべた。


 おお……。

 美形の笑顔のなんたる破壊力!


 そんなことを呑気に思っている間にも、殿下と女子のやり取りは続く。


「さぁ、聖女よ。王宮に案内しよう」

「え……? 聖女……?」


 ここにきて美形の威力に慣れてきたのか、はたまた現実に気づいたのか、セーラー女子が疑問の言葉を呟いた。

 しかしそんなことはお構いなしとばかりに周りに人が集まり、あれよあれよという間に彼女はホールから連れ出されて行く。


 あらまぁ、である。


 そりゃそうだよねぇ。

 人は驚きすぎると思考停止するというし、彼女はまだ一体全体何がどうなっているのかもわかっていないだろう。


 しかもあの様子だと現状を理解できるだけの説明を殿下がちゃんとしてくれるのか疑問だ。


 召喚と言っていたからにはローブの男性がこの事態の主導者だろうし、彼がそこら辺を察して説明してくれることを祈るしかない。

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