司書
若かりし頃、本好きが高じて図書館司書になろうと思ったことがあった。
しかし司書はある意味狭き門だ。
資格を取っても働き口が少ない。
世間はまだまだ就職先を見通せない状態だったし、司書の仕事の求人を見ても正職員で採ってくれるところはあまりなかった。
だから私は他の道を模索したわけだけど。
結局のところ心底本が好きなのよねぇ。
グノシー伯と図書館談義に花を咲かせながらそう思う。
異世界に飛ばされたことには思うところがいろいろあれども、今目の前のことだけを考えるなら未知なる本の山と有り余る時間というのは大変魅力的だ。
穀潰し状態なのは本意ではないけれど、今のところは仕事もできないわけだし、その間くらいは本の海に溺れてもいいよね。
そんなことを考えていたら不意にグノシー伯が言った。
「非常に興味深い話が多かったのぅ。本当、ナツメ殿にこの仕事を引き継いでもらいたいくらいじゃ」
私もできることならそうしたいよ。
そう心の中で嘆いてふと気づいた。
あれ?
グノシー伯の仕事を引き継ぐのは家の関係があって難しいかもしれないけど、一緒に仕事をするのは可能なのでは?
そうだ。
私は今求職中じゃないの。
まだまだ自分の立場がどうなるのかわからないけれど、私はべラルド卿に「仕事をさせてくれ」とお願いしている。
ならば。
聞く価値はあるかも?
しかもグノシー伯と話してわかったことは、このだだっ広い図書館を管理しているのは現在グノシー伯ただ一人だということ。
少し前まであと二人いたらしいのだけど、一人は体を壊して退職し、もう一人は子爵家の四男だったこともあり結婚で相手の家に入るために辞めたらしい。
しかし、そうなら人員の補充をしてあげなよと思うよね。
ただ、グノシー伯も言っていたようにこの国では図書館職員の仕事はたいして人気がない。
花形職の王宮官吏や騎士団に比べたら地味もいいところだからだろう。
「グノシー伯は先ほどの方法をこの図書館で試してみたいと思いますか?」
「それはできることならなぁ。だがわし一人ではどうにもできん」
蔵書の整理は力仕事の面もあるし分類を見直したりするには時間もかかる。
職員が一人ではたしかに難しいだろう。
ましてやグノシー伯は見た感じかなりのお年に思えた。
許可をもらえるかどうかはわからない。
しかし交渉する余地はありそうだ。
私はそう思った。
「また本の話をしに来てもいいですか?」
「もちろんじゃよ。今日貸し出した本の期限は一週間じゃからそれまでにまた来るがいい」
グノシー伯にお礼を言って私はリリアと共に図書館を出る。
「リリアさん、べラルド卿に相談がある場合はどうしたらいいのかしら?」
「相談、ですか? では私の方からナツメ様が卿への面会を希望していると伝えておきます」
「お願いします」
もし可能なら図書館で働きたいと言ってみよう。
そう思いながら、私はたくさんの本と一緒に部屋へと戻ったのだった。
数多の作品の中から読んでいただきありがとうございます。
少しでも続きが気になりましたら、ブックマーク登録、評価などしていただけるととても励みになります。
よろしくお願いします。




