時間の使い方
さて。
翌日、当面の生活の場を手に入れた私は時間を持て余していた。
昨日はあまりの急な展開と、今までそんなことは誰にもしてもらったことはありません!レベルのお世話をされて早々に眠りについてしまったのだが。
専属侍女としてついてくれたリリアだけでなく王宮で働く誰もが私に丁寧に接してくれる。
神殿のホールに放置されたこととのギャップが酷く、いつか手のひら返しをされるのではないかとまだ疑っていることは内緒だ。
いずれにせよ私の待遇が改善されたのはべラルド卿のおかげなのだろう。
彼だけが、女子高生にくっついてきた私を気遣ってくれていたから。
まぁ、とはいえ元々は誘拐なんだけど。
頭の片隅にあの女子高生はどうなったのかなという疑問がないわけではないが、そもそもものすごく望まれてやってきた彼女のことを私が心配するなんて不遜なのかもしれない。
年長者としては異世界という異国の地に連れ去られた若者を気にかける必要があるのかもしれないが……。
人の心配をしている場合でもないしね。
そんなことをつらつらと考えながら、部屋に用意された朝食を食べ終わった私は悩んでいた。
誰か共をつければ王宮内を散策しても良いという許可は得ているものの、昨日の状況から察するにこの国に黒髪黒眼の人はいない。
となれば私がふらふらとそこらを歩いていれば異世界の者、つまり聖女のおまけということがすぐにわかるだろう。
好奇の目で見られるのも嫌だし、注目されるのも望んでいないのよ……。
とはいえ、ブラック企業の社畜だった弊害かじっと部屋に閉じこもって何もしないのも落ち着かない。
何よりも部屋にいてもやることがないのだ。
この世界のご令嬢だったら何をするのかな……刺繍とか?……っていうかご令嬢?……いや、この歳で自分のことをご令嬢と言ってしまったらイタいわ。
自分で思って地味にヘコむ。
ご令嬢でなかったら何て言うんだろう? ご婦人?それはそれで急に年をとった感じがして違和感……。
そうやって自問自答していても周りからは静かに椅子に腰掛けて困っているように見えたのか、部屋の隅に待機していたリリアが声をかけてくる。
「ナツメ様。もしよろしければ図書館をご案内いたしましょうか?」
この世界の住人は元の世界で言うところの西洋人に近いせいか私のことを実年齢よりも下に見ている気がする。
もちろん実際に年を聞かれたわけではないので本当のところがどうなのかはわからないけれど。
それともこの世界のことを何も知らないということがわかっているから気を遣ってくれているのか。
少なくとも彼らの私に対する対応はアラフォー女にするものではない気がした。
というのも、向こうではその年にでもなれば何でも自分でできなければならなかったし、誰も教えてくれなかったから。
わからないことは自分で調べて、何でも自己責任だ。
日本でぞんざいに扱われ過ぎてそこら辺の感覚がおかしくなっているのかもしれないけどね。
もちろん、丁寧に対応してもらえるのは嬉しいよ!
「図書館があるのですか?」
「はい。王宮の図書館は蔵書数も多いですし、何か気に入る本があれば貸し出しも可能です」
異世界の本、ですと?
読めるかどうかはまだわからないけれど、もし読むことができたらこれほど楽しいことはないのでは?
今のところ異世界転移の言語チート能力のおかげか、話す言葉で困ったことはない。
それと同様に読む方も不自由なくできるのであれば、この世界の本、今まで見たこともないような本をたくさん読める!?
無類の本好きの私は一瞬にして興奮した。
「ぜひ! 行きたいです!」
だから鼻息荒く希望しましたとも。
リリアが私の勢いに若干引き気味だったのは見ないことにした。
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