プロローグ 幼き日の出会い ②
曲が変わり、ゆったりとした旋律に合わせて踊る。その合間にいくつか話をしてみる。セシリアは緊張していたが、ダンスは好きなのだろう。見知らぬ男と手をつなぎ、腰を取られていることも気づかないほど寛いで見えた。
「ダンスはお好きですか?」
「はい。エリック兄さまがよく付き合ってくださいました」
そのエリックはというと、背丈こそユリウスより高いものの見た目は平凡の域を出ない。ヴェスペル王家の装束に救われているが… だが、現状でセシリアに最も近い男ではあった。
直系の王女と傍系の王子… おそらく二人はこのままなら結婚するだろう。その為に女王は二人をわざと近づけてきたのかもしれない。
「王宮の中しか知らないとのことでしたが、退屈ではないのですか?」
「いいえ、女王になる身としては学ばなければならないことが沢山ありますので… 時間も足りないくらいです」
「それはそれは… あなたは勤勉でいらっしゃる。私などには耐えられませんよ。こうして父である皇帝に頼んであなたにお会いしに来てしまうほどです」
冗談交じりではあったが、ほぼ本音だ。その言葉に顔を赤らめてステップを乱した彼女を抱き上げ、そのまま中庭まで連れて行った。
「ごめんなさい。お見苦しいことを…」
「いいえ。冗談が過ぎたのは私の方ですのでお気になさらず」
中庭を散策しながらも色々と話をして… ひどく楽しい時間ではあった。彼女の言葉の端々からエリック王子という傍系の王子のことが出てくるのが気になったが…
「あなたは私と同じく国を背負う身でいらっしゃるのに、自由ですのね」
紫色のバラが咲き誇る中庭の隅で、俺を見上げて言った彼女はどこか羨ましそうにも見えた。…本当は女王の地位など望んではいないのではないか? と思うほどに。
「あなたにも自由はおありでしょう。俺に自由があるように、あなたにも」
「いいえ。私には役割があるだけです。それ以上も以下もありませんわ」
俺の言葉にそう返したセシリアは悲しそうにも見えて… なぜ、そんなことを思うんだろうと考えたが、遠くからアロイスとエリック王子の歩み寄る姿が見えて、問いかけることもできず、会話はそれっきりになってしまった。
「またお会いしましょう。今度はこんな窮屈な席ではなく、もっと寛いだ場で…」
別れ際、セシリアにそう告げるのがやっとだった。その薄紅がさした頬にキスすることもできなくて。
その時、彼女がなにを返そうとしたのか? 今でも思い出せないでいる。ただ奪いたいということだけが頭の中を占めていて…
「ユリウス、有意義な時間だったようだな」
「あぁ、やるべきことが山ほどできてしまったよ。ちょっとお前を振り回すことになってしまうかもしれないな」
「覚悟はしている。お前は昔からそうだったからな」
アロイスに促されてパーティーの席に戻りながら、そんなことを話した。セシリア・ヴェスペルという名と共に甘酸っぱい感情を覚えたということは、誰にも明かさなかった。…一人の少女を得る為に国を飲み込んでしまおうなどと。
15歳の俺には強い現実味をもって叶えられると思わなかったから。だけれど、どれ程時間をかけても叶えたい願いでもあったから。
二人のデートシーンは実はもっと長く書きたかったです( ゜д゜)ウム
思春期二人の出会いは今後のためにも大事なので。シリアスラブってテイストになるのかな。
今回もきっと全年齢向けの限界に挑戦することになりそうですが、お付き合いくだされば幸いです。




