八話
俺達に与えられた選択は三つ 産業奴隷、貴族の従者、剣闘士この三つだ。先ほどまでゴミの様に扱われいたとは思えない様な高待遇だ。
産業奴隷にしても貴族の従者にしても明らかに内容が良すぎる。そんな風に扱う人間をあんな簡単に殺してしまうのだろうか?。もしかすればただの貴族のお遊びで殺しても揉み消せるからと遊んだだけかもしれない。それでもあんな風に扱われてはこの待遇はすぐには信じ難い物だ。
クラスメイト達のほとんどは貴族の従者を選んでいった。産業奴隷は辛い労働をしなければならない、剣闘士だとひ弱な日本人では直ぐに死んでしまう。となれば残るは貴族の従者一択だった。
貴族の従者になれば辛い労働もなく最低限の生活もあると信じてみな選択していく。人数の上限もない様で全員貴族の従者でも大丈夫そうに見える。
兵士達は人数が偏る様子を特に気にした様子もなく面白そうに薄っすらと笑っていた。
やはりおかしい。これだけの人数の偏りが出れば何人かは別の物になってもおかしくはない筈だ。それに貴族がそれだけの人数を一気に受け入れるとも思えない。
ゲールも貴族だ。ゲールは俺達を完全な奴隷として見下しそして蔑んでいた。そもそも貴族が簡単に異世界出身の奴隷を自らの従者にするだろうか? それは否だ。
きっと遊ばれているのだろう。絶望させた後に未来に希望を見出させそれを上から握りつぶしてもう一度絶望させそれを嘲笑うのだ。いかにも貴族がやりそうな遊びだ。
ならば俺は三択の中で一番避けられている選択をあえてする。武術を習っていた訳でもなく喧嘩が強かった訳でもないそれでも一番可能性のある選択を選ぶなら剣闘士しかないだろう。
剣闘士を選んだのば結果的に俺だけだった。ほとんどクラスメイトは貴族の従者を選び大いに喜んでいた。俺にも剣闘士はやめて貴族の従者にしておく様に言ってきたが全て断った。奴隷の剣闘士最も存在に扱われる使い捨ての道具。それでも貴族のおもちゃになるよりはよっぽどマシだろう。
一人剣闘士を選んだ俺は牢から出て別の場所に連れて行かれた。クラスメイト達は俺の事を哀れな目で見ていたがこの選択が間違っていない事を信じたい。
連れてこられた部屋は先ほどの牢屋よりも少し狭い牢屋だった。牢屋の周りには幾つも同じ作りの牢屋があり、体の一部を失った人や死体の様に転がっている人そして小柄な少年少女と年齢も様々だった。剣闘士とは到底思えない人達に牢屋が合っているのか疑問に思ったほどだ。
兵士からは何の説明もなくただ待っていろとだけ言われた。しばらく暇だった俺は隣の牢屋のにいる片腕のない老人に話を聞いてみようと思った。