五話
川を下って一時間程経つと森を抜けると大きな壁に囲まれた町らしき物を見つけた。壁の外周を回っていると大きな門がありそこから町に入れる様だ。
大きな町なので入る人も多いかと思ったが門の付近には人が一切並んでおらず、門を警備する人の気配さえ無かった。
外から見ると町の中に人は一人も見えずとても不気味な気配のする町だ。
ひとまず門を潜り抜けようとすると門の中に薄い膜の様な物が貼ってあるの感じられた。若干躊躇ったが膜を通り抜けると、突然人一人いなかった町に色がついた様に人々で溢れかえり露店が多く開いた市場に早変わりしたのだ。
突然変わった景色に困惑しながらも人がいるという事にやっと安堵することができた。だが此処がどこか聞こうと声をかけようとする直前おかしな事に気づいてしまったのだ。
人がいる事に喜んでいたせいで気づかなかったが、よく見ると露店で物を売っている様な仕草をしているが空を掴む様に何も置かれていないのだ。受け取った様な仕草をする人も何も持っていない。
そして全員笑っているのだ
物を渡す時も話している人も休んでいる時も町を歩く全ての人がずっと笑い続けているのだ。喋っている様な仕草だがずっと笑っているせいで会話をしておらず、まるで壊れた機械の様に笑続けていた。
幸いにも映画の様にこちらを襲ってくるわけでもなくただただ笑い続けているだけなのでこちらに害はないらしい。喋かけても見たがこちらに気づく様な素振りすらなく笑いながら動き続けていた。
門を一度出てみるとまた何もない景色に戻り入ればまた元の不気味な町の景色の姿に戻った。
襲われないことも分かりどこが行く当てがあるわけでもないので町の中心を目指して歩くことにした。
町の中心を探して歩いているとどうやら何処かに近づくにつれて笑い続ける人が増えていくらしく、不気味に思いながらも増えていく人をすり抜けながら進んでいくとそこには町にある様な家とはまるで場違いな雰囲気を持った小さな小屋だった。小屋は小さな扉が一つ付いていて窓も付いていない様なボロボロの小屋だった。
小屋の周りはその部分だけ色がついておらずその部分だけモノクロの様になっていて、小屋の周り笑い続ける人が囲み小屋を見て笑っている様だった。
きっとこの空間の原因はあの小屋にあるのだろう、小屋に向かって笑う人々を押しのけながら進ん小屋に辿り着いた。
小屋に着いた小さな扉を開けると中には
泣き続ける少女 がいた。
少女が何に対して泣いてのか何が悲しくて泣いているの分からないが、途方も無い感情 それがこの空間を形成しているのだろう。
意を決して座り込み泣き続ける少女に近づこうとすると、突然外で笑い続けていた人達が突然こちらに向かって走り出してきた。
小屋の扉を閉じようとするも沢山の手が入って来て長くは持たないだろうと思っていた時
「もう…帰って」
後ろで声がしたかと思うと泣き続けていた少女が立ち上がっており、気づけば俺は意識を失いなだれの様に押し寄せる人々に押しつぶされていった。