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ep021

カウンターテーブルを挟んで相対する

霧矢とたま子、魔理の3人。


たま子が淹れてくれたコーヒーの湯気が

ふわりふわりと漂っている。


この間、静寂。



今まで共通の話題であるカメラについて

語っていた霧矢とたま子は

魔理の異様な雰囲気に困惑している。



「えっと…魔理さん?どうしたの?」

「・・・」


霧矢の問いには答えず

仁王立ちのままの魔理。


「あ、魔理ちゃんもコーヒーいる?

 私、淹れようか?」

「・・・」


たま子の優しさにも動じず

石像のようにふたりを見据える魔理。


謎の重圧に耐えかねた霧矢は

席を立とうとする。


「あれかな、女子同士の話とかかな。

 じゃ僕はそろそろ…」

「その速さ、神風のごとし」


「…は?」


ようやく口を開いた魔理の言葉に

いよいよ気味が悪くなる霧矢。


「あの…え?その速さ?」

「想像してください。ここはサバンナです」


仁王立ちを崩し、壮大な神話を語るかのように

目を輝かせる魔理。

どうやらサバンナの話をするらしい。



一方。

ソファの陰から見守っている瑠衣だが

ギリギリ会話の内容が聞こえない距離だ。


ちょうど角度的に魔理の表情だけは

視認できる場所であるため

楽しげな雰囲気にほっと胸をなでおろす。


「ふぅ、ようやく話し始めたか。

 うまくやってるかな…」


キャッキャと笑顔を見せる魔理に比べて

霧矢とたま子はピタリと動かずにいる。

それだけが瑠衣の不安要素だった。



*   *   *



ほどなくして。


再び魔理は悠然と歩きだした。

ダイニングカウンターからソファの方へ

一歩一歩、ゆっくりと。


「お、どうだった?」


その堂々とした姿に瑠衣も

期待感を持って出迎える。


しかしソファの陰に入ってきた魔理の目は

この世のものとは思えないほど据わっていた。


「あいつボケないんすけど。なんすかあいつ」

「いやガラ悪いな!そんで声も低いな!」


魔理の豹変ぶりは想定外。

一体なにがあったのか…。


「ボケないったってさ、それはしょうがないよ。

 てか別にボケてなくても無理やり会話を

 捕まえてノリツッコミすればいいんだよ」

「は?そんなテク聞いてないんすけど。

 ていうか会話を捕まえるってなんすか。

 会話はコバエかなんかっすか」

「いや例えのキレ味が怖い!」


何を言っても突っかかってしまう魔理は

もはやダークサイドに堕ちた弟子だ。


「そういうテクがあるなら先に言ってくださいよ。

 修行する時間はあったでしょお?マスターさん」

「別にそこまで難しいことは言ってないと思うけど…

 会話の流れで何とでもできるじゃん?」

「だからそれがあんたのテクだって言ってんだよ」

「ねぇテクってやめて?なんかじわじわ面白くなるから

 テクって言うのやめて?」


吹き出しそうになるのをこらえながら

必死に魔理を制そうとする瑠衣。


かたや魔理は面白くない。


「なに笑ってんすか?なにが面白いんすか?」

「いや魔理モがさ…」

「これがあんたのお笑いかい?

 これがあんたのツッコミ道かい?」

「誰なん?キャラおかしいってさっきから…

 あっ」


コソコソ話していると、霧矢が席を立って

自室に戻ろうとしている。


ここまで魔理を豹変させてしまったのは

霧矢の話す内容にも責任があるはずだ。


ここでしっかり原因を追究しておかないと

この弟子はダメになる。

いずれダークサイドに完堕ちし、ツッコミではなく

悪態をつくだけの性悪女になってしまう。



瑠衣は慌てて立ち上がり、霧矢を止める。


「ねぇ霧矢くん!さっき魔理モと何話してたの?」

「え?」

「魔理モにどんな話をしたの?」

「いや僕は何も…」

「…え?」


返ってきたのは意外な答えだった。



僕は何も(話していない)。



つまり霧矢は魔理が豹変するようなことは

一切喋っていないということだ。


なるほどそういうことか。


たま子だ。


そう、

実際先ほどの会話を支配していたのは

たま子だったということだ。


魔理を貶めたのは霧矢の陰に隠れた

裏の悪童、井戸柳たま子だったのだ。


「じゃ、たまちゃん。

 魔理モに何を話してたの?」

「私も一切喋ってません」

「なんじゃーい!」


思わず叫んでしまう瑠衣。

霧矢も喋っていない。

たま子も喋っていない。

ということは…


霧矢が頭を抱える瑠衣に

声をかける。


「さっきのことなら…魔理さんが一方的に

 サバンナで走るチーターってエロいですよね

 って話をしてただけだから…」



霧矢の言葉を理解するのに

2秒ほど。


「なんだそれ!?」


説明を求める視線を魔理に

投げかける瑠衣。


「エロくないですか?」


ポカンとする魔理はいつもの彼女だ。


「いや知るか!あいつボケないんすけどって

 言ってたじゃん!あんたが一方的に

 喋ってたんならボケれるわけないじゃん!」

「イエス、マスター」

「もういいよ!」


丁寧に敬礼ポーズをとる魔理に

ほとほと疲れ果てた瑠衣は

言葉通り、もうどうでもよくなってしまった。



「あらあら。皆さん賑やかですねぇ。

 私も今夜は夜更かししちゃおっかな」


どうやら魔理と瑠衣の言い争いを

夜更かしで遊ぶ合図だと勘違いした

たま子が萌え袖を振りながら近づいてくる。


「おっ、たま子さん今夜は帰らない宣言ですか?

 さては読みましたね、モップレ!」


恋愛マニュアル本、モットドッグプレスの

とあるページにはこう書かれている。


『恋愛最速主義!キミも声高に叫べ!

 今夜は帰らない宣言を!』



「もう~、この子たち何なん~?」


そそくさと夜更かしのための

お菓子や飲み物を準備し始める魔理とたま子。

呆れかえる瑠衣。


お馴染みとなったシェアハウスの空気感。


だが、バターン!というドアが開く音が

空気を一変させた。


「みんなみんな!大変!

 ちょっとすごいから来て!」


突然やってきた、清である。


「俺…すごいの見つけちゃった!」





読んで頂き、ありがとうございます!

シェアハウスは楽しそうですね…

しかしそこへ問題児、清が乱入!

果たして…?

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