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  作者: 口羽龍
第5章 一緒に
98/101

10

 それから数か月たった頃だ。栄作はいつものように仕事をしている。深夜3時になれば、またここに来て、仕込みをしなければならない。それが自分の仕事だ。この味を守るためにしていかなければならない。自分はその仕事に誇りを持っている。


「さて、今日も終わったな」


 栄作は深く息を吸った。今日も頑張らなければ。


 と、携帯電話が鳴った。誰からだろうか? 望だろうか? それとも、それ以外の人だろうか?


「ん?」


 栄作は携帯電話の着信を受けた。


「もしもし」

「明日香です」


 明日香だ。こんな時間にどうしたんだろうか? 何か言いたい事があって、電話をかけたんだろうか? 栄作はびっくりしている。こんな時間に電話をかけるからだ。


「どうした、明日香」

「私、結婚しようと思うの?」


 それを聞いて、栄作は驚いた。明日香が結婚するとは。誰と結婚するんだろうか? 明日香は高校を卒業後、東京に行ったと聞いている。


「えっ、本当?」

「うん」


 栄作は気になった。誰と結婚するんだろう。まさか、薫と結婚したって事ではないだろうな。もし、薫と結婚するようなもんなら、もう縁を切ろうと思っている。


「どんな人と結婚するんだ?」

「会社の同僚で、保志さんっていうの。とても優しい人なの」


 それを聞いて、栄作はほっとした。前科のある人、特に薫だったらどうしようと思ったが、そんな人ではないようだ。会社の同僚で、いい人のようだ。


「そうか。幸せになれよ」


 明日香は思った。この時間、両親は忙しいだろう。答えられないだろう。両親に結婚式に来てほしいかどうか聞かないと。


「お母さん、お父さんにも言ってほしいんだけど、結婚式、出席してほしいなと思って」

「そうか。言っておくぞ」


 栄作は笑みを浮かべた。明日香も結婚するとは。本当に嬉しい出来事だな。後は望が結婚すれば完璧なんだけど。


「ありがとう。じゃあね」


 電話が切れた。その横には、安奈がいる。明日香からの電話だと知って、やって来たようだ。


「どうした?」

「明日香が結婚するんだって」


 それを聞いて、安奈は喜んだ。やはり、明日香が結婚するようだ。俊作に続いて、めでたい出来事だ。


「そっか」

「で、結婚式に両親も出席してほしいって」


 安奈は行きたいと思っている。夫はどうだろう。来るんだろうか? それとも、来れないんだろうか? まぁ、来ると思うけど。愛する娘の結婚式だから。


「本当?」

「うん」


 ふと、安奈は横を向いた。そこには俊介がいる。その会話を聞いていたようだ。明日香が結婚するというのを知っているようだ。


「じゃあ、出席しようかな?」

「そう。いいじゃない」


 2人は結婚式に参加するようだ。栄作はその様子を、じっと見ていた。自分も参加してみようかな? そして、自分のうどんをふるまうってのはどうだろう。みんな、喜ぶだろうな。




 その夜、明日の支度をしている栄作の元に、俊介と安奈がやって来た。何か言いたい事があるんだろうか? まさか、結婚式に出席したいので、その日は休みたいと言うんだろうか? 今日のお昼の会話から、そのように思える。


「どうした?」

「明日香が結婚するんだけど、結婚式に出席してもいいですか?」


 やはりそうだ。自分としてはいいけど、こっちも出席しようかな?


「いいぞ。その時になったら知らせてくれ」

「ありがとうございます」


 2人はお辞儀をした。と、大将は何かを言いたそうに見ている。どうしたんだろうか? 安奈は気になった。


「なぁ」

「大将、どうかしたんですか?」

「その結婚式、俺も出席して、うどんをふるまうってのはどうだ?」


 まさか、明日香の結婚式に栄作も出席するとは。まさか、結婚式で自分が作ったうどんを振る舞うんだろうか?


「いいじゃん! 来てよ!」

「わかった。望にも言っとくね」


 これは望にも言わないと。ひょっとして、望も来てくれるかもしれない。俊作の時もそうだった。今回も来てくれるんだろうか?


「ありがとう」


 望だけではない。俊作にも言わないと。弟の俊作も出席するだろうな。


「俊作にも言わないとね」

「そうだね」


 と、そこに望がやって来た。望はまだ後片付けが済んでいなかったようだ。


「どうしたの?」

「明日香が結婚するんだって」


 それを聞いて、望は驚いた。俊作に続いて、明日香も結婚するとは。どんな人だろうか? とても気になるな。


「そうなんだ・・・」


 だが、望は浮かれない表情だ。いつになった自分も恋に恵まれ、結婚に至れるんだろうか? 高校の頃、失恋しているから、本当に成就するのか心配だ。


「どうした?」

「いつになったら結婚できるのかなと思って」


 栄作はとても気にしている。以前、失恋した事があるからだ。今度はうまくいくんだろうか? 突然、栄作は望の肩を叩いた。何だろう。望は顔を上げた。


「いつかいい人が現れるさ。その時を待とう」

「うん・・・」


 いつもそうだ。本当に現れるんだろうか? 望は疑わしいような目で見ていた。

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