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  作者: 口羽龍
第5章 一緒に
95/101

7

 それから半年後の事だ。東京の明日香はいつものように会社で働いていた。毎日つらいけれど、すっかり慣れてきた。そして、後輩からも信頼される、優しい先輩になっていた。


 今日も仕事を終えて、帰ろうとしていた。上司は笑顔で送ってくれる。いい仕事に恵まれて、本当に充実した日々を送っている。今頃、俊作や望はどうしているんだろうか? 俊作は結婚したらしい。望はまだだろうか?


「お疲れ様です」

「お疲れ様です」


 会社の前には、1人の男が待っていた。同僚の木村保志きむらやすしだ。明日香と同期入団で、入社した時から仲が良かった。


「あっ、どうも」

「今日はここだったね」


 2人は歩きだした。明日は休みだ。今日はどこかで飲もうかと思っている。今週1週間の労をねぎらうためだ。今週もいろいろあったけれど、やっと休める。そしてまた来週も頑張ろう。


 しばらく歩いていると、今日の夜に予約していた居酒屋にやって来た。職場の最寄り駅の近くにある焼き鳥屋だ。明日香はここに初めて行く。ここは保志の行きつけの店だ。紹介して、予約したのは保志だ。どんな所だろうか? 明日香は行くのを楽しみにしていた。この日の午後から気になってしょうがなかった。


「さて、ここだったな」

「うん」


 2人は店の前にやって来た。店の前には、1人の男がいた。おそらく、案内する人と思われる。男はエプロンを付けている。


「いらっしゃいませ」

「あのー、2名で予約してました、木村です」


 保志は2名を表すVサインを見せた。店員は予約がある事を知っていた。


「はい、こちらです」


 店員は予約した席に案内した。そこはカウンター席だ。カウンター席には何人かの客が座っている。そのうちの何人かはある程度お酒を飲んで酔っている。


「ありがとうございます」


 2人が席に座ると、別の店員がやって来た。注文を聞くようだ。


「ご注文はどうなさいますか?」

「生中で」

「私も生中で」


 2人とも生中を注文した。2人とも飲む時は大体最初は生中だ。


 保志は気になった。最近の明日香の仕事の状況はどうだろう。保志は今年から別の課であまり知らない。仕事中に会った事もない。


「最近どうなの?」

「順調よ」


 それを聞いて、保志はほっとした。仕事中でも明日香が気になってしょうがない。何かで悩んでいないか、順調に仕事ができているかが気になる。


「そっか」


 ふと、保志は思った。明日香はどこの出身なんだろう。保志は明日香の事はあんまり知らなかった。履歴書を見た事すらない。


「家族は?」

「香川県にいるの。弟の俊作がいるわ」


 香川県と聞いて、真っ先に讃岐うどんが思い浮かんだ。ここ最近、この辺りでも讃岐うどんのチェーン店が増えてきている。たまに行く程度だけど、安くておいしいな。でも、本場で食べるさぬきうどんは、とてもおいしいだろうな。いつか、香川県に行ってみたいな。本場の讃岐うどんを食べて、金刀比羅宮に行きたいな。


「そうなんだ」

「お父さんとお母さんはうどん屋で働いているの」


 それを聞いて、保志は驚いた。両親がうどん屋で働いているとは。ぜひ、そのうどん屋に行ってみたいな。どんな店だろうか? 人気店だろうか?


「そうなんだ。そのうどん屋、行ってみたいな」


 と、明日香は自信気になった。両親が働いているのは、相当有名な店なんだろうか?


「そう・・・。けっこう有名な店なんだけどね」

「本当?」


 保志は驚いた。けっこう有名な店とは。どんな店だろう。旅行雑誌によく掲載されているんだろうか? たびたびテレビ番組で紹介されているんだろうか?


「うん。池辺うどんっていうの」


 保志はその店を知っている。香川県で一番おいしいと言われている有名店だ。旅行雑誌で必ず紹介されている。ここのオーナーは池辺栄作という、香川で一番と言われているうどん職人だ。まさか、明日香の両親はそこで働いているとは。かなりの有名店だから、ぜひ行ってみたいな。そして、一緒にそこのうどんを食べたいな。


「あっ、それ、知ってる! 香川で一番おいしいって言われている!」

「まさかその店を知ってるとは!」


 明日香は驚いた。こんなに池辺うどんが有名だとは。旅行雑誌は読んだ事がないけれど、池辺うどんがこれだけ雑誌に載っているとは。栄作って、すごい大将だな。


「とても有名だよ。様々な旅行雑誌に載ってる!」

「見たんだ」


 ふと、保志は思った。池辺うどんに行きたいし、金刀比羅宮にも行きたいな。あの長い階段、登り切ってお参りして、讃岐平野を一望したい。


「うん。いつか行ってみたいな、金刀比羅宮にも」

「そこまでの道、大変だよ」


 明日香はその階段を上った事がある。とても大変で、上りきる頃にはいつも汗だくになる。だけど、あの後に食べるうどんはとてもおいしいな。


「そうだよね」

「うん」


 保志は思った。いつか2人で琴平に行こう。そして、金刀比羅宮までの階段を一緒に上ろう。


「いつか、一緒に行こう」

「そうだね」


 2人は思った。いつか一緒に香川県を旅したいな。そして結婚して、子供を設けたら、家族そろって一緒に行きたいな。

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