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4年後、望や俊作も徐々に仕事に慣れてきた。そして、上司から信頼されるようになった。そして2人とも、結婚するのはいつだろうと思っていた。なかなかその時が現れない。いつになるだろうと楽しみにしていた。だが、なかなか訪れないままだ。
だが、俊作には徐々に結婚が近づいていた。俊作は今日も1日の仕事を終えた。残業になる事はないものの、かなり疲れる。明日は休みだ。ゆっくり休もう。
「お疲れ様ですー」
「お疲れ様です」
俊作は職場を後にして、マイカーに乗ろうとしていた。俊作は高校を卒業する直前に運転免許を取り、父からマイカーをプレゼントされた。俊作はとても喜んだという。
と、車を挟んだ向かいには、1人の女性がいた。その女の名前は留美で、会社の同僚だ。少し先に退勤していたが、なぜか今日はここにいる。どうしてだろう。言いたい事があるんだろうか?
「どうしたの?」
「明日、高松駅周辺に行こうかなと思って」
俊作は驚いた。急にどうしたんだろう。何か、言いたい事があるんだろうか? 全くわからないな。
「いいけど」
それを聞いて、留美は喜んだ。ここ最近、2人で高松に行く事が多い。どうやらデートのようだ。この関係がいい様に続くといいな。
「うん」
「ありがとう!」
留美は去っていった。留美はこの近くに住んでいて、徒歩で帰宅する。俊作はそんな留美の後ろ姿を見ていた。この子は優しいな。この子となら結婚したいな。きっと家族も受け入れてくれるだろうな。
車で家に帰宅する間、俊作は留美の事を考えていた。初めてできた恋人、この恋が順調に続き、結婚に至るといいな。そして、子供が欲しいな。それはいつになるんだろう。俊作はいつも以上にご機嫌だ。だが、そればかり考えていては、仕事がうまくいかないだろう。もっと頑張らなければ。
俊作はいつも通り帰宅した。すでに暗くなっていて、家の明かりがついている。昔はもっと多くの明かりがあった。明日香や望がいたからだ。だが、明日香は東京に行き、望は大将と同居している。住んでいるのは両親と自分だけになってしまった。結婚したら、また明かりが増えるだろうな。そうなるように、この恋を成就させないと。
「ただいまー」
俊作はいつも通り帰宅した。やっと家に帰れた。それだけでも嬉しいな。
「おかえりー」
それとともに、安奈がやって来た。安奈はエプロンを付けている。晩ごはんの匂いがする。晩ごはんを作っているようだ。
「母さん、明日、用事で高松に行くから」
それを聞いて、安奈は驚いた。どうしたんだろう。何をしに行くんだろう。ここ最近、週末は高松に出かける事が多い。どうしたんだろう。誰かと会う予定があるんだろうか? そして、何をするんだろうか? ひょっとして、デートだろうか?
「そう。気を付けてね」
だが、安奈は何も言おうとしない。きっと、話したくない理由があるんだろう。言わないようにしよう。
「うん」
俊作は2階に向かた。その様子を、安奈はじっと見ていた。
「どうしたんだろう」
安奈は横を向いた。そこには俊介がいる。俊介も、俊作が週末に高松に行っている事を気にしていた。何か悪い秘密だったらどうしようと不安になっている。
「わからない」
「うーん・・・」
ふと、安奈は思った。自分が俊介と恋に落ちた時の事を思い出した。あの頃は高松でよくデートをしたな。その時は、両親には内緒だったな。まるであの時とよく似ている。まさか、俊作は恋に落ちているのでは?
「恋じゃないだろうか?」
「わからないけど、そうかもしれないね」
俊介もそう思った。誰にも言えない何かだとすると、ひょっとして鯉なんだろうかと思う。
「聞いてみよう」
「うん」
2人はダイニングに向かった。何も言わないようにしよう。放っておこう。
その翌日、俊作はいつものように目を覚ました。今日は留美とのデートの日だ。留美を車で迎えに行って、高松に行き、そこでデートをする。
俊作はダイニングにやって来た。安奈がいつものように朝食を作っている。テーブルにはすでにごはんとみそ汁が置いてある。
「おはよう」
「おはよう」
「どうして高松に行くの?」
俊介の言葉に、俊作は戸惑った。どう答えよう。全く思いつかないな。お見合いをするまで、留美の事は秘密なのに。
「何でもないよ」
だが、何も言おうとしなかった。だが、2人はわかっていた。きっとデートなんだろうと。望の高校生の頃の初恋もそうだった。あれは成就しなかったけど、よかったな。
「そう」
結局、わからなかった。本当は何なんだろう。疑問ばかりだ。だが、徐々にわかるだろう。
朝食を食べ終え、歯を磨いた俊作は、出かけようとしていた。留美が待ちくたびれているだろう。早く行かないと。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そして、俊作は家を出ていった。2人はその様子をじっと見ている。
「結局、わからなかったね」
「うん」
「放っておこう」
「そうだね」
2人は笑顔でその様子を見ていた。いつか、その理由がわかりますように。




