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翌日、望はお台場にいた。お台場は海沿いにある娯楽の多くある場所で、東京ビッグサイトなどがある。とてもいい眺めだな。そして、海から東京の高層ビルが見える。こんな都会に住むって、あこがれるな。だけど、自分は香川県でうどん職人にならなくては。栄作の後を継がなければ。だけど、それについて薫はどう思っているんだろう。悔しがっているんだろうか? 仕方ないと思っているんだろうか? とても気になるな。
「これがお台場か」
お台場には多くの観光客が来ている。彼らはみんな楽しそうだ。その中にはカップルがいる。彼らを見て、望は思った。自分はどんな人と恋に落ちるんだろうか? だけど、恋に落ちても、自分が養子とわかると、フラれるんじゃないだろうか? 望は高校時代に郁代と別れた事を思い出した。養子とわかると、フラれてしまった。あれ以来、恋に落ちていない。そう思うと、本当に自分は養子として生まれてよかったんだろうかと思ってしまう。だが、それが人生。受け止めなければならない。
「いい眺めだなー」
望はそれを紛らわすために、海から見る高層ビルの眺めを見ていた。見ていると、なぜか落ち着く。どうしてだろう。海からの眺めには、そんな力があるんだろうか?
「もう帰ろう」
そろそろ帰らなければ。望はゆりかもめの駅に向かった。ゆりかもめは新交通システムで、新橋からお台場を通って、豊洲までを結んでいる。途中、ループ線があるのも特徴だ。
望はゆりかもめの駅にやって来た。駅には多くの若者がいる。彼らはどんな夢や目標があるんだろうか? 教員だろうか? 普通の会社員だろうか? それとも、アスリートだろうか? 自分はうどん職人だ。そういう運命に生まれたようなものだから。ふと、望は思った。薫はうどん職人になりたいという夢をもってやって来た。なのに、香川県で栄作の後を継げないでいる。東京は自分が成長できる場所だけど、道を踏み外したら、こうなってしまうんだな。こうならないためにも、謙虚に、悪い事をせずに生きていかなければならないんだな。
望はゆりかもめからお台場を見ていた。お台場はとても魅力的な場所だ。また行きたいな。そして、また行く事があれば、誰かと行きたいな。
レインボーブリッジを渡ると、ゆりかもめは左にカーブしていく。有名なループ線だ。乗っている人々は驚く。こんな路線があるんだなと。望も思わず見入ってしまった。そして、レインボーブリッジの大きさに呆然としていた。
望は新橋駅にやって来た。JRで品川駅に行き、新幹線で岡山駅に行かないと。新橋には多くのビジネスマンがいる。そろそろ帰宅ラッシュだ。その中には、新橋で一派飲んでいこうというサラリーマンもいる。望はまだ飲めない年齢だが、20歳になったらこうやって飲みに付き合わなければならないんだろうか? 自分は大丈夫なんだろうか? 望は少し不安になった。
JRで望は品川駅にやって来た。ここから新幹線で岡山駅までひとっ飛びだ。新幹線へ向かう通路には、多くの家族連れがいる。春休みで東京に来ていると思われる。彼らはとても楽しそうだ。望は思った。いつか、自分もこんな家族を築くんだろうな。果たして自分は、どんな家族を築くんだろう。どんな家族であれ、幸せな家庭がいいな。トラブルに巻き込まれず、笑顔が絶えない、そんな家族がいいな。
望は新幹線に乗った。これに乗れば岡山まで行ける。だが、かなりの時間がかかる。その間、少し寝て旅の疲れをとろうかな? 指定された席に座った望は、すぐに寝てしまった。それから間もなく、新幹線は品川駅を出発した。
その間、望はこれまでの人生を思い出していた。いろいろあったけど、栄作のおかげでこんな夢を持つ事ができた。とても嬉しいな。そして、来月からは栄作と一緒に働くことになる。いろんな困難があるかもしれないけれど、自分なら大丈夫。きっといい未来が待っているさ。
望が目を覚ますと、そこは京都だった。思えば京都は小学校の修学旅行で行ったっけ。そこで、金閣寺、銀閣寺、宇治平等院鳳凰堂などに行ったっけ。とても楽しかったな。今度は家族と行きたいな。きっと栄作も喜ぶだろうな。
新大阪駅を出ると、次は新神戸駅だ。そう考えると、岡山が近づいてきたと思わせる。望は大阪の街並みを見ていた。大阪は行った事がないけれど、行ってみたいな。特に行ってみたいと思っているのは、ユニバーサルスタジオジャパンだ。いつか家族で行ってみたいな。そして、いろんなお土産を買いたいな。だけど、いつになるんだろうな。
新幹線は新神戸駅に着いた。次は岡山駅だ。そろそろ降りる支度をしないと。そして望は感じていた。徐々に四国が、自分のいるべき場所が近づいてきたんだなと。僕はそこで頑張らなければならない。それは自分の決めた道なんだ。いつか、大将の味を受け継ぎ、みんなを笑顔にするんだ。その為には何が必要なのか、自分で考え、そして行動していかなければならない。それが自分に与えられた使命なのだから。