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  作者: 口羽龍
第4章 養子と実子
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3

 望が目を覚ますと、新幹線はゆっくりと走っている。新幹線は横浜市内を走っている。車窓を見て、東京まであと少しだと思った。そろそろ準備をしないと。周りの乗客は増えている。新大阪駅から多くの乗客が入ってきて、車内は座席が埋まっている。かつて、のぞみは指定席だったが、のぞみの本数が増え、自由席が設けられたという。


 のぞみは品川駅に停まった。ここまでくれば東京はすぐそこだ。そう思うと、望は気持ちが高ぶってきた。すでに行きたい所は決めてある。浅草寺やお台場だ。どこも行きたいけれど、思い出の場所にも行きたい。あのうどん屋にもう一度行ってみたいな。あれからどうなったのか、気になるな。


 のぞみは東京駅に停まった。望はホームから降り、東京の空気を吸った。あの頃と全く変わっていない。だが、東京は変わりゆく。変わる中で、変わらないものもある。


「ここが東京。あの時と比べて変わったな」


 ふと、望は東海道線の時刻表を見た。そこには様々な電車の発車時刻が載っている。その中に、サンライズ瀬戸・出雲がある。サンライズ出雲は高松まで走っている寝台特急だ。


「サンライズ瀬戸・・・、これに乗れば高松までまっすぐ帰れるのか」


 望はまず、山手線に乗った。上野から地下鉄銀座線に乗って浅草に行くようだ。まずは浅草寺に行ってみたいな。これから池辺うどんで頑張っていけるように。お祈りをしないと。


 望は山手線のホームにやって来た。ホームには多くの人がいる。実家の最寄り駅である滝宮駅とは比べ物にならないぐらい人がいるし、ホームが大きくて長い。これが都会なんだな。ふと、望は思った。栄作の本当の息子、薫もここにいるという。もう出所して、今頃何をしているんだろう。罪を犯したとはいえ、とても気になるな。


「すごい人だな」


 望は山手線の電車に乗った。電車には多くの人が乗っている。まるで通勤ラッシュのようだが、今はデータイムだ。データイムでもこれだけの人がいるのなら、朝の通勤ラッシュにはどれだけの人が入って、どれだけの混雑なんだろう。


 望は上野駅で降りた。上野駅は北の玄関口で、かつては東北や北陸へ向かう特急や急行が多く発着した。だが、高速道路の発達や新幹線の開業で急行は全てなくなり、特急は少なくなった。あの頃とは違い、通勤電車が多く発着するようになった。だけど、いまだにここから発着する特急がある。


 望は東京メトロの上野駅にやって来た。昭和2年、ここから浅草駅までが日本初の地下鉄として開業した。ホームには多くの人がいる。その中には家族連れもいる。彼らも東京を旅しに来たんだろうか?


 銀座線の電車が上野駅にやって来た。6両編成の電車だ。望は電車に乗った。中はとても近代的だ。望が乗って間もなく、ブザーが鳴り、ドアが閉まった。浅草までの途中駅は2駅だ。


 電車は終点の浅草駅にやって来た。浅草駅の改札を出ると、レトロな空間が広がる。浅草地下街だ。開業当時からある地下街で、どこか見入ってしまう。どうしてだろう。


 浅草駅の地上に降り立つと、目の前にデパートがある。松屋デパートで、その2階には東武電車の乗り場がある。東武電車はこの駅を出るとすぐに右に曲がり、隅田川を渡る。丁度、特急スペーシアが浅草駅を後にして、隅田川橋梁へ向かうところだ。それを見て、望は思った、いつか家族で日光に行きたいな。だけど、そんな機会が訪れるかわからない。仕事ばっかりだからだ。だけど、有休を使って行ってみたいな。


 と、望はその先を見た。その先には建設中の東京スカイツリーが見える。これが東京の新しい電波塔なのか。いつかそこにも行ってみたいな。


「スカイツリーが建設中。できたら、機会があれば行きたいな」


 だが、まだスカイツリーにいはいけない。今日は浅草寺に向かおう。


「浅草寺に行こう」


 望は浅草を歩いていた。浅草は古くからの街並みが残っている。この辺りは外国人観光客にも人気のスポットだ。そこにスカイツリーができると、より一層浅草は賑わうだろうな。


 しばらく歩いていると、浅草寺に通じる門前町にやって来た。門前町は多くの観光客で賑わっている。その先には浅草寺があり、今日も多くの人が参拝している。


「ここが浅草寺なのか」


 望は浅草寺に向かった。門前町へは行こうと思っていない。参拝するのが目的だ。


 望は浅草寺の建物の前にやって来た。すでに投げ入れるお金は持っている。望はお金を投げ入れて、一礼した。


「うどん職人として頑張れますように」


 望は参拝を終えると、銀座線の浅草駅に向かった。今度向かうのは渋谷だ。渋谷は若者の街だ。修学旅行では渋谷に行かなかった。行きたいと思っていたが、判別行動でも予定ルートでも行かなかった。


 望は銀座線の浅草駅に戻ってきた。浅草駅にはすでに電車が停まっている。これが次の渋谷行きだ。今度はこれに乗って終点の渋谷まで向かう。


 望の乗った電車は浅草駅を後にした。銀座線の電車は地下を走っていく。乗客の多くは観光客だ。彼らはどこに行くんだろう。銀座だろうか? それとも渋谷だろうか?


 彼らを見て、望は思った。この中に、薫はいるんだろうか? もし、薫がいるのなら、今何をしているのか聞きたいな。

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