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  作者: 口羽龍
第3章 薫
61/87

23

 翌日、望は何も知らずに登校してきた。望の表情は変わっていない。今日も郁代が話しかけてくれると思っている。


「おはよう」


 だが、郁代の様子がおかしい。全く話しかけようとしない。望は戸惑った。郁代に何があったんだろうか? まさか、フラれたんだろうか?


「どうしたんだよ、無口になって」


 と、そこに同級生の高柳がやって来た。高柳も明らかにおかしいと思った。いつも望と仲がいいはずの郁代がむっつりしている。何があったんだろう。


「あれ?」


 高柳は望の隣にやって来た。望は横を向いた。望は不安そうな表情だ。望が原因ではないように見える。


「どうしたんだい?」

「郁代ちゃんが無口なんだよ」


 やっぱりそうか。高柳は怪しそうに見ていた。果たして郁代に何があったんだろう。


「えっ!?」

「仲が良かったのに」


 望は不安そうな表情だ。このまま恋は終わってしまうんだろうか? その原因は何だろう。教えてほしいのに、話しかけてくれない。どうしよう。


「どうしたんだろうね」

「うーん・・・」


 と、高柳は思った。郁代の見えない場所で郁代の話を聞いてみよう。そうすれば、わかるかもしれない。


「その理由を突き止めてみよう」

「・・・、わかった」


 だが、望はあきらめない。自分から話しかければ、何とかなるかもしれない。どうしよう。


「なぁ郁代ちゃん」

「どうしたの?」


 やっと郁代が話しかけた。どうしてむっつりしているのか、聞きたいな。


「どうして望くんを無視してるの?」

「何でもないの・・・」


 だが、郁代は何も言おうとしない。望は下を向いた。はっきりと話してほしいな。ボーイフレンドじゃないか。


 結局、何も聞く事ができなかった。高柳はため息をついて、机に座った。


「どうだった?」


 高柳は横を向いた。話しかけたのは望だ。高柳も不安に思っていた。


「わからない」

「わからないのか・・・。知りたかったのにな」


 結局、その原因はわからなかったのか。2人とも、下を向いてしまった。その原因がわかればいいんだけど。


「先日までは仲が良かったのにな。どうしてこんなに性格が変わってしまったんだろう」

「わからないな」


 と、そこに同級背の中村がやって来た。中村も2人の表情が気になった。朝からどうしてこんなに落ち起こんでいるんだろう。何か大変な事があったんだろうか?


「どうしよう・・・」

「心配なの?」


 中村は様子から何があったのか分かった。郁代が話しかけないんだろう。昨日まで望と仲が良かったのに。


「うん。せっかく仲良くなったのにな」


 と、中村が望の肩を叩いた。望は驚いた。急に何だろう。


「きっと元通りになるさ」


 だが、望は疑問に思った。本当に大丈夫なんだろうか? 恋は元通りになるんだろうか? このまま別れてしまうのでは?


「なるのかな? ひょっとして、僕が養子だからこうなったのかな?」

「望・・・」


 それを聞いて、2人は何かに気付いた。もしかして、望が栄作の本当の息子ではないって事を知って、無視しているのでは? 高柳も中村も全く気にしていない。だけど、郁代はそれにショックを受けて、むっつりしているんだろうか?


「それで嫌な目で見られたから、そう思っただけ」


 望は小学校1年生の頃を思い出した。栄作の本当の息子ではないって事がわかり、みんなからいじめられた事がある。あの時は、先生や近所の人々が何とかしてくれた。だが、ここでまた問題になるとは。


「・・・、まさか・・・」


 2人も驚いている。まさか、ここで影響が出るとは。


「いや、僕は悪いと思ってないよ」

「そっか。でも気になるな。また聞いてみるよ」


 それを聞くと、望は顔を上げた。2人がきっと何とかしてくれる。だから心配するな。


「ありがとう。僕も直接聞いてみるよ」

「わかった」

「じゃあ、僕は戻るね」


 授業のチャイムが鳴り、担任の先生が入ってきた。そしていつもの1日が始まる。だが、郁代がむっつりしているせいで、いつもと違う1日だ。これから自分はどう生きていけばいいんだろう。誰と恋に落ちればいいんだろう。全く思いつかない。




 夕方、望は滝宮駅から実家への道を歩いていた。だが、いつもと違い、下を向いている。郁代の表情が気になるのだ。きっとこのまま別れるんだろう。一緒にデートしたし、池辺うどんに行ったし。ここまで恋愛がうまくいっていたのに。まさかここで別れるとは。全く予想していなかった。


「うーん・・・」


 突然、誰かが望の肩を叩いた。望は振り向いた。そこには俊作がいる。俊作も帰っている途中だ。まさかここで会うとは。


「どうしたんだい?」


 俊作は、望の表情が気になった。いつもと違い、暗い表情だ。下を向いている。いったい何があったんだろう。話してみてよ。友達じゃないか。


「何でもないよ」


 だが、望は何も言う事ができない。フラれたなんて、誰にも言えない。付き合っていると誰にも言っていない。


「そっか。元気出せよ」

「わかってるよ」


 だが、望は下を向いたままだ。これから自分は、どうすればいいんだろう。誰と付き合えばいいんだろう。たとえ付き合っても、自分が栄作の本当の子供じゃないと知ったら、またフラれるんじゃないかな? そして自分は、一生独身のままで終わるんじゃないかな?

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