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  作者: 口羽龍
第3章 薫
55/88

17

 翌日、卒業式の日を迎えた。望はいつものように目を覚ました。だが、今日はいつもの日ではない。卒業式だ。今日は栄作も来るだろう。栄作の前でかっこいい姿を見せないと。


 起きた望は、いつものように池辺うどんを見ている。高校受験の頃は毎朝来なかったが、受験が終わると再び来るようになった。いつもと違って俊介の車がある。その車は深夜3時からあると思われる。少し見て、望は1階のダイニングに向かった。


 望は1階のダイニングにやって来た。そこには安奈、俊作、明日香がいる。俊介は深夜からうどんの仕込みをしていて、今朝はいない。栄作が卒業式に出席するために、代わりに仕込みを任されているようだ。みんな嬉しそうだ。まるで望の卒業を祝っているようだ。


「おはよう」

「今日は卒業式だね」


 安奈はいつも以上に元気がいい。それを聞いて、希望が今日が卒業式だと改めて実感した。


「うん」

「いろいろあったけど、今日で終わりだね」


 明日香も嬉しそうだ。3年間が走馬灯のようによみがえる。いろいろあったけど、いい3年間だった。


「うん」

「修学旅行楽しかったね」


 それを聞くと、望はあのうどんを思い出した。あのセルフうどんはどうして初めてなのにどこか懐かしさを感じたんだろうか?


「うん」

「どうしたの?」


 俊作は望の表情が気になった。またあのうどんの事を考えているんだろうか? もう忘れてほしいのに。ここで食べるうどんが一番なのに。


「いや、何でもないよ」

「そっか」


 望は朝食を食べ始めた。みんな、嬉しそうだ。ここまで育ってくれた嬉しさと、これからどんな高校生活を送るんだろうという期待でいっぱいだ。


 望は栄作の事を考えていた。今日の卒業式を、栄作はどう思っているんだろう。本当の息子ではないけれど、嬉しく思っているんだろうか?


 望は朝食を食べ終え、歯を磨いて、2階に向かった。その足取りは重そうだ。どこか緊張している。安奈はそんな望の後ろ姿を見ている。緊張してほしくない。いつも通りの表情で臨んでほしい。


 しばらくして、学ラン姿の望がやって来た。すると、家族がみんなやって来た。


「じゃあ、行こうか?」

「うん」


 望は中学校に向かった。みんなその様子を見ている。と、そこには栄作の姿もいる。この後、卒業式に出席する予定だ。この後、中学校に向かうのだろう。


 望は中学校にやって来た。校門には卒業式を知らせる看板がある。今日は特別は1日なのがわかる。みんな学ラン姿だ。いつもはほとんどの生徒がジャージなのに。


 望は教室にやって来た。教室には生徒がいて、黒板には落書きがある。それは、生徒がチョークで書いたもので、とてもカラフルだ。思わず見とれてしまう。希望はそれに見とれていた。こんなサプライズがあるとは。卒業の日って、すごいなと改めて思った。


 いよいよ、卒業式の行われる体育館に向かう時が来た。生徒は整列して、体育館に向かう準備ができている。望を含め、みんなが緊張している。望は今日まで自分を支えてくれた人々の事を考えた。彼らのためにも、今日の卒業式でかっこいい自分を見せないと。


 卒業生は体育館の前にやって来た。体育館には、卒業生の保護者や、在校生がいる。


「卒業生、入場!」


 その声とともに、卒業生が体育館に入っていく。すると、卒業生の保護者や在校生は、拍手をした。その光景を見て、望は驚いた。こんなに多くの人が卒業を祝福している。そんな彼らのためにも、今日の事を忘れずに、来月から始まる3年間の高校生活を頑張らなければ。


 ふと、望は保護者の席に、栄作がいるのを見つけた。普段は白い従業員の服を着ている栄作も、今日は黒いスーツを着ている。スーツを着る栄作は、卒業式や入学式でしか見た事がなく、どこか新鮮だ。血はつながっていないものの、本当の息子じゃないものの、卒業式に来てくれた。きっと、天国の本当の両親も喜んでいるだろうな。




 望は家に帰ってきた。望は空を見上げ、大きく息を吸い込んだ。今日もこうして帰ってきた。来月からは高校生だ。もっと難しい事を勉強するだろう。もっと頑張らないと。


 望は家の中に入った。すると、みんながやって来た。


「卒業、おめでとう!」

「ありがとう!」


 と、俊作が肩を叩いた。望は背筋が立った。


「来月から高校生だけど、頑張れよ!」

「うん!」


 と、そこに栄作がやって来た。栄作はスーツ姿だ。そして、いつもの厳しさがまるで嘘のような笑顔だ。


「本当にここまで育ってくれて、ありがとうな」

「今日はよかったね」

「うん」


 望は卒業証書の入った筒を見せた。それを見て、栄作は喜んだ。


「これが卒業証書か」

「うん」


 と、そこに明日香と俊作もやって来た。2人とも、今日は休みだ。


「よく頑張ったね!」

「ありがとう」


 来月から自分たちと同じ高校生だ。高校ではいろいろあるけど、お互い頑張ろう。そしていい進路を目指そう。


「来月からまた頑張ろうね」

「うん」


 望はこれからの高校生活を夢見た。高校ではもっと勉強して、恋もしたいな。

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