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ロッテンハイマーという町で

 大通りを歩く。

 青い空、白い雲、活気のある市場。

 石造りの家々が立ち並び、色とりどりの屋根、石畳・・・・・・。

 地中海沿岸の町でカラフルなところがあったな、などと思い出すが本当にそうだったかは定かではない。

 どうやら斜面を拓いて作られた町らしい。

「活気のあるこって」

少し歩くと角を曲がり、主要道路に当たる部分だろうか。

 より広い道の左右には店舗が並び、路上に敷物を敷いた露店、何台かの馬車行き交う事から道幅はかなり広い。

 現代の4~6車線道路くらいかな、とユーマは考える。

 青空市場というべきか露店というべきだろうか。

 フリーマーケットみたいな区画では、色々な肌に現実ではありえなさそうな髪色の人たちが集う。

 者を売る側だったり、買う側だったり様々だ。

「ふーん?」

キッチンカーというべきか屋台というべきか。

 馬車の車体を改造したものでは、香ばしい匂いのメニューが並ぶ。



 ブラブラ散策しながら値札を見ると明らかに日本円では無い価格表示。


 “リヴゥの実 50B”


 リンゴそっくりの見た目の果実が山盛り売られている。

 50Bとかなんだ? バーツとかいう風に読むのだろうか?

 だが、どんなにおいしそうであっても、ユーマには手の届かない代物だ。

「そもそも金を持っていないしなぁ」

ゴッデスポイントとかいうのを貰ったけれど、ポイントであってお金では無いのだ。

 哀しい瞳にラーメンみたいな食べ物が映る。

「ああ、そういえば」

ラーメンを作ったのだ。

 トイレに行く前に数口だけ食べた。

「・・・・・・」

で、ほとんど食べていなかったラーメンを置いてきてしまった。

 今ごろ冷めて、伸び切ってしまっているだろうラーメン。

 当然のように腹が減って仕方ない。

「ラーメン・・・・・・」


虚ろな瞳で見つめるユーマと商人のおじさんの目が合う。

「お、にいさん今朝採れたてのリヴゥうまいぞ! 50ブロンズだ。新鮮で安い! どうだ! 5個買えば1個おまけするぜ!!」

ラーメンではない、見た目がリンゴみたいな果物だ。

 木の実というかリンゴみたいな果物よりガツンとした味わいのものが食べたかった。


 そして、ブロンズという響きからして銅貨だろう。

 これで変化球の白金だとか黄金とかいうパターンだとしたら、この世界の神は性格が悪い。

「ふむ・・・・・・背に腹はなんとやら」

とは言ったものの金が無い。

「無念」

ワケの分からんポイントよりも先立つものは現金である。

(お金を手に入れないと。ハ〇ーン様、ポイント使う)

名前を聞き忘れたので、俗物おねえさんと呼ぶわけにはいかない。

 ならば、やむを得ない。

 某アニメのキャラクター名で念じるしかなかった。

『そのような名前ではない。私のことは勇冥野稲荷―――』

(え、イサオメイ・・・・・・? なんて?)

即反応があったが、やはり聞き取れない。

『イサオメイヤイナリ』

(イサオメイナリヤリリ・・・・・・?)

もう少し、ゆっくり喋ってほしい。

『もうよい! 下がれ俗物! チグサと呼べ。様を忘れるな!!』

しかしユーマの切実な願いは聞き届けられることは無かった。

 拝啓チグサ様、逆に聞き慣れない長い名称を一言一句間違わない方がムリでは無かろうか。

 とにかく彼女は早口であった。


(チグサ様、ポイント使う)

『ゴホン! ゴッデスポイントを換金するが良いか?』

強く心から求めると再びチグサ様の声が聞こえる。


どうやら“強く念じる”と良いらしい。


やはりエスパー的な能力に目覚めたのかもしれん。

どうせ錯覚であろうけれど。


(日本円1万円分くらいに換金したい)

そもそも1ポイント何円くらいなのかとか換金以外の用途は何なのかとか疑問は尽きない。

とりあえず今は現金が欲しい。


『ゴッデスポイント100を金貨10に変換する。残400.まだ何か必要か?』


 ゴッデスポイント100が1万円、金貨1枚は1000円のようだ。

 となると普通に考えるとシルバー(銀貨)みたいなものがあり、恐らく銀貨1枚100円だろう。

 銅貨1枚は10円だろうか。


 銅貨50枚・・・・・・リンゴみたいな何かは1個500円!?

 た、高い・・・・・・。

 ユーマはニヘラと笑い、買わずに立ち去った。

 後ろから、おっさんの舌打ちが聞こえたが無視するに限る。

 面倒ごとからはできる限り距離を置く。

 それが、ユーマという男であった。


(他に使用用途は?)

ダメもとだ。

「分かりません」とか返ってきたら仕方ないけれどゴッデスポイントなるものの使い方くらい教えてほしい。

 かくしてーーー。


『ナビが変わります―――』

やけに機械っぽい声。

 ポケットの中の金貨10枚をころがしながら、説明を待つ。


『無償ゴッデスポイントは通貨、一部のスキルポイント、各種道具と交換できる。有償ゴッデスポイントは多岐にわたるため述べ切れない。一例として水道代、電気代、ガス代、ホームシステムの拡張などにも使用可能』

どこか軽快な口調で喋るおじいちゃん声だ。

 その内、ここに3つの玉があるじゃろ、とか言い出しそうな声である。


 水道代・・・・・・?


(・・・・・・水道代とは?)

『現在だと、お前のトイレの水が影響を受ける』

ポイントが尽きると流れなくなるというのだ。

 という事はトイレを維持している限り、現実に帰れる見込み有りという事だ。

「稼がねば」

ユーマは短く呟き、大きく一歩を踏み出した。


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