misshon3 ギャンブル
「うわ〜…」
ギャンブルやセックスしか娯楽のないこの街で、あたしは度々ここに入り浸る事がある。
新宿の裏通りにある、非合法の賭博所―対戦ゲームで金を賭けたりするところだ。違法だけど。
あたしは、煙草を吸いながら店の壁にもたれ掛かった。今日は13勝1敗。上々だ。イカサマもばれなかったし。そろそろ帰ろうかな。マークされたら大変。
…んん? 前方でキョロキョロしてるアレは、どう見ても学生服姿の子供だよね。高校生でも、ここはまだちょっと早いかもよ。
こんなトコでうろうろするなんて…あぁ〜あ、絡まれてる。
あいつらの事は知っている。無茶苦茶なハメ技するし、よくリーマンをカモってる。あんな何も知らないウブな子、幾ら分捕られても知らねーぞ。
あ、駄目。のせられちゃ駄目。そいつら全員八百長だよ…。
でも、ちょっと面白そう。あ、トランプでやるんだ。
「バカラでイイ?」
「…はい」
店内が騒々しいせいで、よく聞こえない。
にしてもあの子、ルール分かるのかな。あたしは少し前方に移動し、ギャラリーの中に加わった。
一応様にはなってるけど、慣れて無さそうだし上手い具合に誘導されちゃってる。
「あたし、黒。あんたは赤ね」
「…はい」
「じゃ、ディーラーさん、お願い」
あの子幾ら賭けてんの? おお、万札。金持ちの坊ちゃんって訳ね、成程。
あれを全部、あたしが盗るにはどうしたら良いか。もう立ち入り禁止になるの必須だけど、もう充分目付けられてるし、一緒だろ。あたしは心を決めた。
「サツが来るーっみんな逃げやがれー!」
下腹に空気を目一杯溜めて、思いっきり叫んだ。