misshon2 後半
まさか、こんなに手荒な歓迎を受けるなんて。
放課後のチャイムが鳴り響く教室で、私は一人、呆然としていた。
根暗って、こんなに嫌われるものなんだ。あ、でも、髪がクルクルの女の子が、頭が良いからって出しゃばんないでって言ってたから、授業中に発言し過ぎたのが問題かも。
それとも、あの地理のかっこいい先生に私がべた褒めされたから? なんか、‘カーヤ’とか言う男が凄いキレてたっぽいし。ゲイなのかな、あの人。
手荒な歓迎―それと言うのも、歓迎会と称してカフェテリアで熱々のホットコーヒーを浴びせられ(不意打ちだった)、トイレで水浸しにされ(どっちにしろ火傷で熱かったし)、罵倒の言葉を浴びせられ…という始末。私は頑張って殺意を押し殺した。下手に反撃したりしたら、ヴァネッサに迷惑をかけることになっちゃうし。
男女問わず、中々皆乱暴者だった。
火傷が、酷い。取り合えず、
「男のとこ、行こう」
と思い、私は初日の学校を後にした。
今ヴァネッサんとこに帰ったら、余計な心配を掛けちゃう。優しい彼女は、まさかクラスメートがこんな事をするなんて思いもよらないだろうし、組織の人間が接触してきたとか思われたら色々大変。
…まあ色々あったけど素性はバレる事は無かった。あんな派手な歓迎の後、私と仲良くしようと思う人なんて現れないだろう。まあそれで良しとしよう。
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「畜生あの女、殺してやる」
牛乳パックを握りつぶして、俺はそう呟いた。隣で並んで歩いていた要が興味深そうに聞いてきた。
「えー、だれだれ、女って。カーヤはさぁ、虫が沸くみたいにいつも女の子が集ってるからさぁ」
「そーゆう意味の女じゃねぇよ。町田歌子ってゆって。ウチのクラスの転入生」
「あ、知ってる知ってる。頭の良い子でしょ? なんか先生らが皆関心してたって。赤坂が言ってたんだけど。職員室行った時、皆その子の噂してたって」
「ムカつく。紀伊だって、なんであんな奴に優しくすんだよ」
隣で、要が息を呑むのが分かった。
「まだ紀伊ちゃんとの復縁狙ってんの!?」
別に何と思われても構わない。ただ、腹の虫が収まらない。
紀伊も紀伊だ。なんで、俺にその笑顔を向けない? なんで、俺にだけ冷たいんだよ?
どいつもこいつも…
気がつくと、俺の足は、いつも親父が金を摩っている賭博場に向かっていた。