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夜泣き

作者: ネト



夜泣きが止まらない、いつも家に帰ると一人で泣きながら眠る、朝が本当にくるのが怖くて泣いている、悲しい男。そして俺は、あの日を境に少しずつ変わっていった。


いつものように予備校に行き、家に帰って勉強をする日々を繰り返していた。


しかしあの日から、俺の人生は変わり始めたのだ。


あの日は予備校での授業が終わった後、友達に誘われてカラオケに行った。


俺は正直言って歌がうまいわけでもないし、音楽も好きじゃない。


だから断ったのだが、無理やり連れていかれた。


しかし、それが間違いだった。


帰り道に運悪く酔っ払いに絡まれてしまったのだ。


友達と別れてすぐのことだった。


「なぁ兄ちゃん、いい女がいる店知ってるんだけどよぉ、一緒に行こうぜぇ」


俺より背の低い男は俺の腕をつかんでそういった。


その時は、この手の人間には何をいっても無駄だと思っていたから無視して帰ろうとしたんだ。


だがそいつはしつこく俺につきまとう、仕方がないから適当にあしらって帰ろうと思った時だった。


「ねぇちょっとあんた! その子嫌がってんじゃない! 放しなさいよ!」


どこかで聞いたことのある声がした。


その声の主の方を見るとそこには見覚えのある顔があった。


そうだ、思い出した、こいつは高校時代の同級生で今は別のクラスになった、田中沙耶香だ。


彼女は昔から正義感が強く、よくいじめや恐喝などを見かけたら助けに入るような奴だった。


確か学級委員長をやっていたと思う。


彼女は俺を見つけると俺の手を引っ張って走り出した。


そしてそのまま路地裏に入り込んだ。


「あんた何やってんの!? あのままじゃ危なかったわよ!?」


沙耶香は心配そうにそういった。


そんな彼女を見て俺は素直に感謝の言葉を伝えた。


すると彼女は頬を赤く染めながら照れていた。


それから少し話をして、俺は彼女と別れた。


家に帰ってからも彼女のことが頭から離れなかった。


なぜだろうか、なぜか気になる。


これが初恋というやつなのかもしれない。


こんな気持ちは初めてだった。


翌日学校に行くとクラスの連中が昨日のことを話題にして盛り上がっていた。


話を聞いてみるとどうやら昨日絡んできた奴らは相当ヤバいらしく、警察沙汰にもなったらしい。


だがそんなことよりも気になったのは彼女が俺の名前を出したことだ。


まさかと思い教室に入るとすぐに彼女に話し掛けた。


するとやはり、彼女は俺の名前を言ったらしい。


しかし特に何かあったわけではないようだ。


その後しばらく話をしていると授業開始のチャイムが鳴ったため会話を中断し席に着いた。


その日の夜、いつものように予備校に行っていた時だ。


またあの男が現れた。


男は俺の顔を見るなりニヤリと笑みを浮かべ近づいてきた。


俺も逃げるように後ずさりしていたのだが、逃げ場がなくなった瞬間腕を掴まれた。


その時、男が言った一言は今でも忘れていない。


「なぁ兄ちゃん、お前のおかげで人生狂っちまったよ。この落とし前つけてくれや」


その言葉と同時に腹に鈍痛が走った。


あまりの痛みにうずくまっていると頭を足で踏まれている感覚が伝わってきた。


その時、初めて人を殺したいと本気で思った。


気が付けば目の前には男の死体が転がっていた。


我を忘れて人を殺めてしまったことに恐怖を覚えその場を後にしようとした時だった。


背後から人の気配を感じた。


振り向くとそこには一人の警官がいた。


俺が殺した死体を見て驚いているようだったが、すぐに冷静になりこちらに話しかけてきた。


「君は何をしたのかわかってるのかい?」


警察官は優しく俺に語り掛けてきたが、目は一切笑ってはいなかった。


そして警察官はそのまま続ける。


「これは立派な正当防衛だ。君が襲ってきた男の手をひねりあげて拘束しそのまま殴ろうとしたところを見た人がいてね。君のことは目撃者の証言によって逮捕までには至らなかったんだ」


そうか、よかった……、いや良くない! 結局俺は殺人犯になってしまった。


もうおしまいだ、きっと刑務所行きだろうな


そうじゃない我々の仲間にならないかDGの


「DG?」


「そう君のような殺人者、をわれわれの公の力で公的な始末屋として働いてもらう、組織」そう言って彼は俺に名刺を渡してきた。


「我々の名前はD&G、デウス・エクス・マキナの略称だよ」


D&G、神を現す文字と最後の審判を意味する文字を組み合わせた組織だ。


俺はこの人に着いていくべきなのか?


「君には選択肢なんてないんだよ、沙耶香ちゃんを守れるのは君の選択しだいなんだよ、ついてきて、いやついてきなさい」


「はい」



それから俺は人生が狂っていった。


あの日から俺は殺人を犯した、もちろんバレないように変装しながらではあるが。


毎日が本当に楽しかった。


だがその幸せも長くは続かなかった。


俺はD&Gに入ってからすぐに、組織内での立場がどんどん悪くなっていった。


理由は簡単だった。


俺があまりにも殺人に慣れすぎて、どんなターゲットでも躊躇なく殺してしまうからだ。


俺には殺しの才能があった、その才能のせいで俺の居場所はなくなっていく。


次第に俺の周りに人がいなくなっていき、俺の心は次第に荒んでいった。


そんな時だった、あの事件が起きたのは。


俺はいつものように任務をこなしていた。今回俺に与えられた任務はこの辺で幅を利かせているヤクザの事務所に潜入し、組長とその手下を殺すというものだった。


今回の任務はいつもよりも危険だった。


何せ暴力団のボスの暗殺だ。


だが俺ならできる、俺は今までいろんな奴らをこの手で葬ってきた。今回は俺にとって大きな仕事だ、失敗するわけにはいかない。


しかしその時だった、俺の中に潜むもう一つの人格が現れたのは。


そいつは俺の体を完全に乗っ取った。


そいつが俺に告げた言葉は一つだけだった。


「お前は誰だ」


その質問にそいつは答えた。


「俺の名はデウス、全ての罪を許すものなり」


そう言うとデウスと名乗る者はどこかに消えていった。


その時からだった、俺の殺戮人形が壊れ始めたのは。


俺はデウスのいう通りにした。


そいつは言った、この世界に存在するあらゆる悪を排除しろと。


俺が殺してきた奴らの中には政治家や医者など善良な人間も数多くいた。


俺はただ言われたことを忠実にこなしてきた。


だがそれはある日を境に少しずつ狂いだした。


俺は人を殺しすぎた。


俺は、俺が殺してしまった人たちの遺族から恨まれるようになった。


「お前は犯罪者だ!」


「うちの息子を殺しておいてのうのうと生きてんじゃねぇよ」


「お前みたいなクズに生きる資格はない」


「地獄に落ちろ」


「お前は人を殺した、その事実は変わらない」


俺は何度も死にかけた。


それでも死ねなかった。


俺はその言葉を言われるたびに自分が自分でなくなっていく感覚に陥った。


いつしか俺の周りからは人はいなくなった。


俺は一人になった。


俺はあの日からずっと孤独を味わっている。


あいつが何を考えているのかわからない。


夜は怖くて泣いていた、夜泣きがとまらない、そんな中毎日、沙耶香が夢にでてくる、沙耶香が夢の中でもうやめようといってくる、だめなんだ君を守るために俺は殺し続けないと、もういいの、もうやめてよ、やめないと私あなたを嫌いになるわよ、やめる、そうすると沙耶香は微笑みながら俺に抱き着いてきた、あぁやっと戻って来てくれた、そう思って安心しているとまた目を覚ます。


そして俺はまた人を殺す。


そして今日も俺は任務に向かう。



あの日以来、私は変わった。


私は沙耶香二十六歳、今はある組織を追っている。自分の部屋で、ある男について調べていた。


名前は黒羽裕也、私の同級生、今年で二十六歳、高校を出てからすぐに就職。


だが一か月ほど前に会社を辞め、現在は無職、というよりほぼニートに近い生活をしているらしい。


書類上は、彼の捜査は進んでいる、私は彼を止めたい、またあの時みたいに


みんなで楽しく過ごしたいから。


彼が変わってしまったのは私のせいかもしれない。


そう思うと胸が苦しくなる。


彼は高校を卒業してからというもの、全く連絡が取れなくなった。


卒業アルバムの写真にも、名前と顔写真が載っていた。だけどあれから一度も見かけたこともなかった。


だからてっきり違う県に就職したのだと思っていた。


でも違った。


昨日彼に会ってしまった。


私が彼と会ったのは昨日の夕方頃だった。


いつものように家に帰ると家の中が荒れ放題になっていた。


「何これ……」


私はすぐに状況を理解した。


誰かが侵入した、おそらく空き巣だろう。


お金はほとんど持って行かれていない、財布の中身が少し減ったくらいだ。


だが冷蔵庫の中がやばい、卵やら牛乳やらが全て無くなっていた。


仕方がないと思い、すぐに警察に連絡をした。


すると警察はすぐに駆けつけてくれた。


どうやら最近この辺りに空き巣が出没していたらしい。


幸いなことにまだ被害にあった人はいなかったようだ。


しかし、この犯人には何か目的があるのだろうか、何か盗られたものはないか、いろいろ聞かれたが特に何も盗まれていなかった。


「お宅さん、ご家族は?」


「いません、一人暮らしです」


「じゃあ一人でここに住んでるの?」


「はい、両親が早くに亡くなって、親戚ともうまくいかなくて」


「そうなのね、まぁ何かあったらすぐ相談してね」


そう言って警察の方々は帰って行った。


警察を見送った後、少し考えたことがあった。


私はその日の夜、彼を尾行することにした。


最初は遠くから見ているだけしかできなかったが、だんだんと距離が縮まり、声が聞こえるところまで近づくことができた。


しかしそこで見た光景はあまり気持ちの良いものではなかった。


どうやら彼が帰宅した後、家で何か作業をしていたようだ。


「なんだよ、これ」


「すごいだろ」


「まさかお前こんなものを」


「あぁそうだよ、これが僕の力だ」


「お前、やっぱり変わっちまったんだな」


「そうかもしれないな、でも僕はこの力でお前たちとは違う存在になる」


「やめとけよ、そんなことしても何の意味もないぞ」


「うるさい! お前は僕を裏切った、それだけでお前は死ぬべきなんだよ!」


「わかったよ、お前がその気なら俺も本気出すぜ」


「やれるもんならやってみろよ」


二人はそのまま取っ組み合いを始めた。


私はその光景を見て頭が真っ白になり、すぐに警察に通報した。


「すいません、あの家が燃えてるんですけど」


「え!? どこですか?」


「あそこなんですけど」


「わかりました、すぐに向かいます」


そして私は現場へと向かった。


そこには、二人の男の死体があった。


一人は見るも無残な姿で転がっていた。


そしてもう一人は、なんとあの男だった。


「どうして……、なんで彼がここにいるの?」


私はすぐさま彼のもとに駆け寄った。


「大丈夫?」


「あんたは……、さっきの」


「そう、それで何があったの?」


「あいつに家を燃された、それどころかあいつは俺を殺そうとしてきた」


「そう……、辛かったね」


「悪い、もうちょっと寝かせてくれ」


「うん、ゆっくり休んで」


そう言って彼は再び眠りについた。


「待っててね、今度は私が守ってあげるから」


それから、一週間ほどの入院生活を終えた俺は退院し、仕事を探していた。


俺はあの事件の日から変わった。


俺はデウスの言うことを聞くことにした。


俺はデウスに言われた通り、人をたくさん殺した。


毎日のように人を殺しているうちに、気が付けば俺はデウスの操り人形となっていた。


俺は一体何のために人を殺すのだろう。


デウスは言った、この世界に蔓延る悪を排除せよと。


俺はその言葉を信じて今までやってきた。


だが、俺が殺してきた人間の中にも悪人だけではなく善人もいる。


中には子供もいる。


俺はそんな人たちを手にかけてきた。


もう疲れてしまった。


そして今日も俺は任務に向かう。


あの日から私の心は壊れてしまっていた。


私はあの日から狂い始め、今となっては何も信じられなくなっていた。


そしてあの事件から数日が経ち、今日も今日とて任務をこなす日々を送っていた。


そして私はいつものように、とある施設に侵入し、仕事を片付けた。


そして私は出口へと向かう途中だった。


後ろから人の気配を感じた。


私はすかさず振り向き、その人物を視認する。


そこにいたのは、かつての同級生だった。


「あなたは……、黒羽くん」


「久しぶりだね、沙耶香」


その日を境に私の人生はまた狂いだす。


「黒羽くん、なぜあなたがここに」


「俺は今D&Gっていう組織に所属している」


その名前は聞いたことがある。


D&G、神を現す文字と最後の審判を意味する文字を組み合わせた組織の事だ。


確かこの組織は最近になって出てきた組織だったはずだ。


「それがどうかしたの」


「俺たちの仲間にならないか」


「仲間? どういう意味」


「君はもう十分に罪を償った」


「私はもう十分すぎるほどに罪を犯したわ」


「いいや、君はもっと多くの人を救うことができる」


「あなたは私に何を望んでいるの」


「この世界から悪を排除する、ただそれだけだよ」


「つまりあなたは世界征服がしたいと、そういうわけね」


「あぁそうだ、俺はこの世界を変える」


「私は今のこの世界が大好き、だから壊さないでほしい」


「俺は沙耶香が好きだ、でもこの世界は嫌いだ」


「黒羽くん、私はあなたのことが好きよ、でもこの世界を壊すことは許せない」


「なら、どうすればいい」


「私はあなたのそばにいたい」


「それは無理だ」


「そう、じゃあじゃあ、一緒に死なない?それかあなたと一緒に行かなきゃ、この世界は終わってしまう」


私は半ば本気で言っていた。ここで黒羽くんを説得しなければこの世界は終わる、そう思ったからだ。


「それもできない、君にはまだ生きる価値がある」


私は絶望した。やはり彼は止まらない。彼の決意を鈍らせる方法は一つしかない。でもそれは嫌だ。だってやっと彼に会えたんだもの。


「お願い、もうやめてよ、もう誰も傷つけないでよ」


「俺はもう戻れないところまで来てしまっている、もう後戻りはできない」


「もういいの、あなたがそこまでする必要なんてどこにもないのよ」


「俺は人を殺すことに快感を覚えていた、俺が今まで殺してきた人間は皆苦しんでいた、だけど俺はそれに気づけなかった、気づくことができなかった、いや、気づこうとしなかった。俺は弱い人間だ、誰かに助けを求めないと生きていけない弱者だ。そんな俺が生きるためには人を殺すしかなかった。だから俺は人を殺すことをやめない、これからもずっと人を殺す。でも俺は気づいたんだ、このままだと自分が自分じゃなくなる。だから俺は変わる、この世界の悪を排除し、そして自分自身も変えていく」


「そんなの間違ってるよ、黒羽くんは変わってしまったのかもしれない、だけどその本質は変わってなんかいない。また弱虫の黒羽くん、泣いてるよ、夜泣きがすごいよ、またみんなと仲良く過ごしたいよね、ねぇ黒羽くん、私はどうしたらいいの、私は何をしたらいいんだろう」


「沙耶香、ありがとう、でも俺は止まることはできない」


「黒羽くん、なんでそんなに泣きながら話してるの?やめてよもうやめてよ私も涙が止まらないよ?夢の中で毎日黒羽くん夜泣きすごかったんだよ」


「あれ?なんで俺は?沙耶香を泣かしているんだ?あれ?なんで沙耶香が泣いているんだ?え?なんで俺が泣いている?あれ?あれ?」「なんで……、黒羽くん」


私は彼に抱き着いていた。彼を抱きしめずにはいられなかった。


「黒羽くん……、戻って来てよ」


私は彼が戻ってくるまでずっと待ち続けた。


彼が目を覚ましたのは一か月後のことだった。


あの時、僕はいったい何をしていたのだろうか。


あの時は、すごく気持ちよかった、久しぶりにあんなに叫んだ、とても楽しかった。


僕はこの世界で生きている実感というものを感じられた。


僕にとってあの時間はかけがいのないものだった。


あぁそうだ、僕は思い出した。


僕が求めているものは快楽だ。人を殺すこと、それが僕の求めたものだ。


そういえば、あの女は結局殺さなかったな。


まぁいっか、いつか殺す機会があると思うし。


そういえばデウスが何か言ってたな。


確かこの世界から悪を取り除くとかなんとか。


うん、とりあえず今はいいや。


今日も僕は人を殺しに行く。


今日も私は任務を遂行する。


私と彼は同じ気持ちだ。


私たちは二人で一人だ。



そうして俺は1人は任務へと赴く。


「デウス、ターゲットを確認」


「了解した、さぁ殺戮の時間だ」



僕の任務はとある女の暗殺、まぁこの辺りでは名の知れた奴らしい。なんでも警察ですら手が出せないほどの大物で、裏社会ではかなりの地位にいるようだ。こいつはデウス曰くかなりの悪党で、何人もの人を殺している凶悪犯らしい。だがなぜこんな女をデウスが始末したがっているのかはわからないがとにかく殺しに行けと言われたので従うだけだ。というか僕には選択肢など存在しない。


僕たちはすぐにターゲットのいる場所に向かった。


「お前がD&Gの人間か」


その女はこちらを見て言った。


「はい、そうですが、あなたは?」


「俺を知らないのか、この業界で俺の名前を聞いたことがないとはな、お前相当下っ端なんだな」


「そうなんですかね?」


正直あまり興味はない。名前なんて知る必要もないと思っているからな。それにそんなの知らなくても人は殺せる。


「黒羽くんごめんね、ついにこの時が来ちゃったね、一緒に死ぬしかないね」


「沙耶香?なんで?沙耶香がターゲットなのか?なんで?」


「なんでって、私が殺したかったからに決まってるじゃん」


「ふざけんな!沙耶香がどうして俺を」


「黒羽くん、私のこと好きでしょ?愛してくれてるんでしょう?なら私を殺して」


「俺は沙耶香を、愛する人を殺さなきゃならないのか?」


「黒羽くん、早く私を、殺して」


「俺はもうどうすればいいかわかんないよ」


「私は黒羽くんを愛しています、だからこそ私を救ってください」


「わかった、俺は沙耶香を助ける、だから待っててくれ」


「うん、待ってるね」


それから黒羽くんは私の方を向いてきた。


私は覚悟を決めた。でもできれば私の手で殺したかったな。まぁ仕方ないか。だって私が黒羽くんをここまで追い詰めてしまったんだもの。私はただ彼を助けたかっただけなのに。私はいつも間違えてしまう。本当にダメだな。


「黒羽くん、私はいつでもあなたのことを待っています」


「あぁ、必ず助ける」


「来世でもよろしくお願いします」


「来世では必ず幸せにする」


「約束ですよ」


「あぁ、約束する」


私は短刀を取り出して、自分の喉に突き刺そうとしたその時だった。


「沙耶香ー!」


彼はそう叫びながらこっちに向かって走ってきた。


「なんで!?黒羽くんは沙耶香を助けに来たんじゃ」


「沙耶香、君は間違っている」


「私は間違ってなんか」


「君はいつもそうだ、君はいつも一人で背負い込む、そして周りを頼ろうとしない、それが間違いだ」


「黒羽くんはいつもそうやって私を置いていく、私はあなたに置いていかれるのが辛いの、だから私はあなたを殺したいの」


「俺は沙耶香と出会えて本当に良かったと思ってる、沙耶香がいなかったら俺はここにはいない、俺に生きる希望を与えてくれたのは君だ、俺は君に恩返しがしたい、君と過ごした時間はとても大切なものだった、だから俺は君を救いたい」


「でも私はもうだめだよ、もう何もかもどうでもよくなってきちゃったの」


「沙耶香……、俺は君のことが好きだ、初めて会った時からずっと好きだったんだ、だから君が俺の前からいなくなるなんて考えられない、もう君なしじゃ俺は生きていけない」


「え?嘘……」


「俺は君がいないと生きていけない」


あぁ、やっぱりこの人の言葉は温かい。私はこの人が好きなんだ。だから死ねない。この人を残して先に逝くなんてできない。だってこの人ともっと生きていたいから。


「ねぇ黒羽くん、また一緒に生きよう、だから何もかもすててこの世界から逃げよう」


「ありがとう一緒に逃げよう、そしてもう夜泣くのは嫌だ、ボクの夜泣きを毎日止めてくれ、お願いします、一緒に逃げてください、ついて来てください」



「はい、一生愛すと誓います」 happy ending






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