アルストがいる日常
「パァー。」
「アルゥゥゥゥゥ!」
仕事から帰ったジェイクは、手を広げたアルストへ抱きつく。
「リア!アルが、パパと言ったぞ。」
そうだったかしら?
「天才だ!」
このやり取りは毎日行われる。
「可愛いのは分かりますが、この1年よく続きますね。」
サムが呆れたように呟く。
「本当にそうよね。可愛いのは分かるわよ。うちの子とても可愛いもの。でも、あれは…。」
私の目に映るジェイクは、アルストに頬ずりしている。
「ジェイク。そろそろ、着替えませんか?」
「うーん。もうちょっと。」
ジェイクはアルストを離さない。
アルストの顔が歪んできた。
「ジェイク!」
「ぎゃー!」
私の声とアルストの声が、ほぼ同時だった。
「すまん!アル、泣かないでくれ。リア、どうしたらいい?」
焦るジェイク。
「知りません。アル、いらっしゃい。」
ジェイクがアルストを離すと、トテトテとこちらへ歩いてくる。
「リア~。」
ジェイクの情けない声が響く。
私は近くまできたアルストを抱き上げる。
そして、表情を殺しジェイクへ話しかける。
「ジェイク。…今日もまた帰った挨拶を忘れているのに気付いていないのですか?」
「…リア、ただいま。」
「はい。おかえりなさい。」
私はニコリと微笑んだ。
「着替えてきてくださいね。」
「…はい。」
ジェイクは肩を落として着替えに行った。
「アル、大丈夫ですか?…お父様はアルが大好きですね。」
「アー。」
「もちろん。私もアルが大好きよ。食堂へ行きましょうね。」
私達は先に食堂へ行き、席に座った。
アルストには侍女がひとり付く。
侍女が食べさせるとかではなく、見守り要員と言う所だろうか。
「おまたせ。頂こうか。」
「はい。いただきます。」
私は手を合わせる。
アルストもそれを真似する。
可愛いわぁ…。
「うん。今日も皆に感謝だな。」
ジェイクもその光景を見て感謝を述べる。
アルストは、食事を盛大に零しながらも、手づかみやスプーンで口に運んでいく。
「アー!」
「そう、美味しいの。良かったわね。」
アルストは口をパンパンにする。
「少しずつにしましょうね。喉に詰まってしまっては大変よ。」
「そうだぞ。食べ物は逃げないから大丈夫だ。」
侍女が、アルストの口に運ぶ量を調整してくれる。
「ありがとう。」
「アー。」
食事が終わると、談話室でのお茶タイムだ。
アルストと遊びながら、ジェイクと談笑する。
…はずが、ジェイクは私そっちのけでアルストを追いかけている。
寂しい…。
大人気ないのは分かっているけれど、帰ってからずっとこれだと…。
私はジェイクの近くに寄ってみる。
気付かない…。
ツンツン。
ジェイクの背中を突いてみる。
反応なし。
「ジェイク。」
「ん?どうした?」
返事はするが、こちらを見ない。
もう!
私はジェイクの顔を手で挟み、ぐるりとこちらへ向けた。
「痛っ!」
「アルばかりではなく、私にも構ってください!」
それを聞いたジェイクはニヤリと笑った。
「アルを頼む。」
ジェイクはアルストを侍女に預け、私を抱き上げた。アルストを抱えた侍女と控えていたサムは部屋を出ていく。
ジェイクは私を抱えたままソファに座った。
「リア。ヤキモチか?」
「…大人気ないのは分かっていますから。」
「まだしっかり好かれているのが分かって、俺は嬉しい。」
恥ずかしい…。
私は顔が熱くなる。
「うん。可愛いな。」
ジェイクは私の頭を撫でる。そして、ジェイクの手はそのまま背中に降りて、さらに下へ。
「ジェイク!?」
「二人目を作るか?」
「え?いいえ。それは、まだ…もう少し今の状態が良いです。」
「そうか…。」
「で、でも、イチャイチャはしたいです…。」
私が小声で言うと、嬉しそうに私を抱えたまま立ち上がる。
「喜んで。」
そして、歩き出した。
「どこへ行くのですか?」
「ん?分からないか?寝室だ。それとも、このまま此処が良いか?」
「いいえ!寝室でお願いします!」
その日、私達はアルストをお願いしたまま、朝を迎えてしまった。




