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53 最終話

今日はライラの結婚式


ライラとグレイさんが、神父さんの前で誓いを立てている。


「ライラ、綺麗ね…。」


私は目が濡れてくる。

その時、頭がクラっとして、ジェイクに支えられた。


「リア、どうした?」

「ごめんなさい。ちょっと、目眩が…。」

「休むか?」

「大丈夫。」


少し頭がボーッとするが、休む程ではない。これは、今朝から続いているものだった。


まさかね…。


「ジェイク。来てくれてありがとう。」

「グレイの式だからな。これからも頼むぞ、副隊長。」

「はい!」


グレイさんが敬礼する。


「プルメリア様。」

「ライラ!とても綺麗よ。」

「ありがとうございます。」

「体調は大丈夫?」

「はい。不思議といつもより体調が良いのです。」

「それは良かったわ。」


挨拶を終えて、私達は家に帰った。

私は着替えた後、休憩室のソファに倒れ込む。


「ちょっと休憩~。」

「リア、本当に大丈夫か?」

「はい。」

「医者を呼ぼう。」

「いいえ。きっと、寝てたらすぐに治りますよ。」

「そうか?…辛くなったら言うんだぞ。」

「はぁい。…ジェイク。」


私はジェイクに手を伸ばした。

ジェイクはその手を取り、私の横まで来てくれる。


「どうした?」

「特に、これといって何もないのです。ただ手を繋ぎたかっただけです。」

「そうか。…リア、少し起き上がれるか?」

「はい。」


私は横になっていた上体を起こす。

そこへジェイクが座り、膝を叩いた。


「寝ていいぞ。」

「膝枕ですか?」

「嫌か?」

「嬉しいです。…では、失礼します。」


私はジェイクの膝に頭を乗せた。

ジェイクは私の頭を撫でる。


「明日も続いたら、医者を呼ぶからな。」

「分かりました。」


私は、そのまま目を閉じる。


すると、女の子?男の子?どちらか分からないが、子供の声が聞こえた様な気がした。


「ジェイク。今の聞こえましたか?」

「ん?なんの事だ?」

「いえ、聞こえなかったなら良いのです。…すみません。もう少しだけ、このまま。」

「いつまででも良いぞ。」

「ふふっ。ありがとうございます。」


私は再度、目を閉じる。

頭を撫でられるのが気持ちよく、本当に寝てしまった。





翌日、体調は戻らず診察を受ける。結果は予想通りだった。


「ジェイクにはどう言おうかしら。あっと驚く伝え方がしたいなぁ。ゔーん…。皆、良い考えはある?」


その場にいるサム、メラン、他の侍女は私の問いに首を傾ける。


「普通にお話しされれば宜しいのではないですか?」


サムがそう言った。


「それでは、面白くないわ。」

「プルメリア様は、楽しいことを考えるのが好きですものね。」


メランが言う。


「あのー。」


その時、ひとりの侍女が手を挙げた。


「何か浮かんだ?」

「張り紙をするとか、如何ですか?」

「何処に?」

「玄関ですかね。」

「うーん。…ジェイク様は、着替えはご自分でなさるわよね?」

「そうですね。」

「それなら…」


私は、サムにお願いして着替えの中にメモを挟んでもらった。


「楽しみね。」

「どんな反応をなさるでしょうか。」


私だけではなく、サムや侍女達も楽しそうだ。


そして、ジェイクが帰宅した。


「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「体調はどうだ?」

「問題ないわよ。」


私は、にっこり微笑む。


「サム、医者はなんと?」

「大きな問題はないとの事です。」

「では、小さな問題ならあるのか!?」


ジェイクがサムに詰め寄る。


「…」

「どうなんだ?小さくとも問題があるなら、」

「ジェイク。話は後にしましょう。まずは着替えてきてください。談話室で待っていますね。」


私が言うと、渋々着替えに行った。

私達は談話室へ。


「いつ気付きますかね?」

「サムの隠し場所次第ね。」

「そろそろだと思われます。」


私達はワクワクしながら待った。


ドタン!

バタン!

ドドドドドドドドッ!!!


「ふふふっ。」


私は堪えられず、笑ってしまう。

皆もニヤついている。


バン!


勢いよく談話室のドアが開く。

ジェイクはメモを右手で握りしめていた。


「リア!こ、こ、こ、こ、これは!?」


こ、が多い。


サム達も笑い声を堪らえようとして、震える。


「ふふふふふっ。」

「リア、笑っていないで教えてくれ!」

「書いた通りですよ。」

「こ、どもが?」

「ええ。」

「俺の?」

「他に誰かいるとでも?」

「いや、そうじゃない!…はぁ、俺も父親か。」


ジェイクは噛み締める様につぶやいた。


「嬉しいですか?」

「もちろんだ。」


ジェイクは、私のお腹にソッと手を添える。

サム達は気を利かせてか、退室していった。


「ここにいるんだな?」


ジェイクはお腹を撫ではじめる。


「そうですね。まだ、分かりませんが、あと3~4ヶ月もすればお腹が膨れて来ますよ。」

「そうか。注意する事とかは?」

「安定期までは安静にすることですかね。私の場合、気持ち悪さとかは軽いのですが、時折ある目眩と眠気が強いので、横にならせてもらう事もあると思います。」

「分かった。」

「安定期に入れば、お腹の張りに気をつけて、運動も始めますね。」

「それは、大丈夫なのか!?」

「はい。動いた方が体力もつくし、安産になります。」

「心配だが、リアが言うなら大丈夫なのだろうな。無理はしないでくれ。」

「もちろんです。…それから、夜の方も安定期に入れば可能ですよ。」

「!」


ジェイクの目が丸くなり、お腹を撫でていた手が止まる。

最後の方は小声で話したのが、ジェイクはそれを聞き逃さなかったようだ。


「そ、そうなのか?」

「は、激しくしては駄目ですよ!…あくまでも、優しく、です。」

「分かった。…安定期とはいつからだ?」

「一般的には5ヶ月ですが、その時の状態もあるので…。」

「分かった。」


ジェイクは、お腹を撫でる事を再開する。


「…男と女、どちらだろうな。」

「どうでしょうね。」

「名前も決めなくては。」

「ふふっ。気が早くないですか?」

「そうか?グレイはもう決めているらしいぞ?」

「え?もう?」

「ああ。嬉々として話していた。男だったらアントニー、女だったらリラだそうだ。」

「どちらも良い名前ですね。」

「うーん。…男ならアルスト、女ならプリムローズ。どうだろうか?」

「良いと思いますが、まだ時間は沢山ありますよ?お任せしますので、いくつか考えてみてはどうですか?」

「今、パッと思い浮かんだんだ。これ以上良いものは出ないと思う!」


ジェイクは、この日に言った通り、『他の名前はしっくりこない』と、最後まで名前を変えることはなかった。


もう少しで十ヶ月、私の予定月と言う時に、先にライラが出産した。

可愛いライラ似の女の子だった。


「お祝い何が良いかしら。」


その日、ジェイクは休日で、家でのんびり過ごしていた。


「そうだな。スターチスの所みたいに可愛い服で良いのではないか?あの後、あれを売っているところを聞かれた。」

「そうですね。お兄様達も気に入ってくれたようですし、ライラ達へも作ってもらいましょう。」


お兄様へあげた赤ちゃん用の着ぐるみやスタイは仕立て屋に言って作ってもらったものだった。


「ああ。…この子の分も一緒にお願いしよう。」


ジェイクは私のお腹に触れる。


「そうですね。ふふっ。猫も捨てがたいけれど、うさぎも良いですね。男の子だったら、ライオンや、恐竜も可愛いですよね。」

「恐竜?」

「えーと、トカゲみたいな動物です。」

「トカゲは可愛いか?」

「可愛いですよ。」


その時だ。


ん?

あれれ?


「イタタタタタタ。」


お腹が張り、痛みが出てきた。


「リア!」


少しすると、痛みが和らいでくる。


「タタタ。…ふぅ。」

「リア?」

「痛みが止みました。」

「そうなのか?大丈夫なのか?医者を呼ぶか?」

「まだ産まれないとは思いますが、連絡だけお願いします。」

「分かった。」


まだ予定日まではあるんだけどな…。

偽陣痛かな。


そう思っていたが、しっかりした陣痛だった様で、お医者様が来て、そのまま寝室に移動となった。

そして、初産なのに半日という早さで赤ちゃんは産まれてきた。


「おぎゃぁぁぁー!!!」

「リア!産まれたか!?」


産声が聞こえたと同時に、ジェイクがドアを開けて入ってきた。


「ジェイク様。少しお待ち下さい。用意ができたら、お呼びします。」


助手の人がジェイクを止めた。

私はまだ出産体勢を取っている。


衝立をしておいてもらって良かった。

そうでなかったら、ドアが開いた時点で丸見えよ…。


赤ちゃんと私の支度が整ったところで、ジェイクが呼ばれた。


赤ちゃんは、私の腕に渡される。

産まれた金髪で灰色の目をした赤ちゃんを見て、私の頭には別の顔が浮かんでいた。


「そう。…貴方だったのね。」


そして、あの日の子供の声が思い起こされる。


『私、いえ、僕は、またこの世界へ産まれます。今度はあなたの子供に…。そして、幸せになりたい。』


私は抱いた赤ちゃんの小さな手を握りしめ、おでこにキスをした。


「無事に産まれてくれてありがとう。」

「リア、お疲れ様。俺の子を産んでくれてありがとう。そして、アルスト。俺の子に産まれてきてくれてありがとう。」


ジェイクは、私達ふたりを抱きしめた。




END



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