ジェイクside
リアが初めてだという酒。
まだ、コップ半分だというのに、リアの目はうつろになり、雰囲気もポワンとしてくる。
「リア、大丈夫か?」
「はぁい。大丈夫ですよぉ。」
「リア、そろそろやめておこう。」
「うーん。この一杯は飲んじゃいますねぇ。」
「いや、残しても良いぞ。」
「勿体ない、勿体ない。勿体ないおばけが出ちゃいますぅ。」
「勿体ないおばけ?」
「はぁい。」
リアは、残りをぐぅっと一気に飲み干し俯いた。
「リア!?大丈夫か?」
「…」
「リア?」
リアから返事はない。顔を覗き込むと、目を閉じている。
寝たのか?
そう思った瞬間、目があいて顔を上げた。
「ジェイク…。あつい…。」
リアの目は潤み、服を脱ごうとする。
俺は急いでリアを止めて、帰り支度をする。
「リア!待て!家へ帰ろう!」
「やだ。あつい。」
「すぐに会計をするから。」
「むぅ。」
リアのほっぺが膨れる。
可愛いな…。
はっ!それどころでは無い。
俺は急いで会計を済ませ、リアを連れて店を出る。
グレイ達に挨拶をしなかったが、この状況だ。仕方ない。
「リア。もうすぐで、馬車に戻れるからな。」
「…ジェイク、格好良い。」
「そうか、ありがとう。」
「ジェイク。」
「どうした?」
馬車が見えてきたな。
「抱っこ。」
「え?」
馬車を見ていた俺は、振り返る。リアは、繋いでいない手をこちらに伸ばしていた。
「分かった。」
俺はリアを横抱きにして、馬車に急ぐ。
「ジェイク…。」
「今度はどうした?」
「美味しそう。」
「美味しそう?何がだ?」
「…カプッ。」
「!」
耳を齧られた!
しかし、振りほどくわけにもいかず、そのまま御者に家へ帰るよう指示をだし、馬車に乗り込んだ。
「アグ、アグ…ちゅう。」
俺の耳が吸われている。
「リア。離してくれるか?」
「ん?…美味しいのに。」
「美味しいのか?」
「うん。美味しい。」
「…」
良い笑顔だが、このままではちょっと困る。
すると、リアは耳から口を離し、俺と目を合わせる。
「ジェイク。」
「何だ?」
「大好き!」
可愛い!可愛すぎるぞ!
「ジェイクの唇、フニフニ…。」
今度は俺の唇を触りだした、と思ったら
「…いただきます。」
リアは、俺の口を自分の口で塞いだ。
下唇を甘噛したり、吸ったりしながら、深くなる口づけ…。
我慢、我慢。
リアは、酔っている。
明日は遠乗り。
俺は、自分に言い聞かせる。
「ちゅう、アム、ちゅっ、ちゅっ…」
「リア、…待っ、てくれ。」
「だめぇ。ジェイクが欲しいのぉ…。」
「!」
ここは馬車。
我慢、我慢!
「リア、家に着いたら、」
「いまぁ…。」
我慢、我慢、我慢!
「リアには、外で飲ませられないな。オパール婦人も飲んで無かったようだが、…まさかな。」
「ジェイク。」
「ああ。」
「…」
「リア?」
リアを見ると、目を閉じスースーと寝息をたてている。
寝てる…。
ホッとした様な、残念な様な複雑な気持ちだ。
………今後飲むのは、ふたりの時だけにしてもらおう。
家に着くと、皆が驚いている。
サムが状況確認へ来る。
「プルメリア様は、どうなさったのですか!?お医者様をお呼びしますか?」
「いや、必要ない。寝かせておけば大丈夫だろう。一応水を頼む。」
「畏まりました。」
俺は寝室にリアを連れて行き、ベッドにゆっくり寝かせる。そして身体を離そうとしたが、首に回された腕が離れない。
腕の間から首を引き抜こうとするが、
「だめぇ。」
と腕に力が入る。
起きているのではないだろうか、と疑うほどだ。
コンコンコン
ドアがノックされる。
水を頼んだから、それだろう。
「良いぞ。入れ。」
「失礼致します。」
水を持って入ってきたのは、メランだった。
一瞬動きが止まったが、メランはすぐに持ち直した。
「…ジェイク様。失礼ながら、私は許可を経て入室致しました。…そういう嗜好がお有りでしたら、皆を呼びますが?」
「は?」
そういう嗜好?
………見られて喜ぶやつか!
「違う。断じて違う!」
「…」
「リアが離してくれないんだ。離れようとすると、引き戻される。」
「それならば、一緒にお休みになったらいかがですか?水はサイドテーブルへ置いておきます。」
メランは水を置いて、すぐに出ていった。
俺は諦めて、メランが言った通りリアの横に身体を倒した。




