50 街歩き
街に着き、馬車から降りる。
「何処に行きましょう?」
「そうだな…。以前リアから貰った自分でブレンドできるお茶の店はどの辺だろうか?美味かったから、また欲しい。」
「どうでしょう。以前あった所へ行ってみましょう。」
「ああ。…ほら。」
ジェイクが手を差し出してくれる。
私は手に触れ、指を絡めた。所謂、恋人つなぎと言う形だ。
ただ、この世界で街を歩くカップルを見ても、この形で手を繋いでいる姿は、見られない。
「リア。この繋ぎ方は…。」
「こちらでは、何か意味のあるつなぎ方ですか?」
「いや。特に意味はないが、あまりしないな。」
「嫌ですか?」
「嫌ではないが…。」
「が?」
ジェイクは、私の耳に口を近づけ囁いた。
「ベッドに連れて行きたくなる。」
!!!
私は手を離そうとするが、ジェイクは離してくれず、指をさわさわと触りだした。
「ジェイク。…私は、そんなつもりでは。」
「…ククッ。分かっている。」
ジェイクは、指を触るのをやめた。
「もう!」
「前の国では一般的だったのか?」
「これは、恋人つなぎと言います。恋人や夫婦の繋ぎ方です。」
「そうか。では、」
ジェイクは、再度私の手をとり、恋人つなぎをした。
「夫婦なのだから、これだな。」
「で、でも、さっきの…。」
「気にするな。」
「……気になります。」
「さあ、行こう。」
「…はい。」
私達は目当てのお店に向かって歩く。
すると、途中で、
「あら?ライラ?」
「ん?…ああ、そうだな。」
ライラが武器屋の前にいるのが見える。
私達が声をかけようと近付くと、店の中からグレイさんが出てきた。
「グレイ?」
「げっ、ジェイク!?」
ジェイクの声で、グレイさんがこちらに気づいた。それによって、ライラもこちらを見た。
「プルメリア様。今日は遠乗りだったのでは?」
「あ、うん。予定変更して、遠乗りは明日にしたのよ。」
「そうだったのですね。」
「ライラはデートだったのね。」
「え!あ、…はい。」
ライラの顔が真っ赤になる。
やだ。可愛い!
ちらりとグレイさんを見ると、口元を抑え俯いている。
「グレイ、どうした?」
「ちょっとな。」
ジェイクは、グレイさんとライラを交互に見た。
「…グレイ。お互い、苦労するな。」
「お前は、結婚しているだろう?」
「結婚までの期間もそうだが、結婚しても大きくは変わらん。」
「そうなのか?」
「ジェイク。どういう事ですか?」
「リアは分からなくて良い。」
「…」
私は何も言わず、ジェイクと繋いでいた手を解いた。
「リア?」
「ライラ、私は失礼するわね。デートを楽しんで。グレイさんも、ライラをよろしくお願いします。」
ふたりは顔を見合わせて、戸惑ったように返事をする。
「「は、はい。」」
「それでは、またね。」
私はジェイクの方を向かず、ふたりに笑顔で挨拶をして歩き出す。
「リア!」
ジェイクに呼び止められ、手を掴まれる。
「離してくださいますか?」
「リア、何を怒っているんだ?話してくれないと分からない。」
「…私の勝手な気持ちなので、ジェイクは分からなくて良いです。」
「そんなこと言うな。寂しい。」
私はジェイクをジッと見た。
「…そういう事か。リア、さっきは、」
「分かってくれたなら、もう良いです。苦労というのも聞かなかったことにします。」
「リア。…あれは相手が可愛いと、色々と我慢するのに苦労すると言う意味だ。」
「!…もぉ、分かりましたよぉ。」
「リア、それなら手を。」
ジェイクが手を出す。
「はい。」
私はジェイクの手の上に自分の手を乗せた。
その後は無事お茶屋につき、以前と同じブレンドを多めに購入した。
「リア、昼食を食べに行こうか。近くに美味しい所がある。」
「はい。楽しみです。」
「たまに、同僚と食事や飲みに行くんだ。」
「そうなのですね。羨ましいです。」
「そういえば、リアが酒を飲んでいる所を見たことがないな。」
社交界デビューの18歳で成人と認められ、飲酒ができるようになる。
私は、飲む機会がなかったので、この世界ではまだ飲んでいない。
「まだ機会がなく、飲んだ事がありませんね。」
「オパール家では?」
「お母様も飲んでいなかったので、私も気にしませんでした。」
「そうか。少し飲んでみるか?」
「良いのですか?」
「ここは酒も美味い。」
「この世界のお酒、楽しみです。」
「プルメリア様!」
私達がお店の前に着くと、後ろから声をかけられた。
「ライラ。貴方達も昼食?」
「はい。グレイさんのおすすめの場所です。」
ライラは嬉しそうだが、グレイさんは気まずそうだ。
「…また、会ったな。」
「そうだな。この辺では、ここが抜群に美味いからそうなるだろうな。」
「先程はごめんなさい。もう、大丈夫です。ね、ジェイク。」
「ああ。どんな些細なことでも話すことが大事だと分かった。」
私達は4人で店に入った。
「お客様、4名様ですか?」
「あ、」
「いいえ。別です。」
『ああ』と良いそうなジェイクを遮り、私は答える。
「リア?一緒に食べないのか?」
「ジェイク。ライラ達はデート中です。邪魔をしてどうするのですか。それに…、私達もデート中なのですよ?」
「リア!そうだよな。では、グレイまたな。」
「あ、ああ。」
私がライラ達に手を振ると、ライラも振り返してくれる。
「こちらどうぞ。」
私達は店の一番奥の席に通された。
「リアは何が食べたい?」
「ジェイクのおすすめを。」
「分かった。」
ジェイクはメニューを見ずに頼んでいく。
頼んだ物は、そんなに時間が掛からず、テーブルに並んだ。
「この肉と酒が合うんだ。」
「美味しそう。昼からお酒も贅沢ですね。」
「贅沢?…そう言われると、そうだな。休みの日にしかできない。」
「早く頂きましょう。お酒の味が気になります。」
「では頂こう。」
ジェイクはお酒から口にした。しかし私は、肉や他の物を口にする。
「酒の味が気になるのでは無かったか?」
「お酒を飲むのは初めてなので、お腹に物を入れておかないと、気持ち悪くなりそうで。」
「そうなのか?」
「そう言われていましたが、こちらは違うみたいですね。」
「ああ。つまみが無く酒のみと言うこともある。」
「そういう人もいましたが、私は駄目でした。お腹が空っぽだと、すぐに気持ちが悪くなってしまっていました。…これ美味しいです。」
「だろう?」
「よし!お腹に少し食べ物が入りましたし、お酒を。」
私はコップに注がれているワインの様な物を飲んだ。
「ん。見た通り、味もワインですね。」
「どうだ?」
「美味しいです。これは、止まらなくなりますね。」
「それは良かった。この後は特に行く所もないし、気が済むまで飲んでいいぞ。」
「はい。」
私は楽しく飲んでいたが、コップ一杯飲んだところで、記憶が飛んだ。




