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48 新しい生活

結婚式から数日が経った。


朝、目が覚めると隣にジェイクがいる。

横になったままジッと見ていると、ジェイクの灰色の目が開いた。


「リア、早いな。」


柔らかい穏やかな笑顔。


あ~、可愛いぃぃぃぃ!


「ジェイク。おはようございます。」

「おはよう。」


初夜では体力の限界まで行ったが、その次からも行為はあるものの、多分…と言うか絶対、手加減してくれている。何せ、起きるのが楽だ。


ジェイクに我慢させているのも心苦しいけれど、快適に朝を迎えたいとも思う。


こう言うのって、話しあった方が良いのかしら?それとも、その時の雰囲気?


「あの、ジェイク…。」

「うん?なんだ?」


キュン!


またもや笑顔にやられる。


「リア?」

「………はっ!な、何でもありません。」


また今度で良いか…。


「今日は、どうする?」


ここの所、家の中で過ごしていたし、身体もだいぶ楽だ。そろそろ、あれを…。


「えーと、…色々慣れてきたので、今日は身体も楽ですし、あれをしたいです。」

「あれ?」

「あれです。」

「あー、そうか。では、ふたりで案内がてら行くか。」

「はい!ありがとうございます。」


私達は着替えて、廊下を歩いていると、ライラが向いからやってきた。

ライラは、私とジェイクの服装を見て察した様だ。


「ジェイク様、プルメリア様。おはようございます。すぐに準備致します。」


ライラは向きを変えて、来た方向に戻って行った。


「見つかってしまったな。」

「ふふふっ。そうですね。」


私達が玄関に着くと、ライラの他にサムと数人の侍女、侍従、影達までいた。


「大事になってしまいましたね。」

「そうだな。…皆、まだ休んでいて良いぞ。」

「そうは行きません。」


サムが言う。


「お前、本宅の時に俺の朝練に付いてきたことがあったか?」

「それは…。」

「執事長になったからと言って、気負うことはない。」

「プルメリア様も一緒ですし、快適に過ごしていただきたく。」

「快適も何も、一緒に訓練するが?」

「…は?」

「体術、護身術を親父から習っていると言ってあっただろう?」

「はい。お聞きしておりますが、失礼ながらその服装では…。」

「あー、そういう事か…。ライラやノアからは何も?」

「見たほうが早いと、何も教えてはくれませんでした。」

「ははははは。そうか。確かに説明しただけでは、信じがたいか。」

「ジェイク。…まぁ、別にいいですけどぉ。」

「すまん。…怒ったか?」

「怒ってはいません。しかしその言い様、珍獣の様です。」

「珍獣ではなく、女神だな。」

「…」


私はなんて言ったらいいか分からなくなる。


「さて、行こうか。見たいなら付いてこい。」


ジェイクのその発言で、結局使用人のほぼ全てが運動場まで付いてきた。

ほぼというのは、ネーロとメランが家の留守番、料理人達も朝食の準備中だからだ。


他の家に比べたら少ない人数だけれど、大移動だ。朝練をしていた本宅の護衛達も何事だと驚いている。


「リア。折角だから、皆にも参加してもらおう。」

「皆にもですか?」

「ああ。サムはもちろん武術の心得があるが、簡単な護衛術は侍女、侍従全てに教えてある。その練習も兼ねよう。ライラとノアの実力も分かるだろうしな。」


他家から来た侍女と護衛が、上に立つ事に良い気がしない者もいるのは分かる。

それに、私もここに来てから皆との交流が少ない。


私を知ってもらう第一歩ね。


「分かりました。皆さん、よろしくお願いしますね。」




---執事長サムside---


ジェイク様の結婚にあたって、敷地内に新しく屋敷が建てられた。本宅と比べて小さいものだが、立派な屋敷だ。

その為、新しい侍女や侍従が本宅で雇われ、元から居た者の何人かがこちらへ配属となった。


ジェイク様の奥様になるプルメリア様は、何度かエメラルド家へも訪れていて、美しく穏やかそうな女性だ。

プルメリア様は、ジェイソン様から護身術も習ったという、令嬢としては珍しい方と聞いたが、全くそうは見えなかった。


1つ気になる事は、侍女長となるライラや影長となるノアが、プルメリア様の事について何も教えてはくれないという事だ。


「見れば分かります。」

「話せば分かります。」


結婚後、ジェイク様とプルメリア様は部屋へ籠もっている。

どうしたらいいか分からなく、戸惑っている使用人の中で、私の他にプルメリア様と一緒に来た使用人達だけが何も気にせず、寛いでいた。


「君達は、落ち着いているな。」


その言葉にライラ達がそれぞれ答える。


「そうでしょうか。」

「休めと言われたのですし、良いのではないですか?」

「考えても無駄だし。」

「新婚初夜なんてそんなもんだろう?」

「外は警戒しているから、問題ないしな。」

「そうそう。軽食も着替えも用意してあるし、大丈夫ですよ。」


そして数日が過ぎた時、ライラが速歩きで私の所まで来た。


「おふたりが外に出られます。」


その報告を受け、私は驚いた。


「まだ、明け方ですよ?」

「そうですね。」


ライラは動じていない。ノア達も落ち着いて、各々用意して玄関に向かう。


確かにジェイク様は、朝練の為にこの様な時間に運動場へ行く事もある。しかし、ライラは『おふたり』と言った。


散歩か?朝練の見学か?


「一応、運動場へ見学スペースを。」

「はい。」


私は、その場にいた侍女に指示を出し玄関に急いだ。


いつもの朝練服のジェイク様と、シンプルではあるがドレス姿のプルメリア様が階段から降りてくる。


朝練とその見学だな。


そう思った私は、耳を疑うことを聞かされた。


「一緒に訓練する」


ドレス姿で?


驚いていると、ジェイク様から提案された。


「見たいなら付いてこい。」


ジェイク様のその発言で、結局使用人のほぼ全てが運動場まで付いて行くことになった。


そして、付いてきた使用人全てが朝練に参加する事になった。


「皆さん、よろしくお願いしますね。」


プルメリア様がニッコリ笑う。


「まずはノア。俺とやろうか。」

「畏まりました。」

「ジェイク。私は?」

「リアはヤミと。他の者は準備してくれ。」


ジェイク様は、朝練参加者に準備するように指示をする。


しかし次の瞬間、皆が動けなくなった。

私の目の前の光景は、信じられないものだった。


ドレス姿のプルメリア様が、影と呼ばれる戦闘のプロと手合わせをしている。

チラチラ見える靴は踵の高い物だが、それを感じさせない動き。


美しい。

女神とはこういう事か…。


それは、ジェイク様の言っていた事が、理解できた瞬間だった。




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