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46 結婚式

結婚式前日


私は、ジューン、カルア、メイにマッサージを受けている。


「明日からは、もうこちらには帰っていらっしゃらないのですね…。」


メイの言葉に、しんみりした空気になる。


「そうね…。遊びに来るわ。」

「はい。お待ちしてます。」


トントントン

ノックがされる。


カルアが手を止め、要件を聞きに行った。


「荷物の移動が終了したそうです。」

「分かったわ。」


明日からは、エメラルド家での生活になる為、必要な荷物をエメラルド家へ運んでもらっていた。


「後は明日持っていくものを詰めるだけね。」

「お手伝いします。」

「大丈夫よ。残りは少ないから。」


マッサージ終了後、私は荷物の用意を始めた。


ドレス類はリカーナお母様の計らいで、新しい物を用意してくれている為、半分以上は置いていく。

残りのドレスは、お母様達の好きにしてもらう様に話してある。


忘れ物が無いように改めて確認しながら、2つのトランクに詰めていく。


「これは、明日使うから忘れないようにしないと。」


ジェイクから貰った宝飾セットをトランクへ。


「これも。」


ガーベラの栞も別のトランクへ。


この家を出る寂しさ、新しい生活への不安や期待。気持ちが、落ち着かない。


そうね、結婚式の前日ってこうだった。


私は部屋を出て、走り慣れたコースに向かう。

部屋の前には、侍女服を着たメランがいた為、一緒に行くことになった。


「今後はライラの下で働きます。」

「護衛兼侍女と言う事ね。」

「はい。」


私達は、話しながら走った。


「一緒に走っていて何ですが、前日によろしいのですか?」

「落ち着かないのよ。」

「そういうものですか?」

「そうね。そういう人も多いと思うわ。」


走り終わって部屋に戻り、着替えをすまして食堂へ向かう。


食事は、いつもより豪華な気がする。


ロック料理長にもお礼を言わなくてわね。


食事が終わって談笑している時に、私はお父様達に挨拶をする事にした。


「お父様、お母様。今日まで育てて頂きありがとうございました。私はこのオパール家へ生まれて良かったです。そして、これからも見守ってください。」


私は、深く頭を下げた。

涙が溢れてくる。


「リア…。」


お母様の目にも涙が見える。


「リア。こちらこそ私達の子供に産まれて来てくれてありがとう。」


お父様はニッコリと微笑み、私を抱きしめてくれた。


私はお兄様達にも挨拶をする。


「お兄様も私を可愛がってくださり、ありがとうございました。お姉様、お兄様を改めてお願い致します。」

「リア、またすぐ遊びにおいで。」

「そうですよ。待っていますからね。チスの事も任せなさい。」


お腹の大きなお姉様は自分の胸をトンと叩いた。

お姉様は只今、第一子を妊娠中だ。


「赤ちゃんが産まれたら、見に来ますね。」

「ええ。」

「お姉様、体調の良い時は、」

「分かっているわ。きちんと散歩をするわよ。」


この世界、妊娠したらほとんど動かない。でも、動いた方が安産になると話した所、散歩をしてくれるようになった。身体に負担のないストレッチも教えた。


「お腹が張る時には休んでくださいね。」

「クスッ。はい。」

「リア、先生の様だね。」

「すみません。前世とあまりに違い過ぎて…。」

「他の方達も体調が良いみたいなの。きっと、すぐに話が広まるわよ。」


妊娠中のむくみや、身体の痛みも良くなったお姉様が、お茶会でこの話をしたそうで、お友達も実践中だという。


「妊娠中の不快な事を、少なくする手助けになったなら、良かったです。」


その後も楽しい時間を過ごした。


明日の結婚式に備えて早く部屋へ戻り、休もうと思ったが無理だった。


「少し、風に当たろうかな。」


私はガウンを着て、部屋についているバルコニーへ出る。特に何を考えるでもない。ただボーと月を眺めていた。

時間がどれ位経ったかも分からない。


「プルメリア様、風邪を引きますよ。」

「ノア。」

「明日が式当日なのです。そろそろ中へ。」

「そうね。そうするわ。」


私は部屋へ入り、ベッドに横になった。

そして、いつの間にか寝てしまっていた。





式当日…


この世界では、教会で親族や友人が集まる中に、新郎新婦が一緒に入場する。

そして、式が終わると挨拶をして、そのまま解散。いわゆる披露宴みたいな物はない。


私は、ジェイクとは別の部屋で準備をしていた。ジューン、カルア、メイ、ライラ、メランが、忙しなく動き回る。

テーブルの上には、小物やメイク道具が置いてある。その中に、真新しい小箱も並んでいる。


「お綺麗です。」

「ありがとう。」


コンコンコン

ドアがノックされ、ジェイクが来たことが伝えられる。


ジェイクはドアを開け、私と目が合うと動きが止まった。


「ジェイク。どうでしょうか。」

「…」


反応なし?


「ジェイク?」


ジェイクは、少し間が開いてから口を開いた。


「………綺麗だ。」

「ふふっ。ありがとうございます。ジェイクも素敵です。」

「ありがとう。…それでは行こうか。」


ジェイクが手を差し出す。


「あ、その前に渡したい物が。」


私が視線をテーブルの上の小箱へ移すと、ライラが持ってきてくれた。


「これを俺に?」

「はい。開けてください。」

「今か?」

「ええ。時間が迫っています、早く。」

「ああ。」


ジェイクは急いで小箱を開けた。


「これは…。」

「今日の衣装は、それを付けて完成になる様に作られています。」


ジェイクの後ろから仕立て屋の店主が顔を出した。


「どういう事だ?」

「このネックレスとイヤリングを式でつけると決めた時から、同じ意匠のブローチをジェイクへプレゼントしようと思っていたのです。だから、それを伝えて、無理を言いました。」

「いいえ。いい経験をさせて頂きました。他の方へこの提案をする許可も頂きましたし、これから増えると思います。」


そう。ドレスの最終調整の時に、『このアイディアを他の方へ提案しても良いか』と言う質問をされた。特に断る理由もないので、了承したのだ。


「リア。…もしかして、これが『そのうち分かる』と言うやつか?」

「ええ、そうです。…そのブローチ、私が付けてもよろしいですか?」

「ああ。頼む。」


私は手に取り、ジェイクの胸元へブローチを付ける。


「これから、よろしくお願いします。」

「こちらこそ。」


私達は見つめ合う形になる。


「そろそろ、お時間です。」

「そうだったな。…早く終わらせて、帰ろう。」

「ジェイク。式は早く終わらすとか、そういうものではございません。」

「…」


不服そうな顔をしたジェイクの腕の内側に手を滑り込ませる。


「行きましょう。」


私達は腕を組んで歩き、教会の扉の前まで来た。


「緊張します。」

「俺もだ。」

「ジェイクがですか?」

「ああ。」

「珍しいですね。」

「そうか?」

「いつもそうは見えません。」

「リアの事で緊張する事は多い。」

「私のせいですか…。」

「ククっ。…ほら、扉が開くぞ。」

「はい。」


私とジェイクは前を見た。

扉が開かれ、立っている大勢の出席者の拍手で迎えられる。私達はその間を歩いていた。


“はぁ…綺麗ね。”

“女神の様だな。”

“あのブローチとネックレス!”

“きゃー素敵!”


私達は神父の前に着くと、頭を下げる。


「頭を上げなさい。…ジェイク·エメラルド、汝はプルメリア·オパールを妻とし、愛す事を誓うか?」

「はい。」

「プルメリア·オパール、汝はジェイク·エメラルドを夫とし、愛す事を誓うか?」

「はい。」

「それでは、神の名の下、ふたりを夫婦と認める。」


その言葉で、出席者の大きな拍手がおきる。


私達は見つめ合い、口づけを交わす。


“きゃー!”

“絵になる。”

“ねー!”


“…長くね?”

“長え!”

“俺、独身なんだけど…。”

“プルメリア様、色気が…。”


「んっ…ジェ、イク。も…う…。」


ジェイクは最後にチュッと音を立て離れ、私を見てニコッと笑った。

私の顔はきっと真っ赤だろう。


恥ずかしい。皆の前であんな…。

ジェイク。後で覚えておいてくださいね。


私は、このお返しを心に決めた。


私達は神父に頭を下げてから、参加者に向き直り、ジェイクが挨拶をする。その横で私は静かに立つ。


「今日は出席頂き、ありがとうございます。私達は夫婦となりました。これからも変わらぬ、お付き合いよろしくお願い致します。」


ジェイクが頭を下げるのと同時に私も頭を下げた。


そこからは出席者個々と挨拶を交わす。

あのキスを見た私とジェイクの同僚や友人達は興奮した様子で、親族達は気まずそうにして、帰っていった。

残されたのは私達と家族だ。


「ジェイク、あれはやり過ぎですよ。」


お兄様が、私と家族たちから少し離れた所で、ジェイクへ注意している。


「しかし、あれで誰も手を出そうとは考えんだろう?」

「ああしなくても、すでにそう考えている奴なんていませんよ。逆に、リアのあの顔を他の奴にみせて、失敗だと思います。」

「……記憶を消してくる。」

「やめてください。」


お兄様とジェイクがなんか、ゴチャゴチャやっている間にリカーナお母様から、ジェイクのお兄様家族を紹介された。


「プルメリア、紹介が遅くなったわ。ジェイクの兄ジョージとお嫁さんのアメリ、ふたりの子供のジョナサンよ。全く弟の結婚式に遅れるなんて!」

「ごめんごめん、寝過ごした。」

「すみません。起こしきれませんでした…。」

「アメリのせいでは無いわ。きっと、前日に遅くまで何か読んでいたのでしょう?」

「ははは。正解!面白い本があってさぁ!」

「もう!…本当にすみませんでした。」


アメリお姉様がこちらへ頭を下げてくれる。


「いいえ。気になさらないでください。プルメリアです。よろしくお願い致します。」

「よろしくお願いします。」

「うんうん。話は良く聞いているよ。よろしくね。」


ジョージお兄様、軽い…。


「ジョージさん。相変わらずですね。」

「お兄様お知り合いだったの?」

「まぁ。レオン殿下の側近だった人だから。」

「あ…そうか。」

「それに、今も仕事で時々会うし。仕事中はこんな感じでは無いんだよ。」

「…そうなのですね。」


その後は、お父様とお母様、ジェイソンお父様とリカーナお母様の4人は、一緒にお酒を飲むと言ってオパール家へ帰り、ジョージお兄様達は自分の家へ帰っていった。

お兄様達は久々にお姉様の実家へ。結婚式を見て、お姉様が両親とゆっくり話したくなったそうだ。


私達も帰る支度をする。


「ドレスはそのままで!」


ジェイクの願いで、ドレスは着替えていない。


ジューン達はお父様達と帰った為、ライラとメランのふたりだけで整えてくれる。


「ふたりとも改めてこれからもよろしくね。」

「「はい!」」

「ノアとネーロは?」

「先に行き、準備をしております。」


なんの?

護衛体制や、視察はこの間済んでいるはずだけど…。


「さぁ、我が家へ帰ろうか。」

「はい。」


この後、私はエメラルド家で驚く事になる。






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