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45 卒業

ライラがスッキリした顔で帰ってきた。


「まずは、名前呼びから始めることになりました。」

「えーと、お付き合いが始まったということでいいのかしら?」

「そちらの方向で、話は進みました。」

「そう。良かったわね。」

「ご心配おかけ致しました。」

「また、何かあったら思いつめず話してね。」

「はい。ありがとうございます。」



その日の夕方

私はジェイクと、いつものガゼボで会っていた。


「なるほど。グレイの機嫌がすこぶる良い筈だ。」

「そうなんですか?」

「ああ。昼食から帰ってから、ずっとニヤけていた。…前に俺も気持ち悪いと言われたことがあるが、あんな様子だったのだろうな。」

「ふふふっ。」

「リア、もう少し近くに。」


ジェイクはそう言うが、すでに隣りに座っていて肩も触れている。


「もう近づけませんが?」

「そうか?」


ジェイクがニヤリとした。

私は、ジェイクの膝を見る。


ひょっとして…。


「いくら人目が少ないと言っても、外です!学園です!」

「そうか。残念だな。」


クスリと笑い、全然残念そうに見えない。

…からかったわね。


「ジェイク。失礼します。」


私の中の何かのスイッチが入った。

私は、ジェイクの膝を跨いで対面で座る。


「リア!?」


よし!焦ってる。


「ジェイク。近づけましたね。」


私は、ジェイクの首に手を回し、ニッコリと微笑んだ。


「リア、この体勢はちょっと…。すまん、俺が悪かった。」

「せっかく近づけたのに、もう良いのですか?」

「分かってやっているだろう?」

「ジェイクが先に、始めたのですよ?」

「申し訳ない。」


私はジェイクの膝から降りた。


「はぁ…。俺はリアに勝てないな。」

「そうでしょうか。今日は偶々だと思いますよ。」

「…卒業まで後3ヶ月程か。」

「そうですね。」

「結婚の準備も順調だ。侍女も何人か採用し始めているし、その他にも諸々…まだ言わないでおくが驚く事もあるぞ。」

「何でしょう。気になります。」

「そのうち分かる。…ん?この言葉侯爵にも言われたな。」

「そうでしたか?」


ジェイクにジッと見られる。


「…そのうち分かります。」

「ククっ。楽しみにしてる。」

「私も楽しみにしています。」





3ヶ月は長くも短く、あっという間に卒業式の日になった。


「「「「ご卒業おめでとうございます。」」」」


ライラ、ノア、ネーロ、メランが並び祝の言葉を言ってくれる。


「4人ともありがとう。」


卒業式も滞りなく終わり、明日には学園を去る事になる。


「リカルド殿下も明日でしたね。」

「ああ。色々迷惑をかけた。隊長とオパール嬢の結婚式には出たかったが、立場上難しい。すまない。」

「気にしないで下さい。またこちらへいらしたら、声をかけてくださいね。何かありましたら、手紙も。」

「そうさせてもらうよ。」

「私の事も忘れないでくださいませね。」

「もちろんだ。アメシスト嬢の結婚式も出れないが、日にちは教えてくれ。祝いを送るから。」

「はい。楽しみにしておきますわ。」

「隣国へはいつ?」

「1度王城に行き、明後日隣国へ出発する。」

「随分忙しないのですね。」

「送別会も、お断りになられたとか。」

「これ以上、迷惑はかけられないからな。身内にも、話をつけないといけないし。」

「上手くいく様、祈っています。」

「ありがとう。」


クレマは、バートンくんとの約束があるらしく、家に帰るのは、明後日だそうだ。


私は、翌日に予定通り学園から出た。





「リカルド殿下を、無事隣国までお連れした。」


ジェイクと隊の数人は、隣国の護衛と共に国境まで同行していた。

王城での報告後、我が家へ立ち寄ってくれたのだ。


「お疲れさまでした。」

「リアによろしくと。それから、これを預かった。」


ジェイクは、鞄から小箱を取り出した。


「箱?中身は何ですか?」

「早めの結婚祝いだそうだ。ふたりで開けてくれと言われた。」

「開けますか?」

「そうだな。せっかくだから。」


私達は小箱を開けてみた。

中には小瓶が2つと手紙が入っていた。


バタン!


手紙を読んだジェイクが、勢いよく小箱の蓋を締める。


「ジェイク!?どうしたのですか?」

「いや、何でもない。これは俺が預かっておく。」

「手紙にはなんと書かれていたのですか?」


ジェイクは目を泳がせる。


「あ~、うん、仲良く過ごせと書かれていた…。」


小瓶…仲良く過ごせ…、そしてジェイクのこの態度…。


媚薬系か!


リカルド殿下、貴方はこういう事をしない方だと思っていました。


えーと、…気付かなかったことにしよう。


「そうですか。何かわかりませんが、ジェイクが保管してくれるのですね?」

「ああ。」

「では、よろしくお願いします。」

「…気にならないのか?」


何故、蒸し返すの…。


「ジェイクが、話すのを躊躇う何かが、手紙に書かれていたのでしょう?ジェイクを信じますよ。」

「そ、そうか。」


ジェイクは小箱を鞄に仕舞った。


結婚式まで1ヶ月を切っている。衣装の最終調整も終わり、あとは当日を待つだけだ。


「リアの側仕えだが、長は決まっているか?」

「考えた事はありませんでした。…本人達に聞きますか?」

「そうできると、助かる。」


私はノア、ネーロ、メランを呼んだ。


「長ですか?私達の中では決まっておりません。」

「決めてくれるか?実は、新たな護衛体制を作ろうと思うのだが、その長を任せたい。」


ネーロとメランが顔を見合い、ジェイクに向き直ると声を揃える。


「「それなら、ノアが適任かと。」」

「!」


ノアは、違う人物を思い浮かべたのか、驚いている。


「私は、年上である姉上が妥当かと思います。」

「そうか。…リア、彼らと話す時間をくれないか?」

「今ですか?」

「いや。我が家に来て、新たな護衛体制の説明含め話したい。」

「3人がいいなら。」

「どうだろう?」

「「「プルメリア様に許可を頂けるなら。」」」

「それなら、行ってらっしゃい。その間は部屋で大人しくしているわ。」

「では、仕事の調整がついたら、我が家へ来てくれ。」

「「「畏まりました。」」」




---影side---


「よく来てくれた。」

「長の話ですが、」


俺は、やはり姉上を…と言おうとしたが、遮られた。


「俺もノアが適任だと思うぞ。」

「何故…」

「絶対にリアの為に動き、守り抜くと信じられるからだ。」

「どういう事でしょうか?」

「気付いていないとでも?」

「何の事か、分かりかねます。」


そのやり取りを、メランとネーロが固唾を飲んで見ている。


「ノアの目は、他の使用人達がリアを見る目とは違う。」

「そうでしょうか。気の所為では?」


俺は、この気持ちを口に出す気はない。

プルメリア様とどうこうなろうとは思っていないし、それよりも近くで守る事を選んだ。

生涯をかけて守るのは変わらないのだ。

よりプルメリア様の役に立つ方を…。


「はぁ…。咎める気はないんだ。何かする気があると言うなら話は別だが、その様な感じではないのでな。俺と同じ位の思いを持つ者に長を任せられれば…そう思った。誤解しないでほしいが、けして他のふたりがリアを思っていないということでは無い。」

「「はい。分かっております。」」

「ノア。長になってくれるか?」

「…畏まりました。」

「そうか、良かった。では、護衛体制の説明を始める。」


そこで、思わぬ事を聞いた。




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