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42 王城

「プルメリア様、ジェイク様からお手紙が届いています。」

「ありがとう、メラン。」


メランは侍女の仕事もできるように、見習いという形で教育を受けている。既に知識は学んでいるので、確認する意味が強い様だ。動きに問題はないという。

そんなメランの首元には、ホースシューが揺れている。チェーンを買った日から、付けてくれていた。


他の皆の物も完成した。

取り外せるバレッタ付きのシニョンは、ライラの他に、ジューン、カルア、メイにも子供の時から今までのお礼として渡した。ライラがホースシューをつけている場所には、それぞれシルバーモチーフが縫われている。


ネーロは革紐で編まれているネックレスに仕上がり、ノアのピアスも数日で完成し届けてもらった。


私は、手紙に目を通し手土産の手配をする。


「後日、リカルド殿下へ顔見せに行きます。ロック料理長に言って焼き菓子を用意してもらって。」

「畏まりました。」





数日後、私はリカルド殿下へ会いに王城へ行った。

行く時は、いつも通りジェイクが迎えに来てくれた。男性側が女性側を迎えに行くのが当たり前。待ち合わせのほうが楽だろうに、この世界はそうもいかないらしい。


私達は馬車を降り、リカルド殿下がいる部屋へ向かう。


「今日は、アメシスト嬢と婚約者殿も来るそうだ。」

「そうなんですか?クレマに会えるのが、楽しみです。」


その途中、宰相に呼び止められた。


「オパール嬢。陛下が話があるそうだ。一緒に来てくれないか。」


私とジェイクは顔を見合わせる。


「時間は掛からないと思う。ジェイク殿も一緒で構わない。」


陛下の呼び出しは断れない。


「「畏まりました。」」


連れられていったのは、執務室だった。

そこには陛下だけでなく、お父様と師匠もいた。


「リア?」

「ジェイク?」


お父様と、師匠は不思議そうな顔をしている。


「陛下、どういう事ですか?」

「お前達が、オパール嬢への礼を拒否していたから、王城に来たついでに寄ってもらったのだ。」


どういう事?


「陛下、目立つような事は、」

「だから宰相に、ここへ呼んできてもらったのだ。」

「公に慰労するよりは良いですが…」

「お父様?」

「陛下が、囮作戦の礼に褒賞を与えたいと仰ったのを、私達が止めていたのだよ。」


あー、そういう事…。


褒賞を貰ったら、私が攫われたことが公の事実となる。作戦とはいえ、一晩連れ去られていたのだ。不名誉な噂も立つだろう。


お父様達は、私を守ってくれていた。


「お父様、ありがとうございます。」


私はお父様に抱きついた。


「良いんだよ。家族を守るのは当たり前なんだから。」


お父様は、ポンポンと背中を優しく叩く。


私は顔をあげて師匠にもお礼を言う。


「師匠もありがとうございます。」

「もうすぐ、嫁に来るんだ。師匠はやめないか?俺もプルメリアと呼ぶから。」

「はい。ジェイソンお父様。」


ジェイソンお父様が笑う。


わぁ!ジェイクの笑い顔にそっくり。


私が見つめていると、陛下に声をかけられる。


「そろそろ話し始めてもいいか?」

「陛下。失礼いたしました。」


私は頭を深く下げた。


「顔を上げてくれ。ウェルク達に止められたので、褒賞という形は取らないことにするが、何か欲しい物や、願いはないか?」

「欲しい物や願いですか?」

「そうだ。ライアンの時も迷惑をかけたし、遠慮せず言いなさい。」


あー、そんな事もあったな。

でも…


「ございません。お気持ちだけで十分でございます。」

「何かあるだろう?金でもいいぞ?」

「いえ。今のままで満足しておりますので。」

「陛下、諦めてください。リアは、こう言ったら絶対受け取りませんよ。」


お父様の言葉に、陛下は頷く。


「分かった。それでは、ウェルクとジェイソンの臨時報酬に上乗せしておく。オパール嬢の為に使ってやってくれ。」

「「それなら、ありがたく。」」


お父様達は声を揃えて、すぐに返答した。


「お父様…。」

「リアに害がないなら、貰えるものは貰っておくよ。例のものを、それで支払っても良いしね。」


お父様がこちらに向かって、ウインクをする。

例のものとは、きっとジェイクへのサプライズの事を言っているのだろう。


もう!

ジェイクの前で、そんなに含みを込めたら…。


「例のもの?」


ほら!


ジェイクが不思議そうに聞いてきた。


「我が家の秘密だよ。そのうち分かる。」


私の代わりにお父様が答えた。


「そうですか。」


とりあえず、話はそれで終わり、私達は部屋を出てリカルド殿下の所へ行った。


通された部屋の中にはリカルド殿下、クレマ、バートンくんがいる。


「遅かったな。また何かあったのかと思った。」

「申し訳ございません。途中で陛下に呼ばれまして。」

「そうか。それなら仕方ないな。…オパール嬢、此度も巻き込み申し訳なかった。」


ジェイクと話していたリカルド殿下は、私の方へ向き直り頭を下げる。


「いえ、今回は巻き込まれたというより、巻き込まれに行った形ですから。」

「…本当に君は。エメラルド隊長が羨ましいよ。」


リカルド殿下が穏やかな笑みを浮かべる。

それを見たジェイクは、私の肩を抱いた。


「あげませんよ。」

「貰ったら、毎日怯えることになるから、こちらから遠慮する。」

「…褒められているのか、貶されているのか分からないのですが。」


私は複雑な気持ちになった。


「殿下!私も話してもよろしいかしら?」


そこで、我慢ができなくなったのであろうクレマが、口を開いた。


「そうだったな。アメシスト嬢も言いたいことがあったのだったな。」

「はい。失礼します。…プルメリア!危険に自ら飛び込むなどおバカじゃないの!?」

「クレマ…。」

「囮としても、やりすぎよ!本当に捕まって、どうするの!何かあってからでは遅いのよ!」


心配してくれるクレマに嬉しくなる。


「何を笑っているのよ!もう!」

「ごめんなさい。心配してくれてありがとう。」

「今度から、危ない事に関わらないでよね。」


守れない、約束はできない。

クレマの言葉に微笑みで返す。


「…分かっているわよ。」


息を吐いて肩を落としたクレマは、バートンくんに背中を撫でられ、慰められている。


私は手土産をリカルド殿下へ渡した。


「これは、我が家の料理長が作りました。お茶請けにでもどうぞ。」

「ありがとう。お茶を入れさせるよ。」

「プルメリアの所のお菓子は、とても美味しいのですよ。」


復活したクレマが、何故か得意気に話す。


「そうなのか。楽しみだな。」


そして、お茶の時間が始まった。


「隊長とオパール嬢が並んでいるのは、いつ以来だろうな。」

「学園ではほとんど見ませんものね。」

「そうでしょうか。」

「そうよ。だから、破棄の噂も皆が信じたのよ。」

「でも、クレマ達は信じていなかったでしょう

?」

「そりゃそうよ。プルメリアがいる時と、いない時の隊長の空気が全然違うのだもの。」

「空気?」

「そうよ。いない時のはいつも以上にピリピリしてたのよ。」

「ああ、私は居心地が悪かった。」

「プルメリアが来た途端、空気が和らぐの。」


私がジェイクを見ると、顔を片手で隠し項垂れた。


「…それは、無意識だ。」

「他にもあるぞ。なぁ、副隊長。」


リカルド殿下は、今日の護衛担当であるグレイさんに話を振った。


「はい!それはもう、」

「グレイ!」


ジェイクは焦った様に名前をよぶ。


お兄様達が話していた以上に、何かあるのかしら?…知りたい。


ジッと、ジェイクを見つめる。


「リア、そんな目で見るな…。」


…どんな目でしょうか?


分からず、コテンと頭を倒す。


「…可愛い。」


ジェイクが、ボソッと言った。


「もう…。」


私の顔が熱くなる。


そんな私達を見て、他のメンバーは呆れている様だった。


その後は談笑し、卒業後の話になった。


クレマは花嫁修業を1~2年。バートンくんが卒業し、仕事が落ち着いてから結婚するそうだ。


「殿下は卒業したら、どうなさるか決めているのですか?」

「私は1度、国に戻るよ。兄さんのサポートをする準備を始める。」

「サポートですか?」

「ああ。せっかくの留学経験だ。活かせる所で活かしたい。」

「そうですか。殿下なら良いサポート役になれますよ。」


卒業後も会える機会があればいいな。


私とクレマの目が合った。

私もクレマも声には出さないが、思っている事は同じだと思う。


「また、こうして話しましょうね。」

「ええ。」

「ああ。」


クレマの言葉に、私だけでなくリカルド殿下も頷いた。



帰りの馬車の中…


「良い友を持ったな。」

「はい。ジェイクも。」

「ああ。」


私は、幸せな気持ちで帰った。



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