41 結婚式のドレス選び
今日は、結婚式のドレスの相談をする日。
朝、ジェイクが迎えに来てくれた。
ライラ達が頭を下げて見送ってくれる。
馬車に乗ると、ジェイクは、自身の膝を叩く。
「リア、こちらへ」
私は、言われるがままに座った。膝に座ることに慣れてきている自分がいる。
「わざわざ迎えに来て頂いて、ありがとうございます。」
「今日も美しいな。」
「ありがとうございます。ジェイクも格好良いですね。」
「そう言うのは、リアだけだ。」
「皆、思っていても言わないだけですよ。」
「そうだろうか。」
「そうです。」
ジェイクは下ろしている私の髪や、頭を優しく触る。
日差しも窓から入り、ポカポカしている事もあって、眠くなってくる。
「リア。あと少しだが、眠かったら寝てもいいぞ。」
「でも…」
「着いたら起こす。」
「…はい。す、みま、せん。」
私はそのまま寝てしまった。
「…ア、リア。着いたぞ。」
「はい。おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
ジェイクがニッコリ笑う。
寝起きにジェイク。
幸せ過ぎる…。
よだれは…、うん大丈夫そう。
馬車から降りると、玄関でリカーナお母様に出迎えられた。
「プルメリア、いらっしゃい。」
「リカーナお母様。この間はありがとうございました。」
「良いのよ。今日はゆっくりして行きなさいね。と言っても、ドレスの試着もあるだろうから、そうはいかないかもしれないけれど…。」
「試着ですか?」
「形の見本みたいな物をいくつか持ってきてくれると思うの。それを着て、自分に合うスタイルを決めるのよ。」
「なるほど。そういうシステムなのですね。」
「ドレスはふたりで決めていいからね。特に伝統とか無いから、好きな物で大丈夫よ。」
「分かりました。」
「リア、こっちだ。」
ジェイクが手を差し出してくれたので、その手を取る。
「楽しんで。」
リカーナお母様は、手を振っている。
私はリカーナお母様へ軽く頭を下げてから、ジェイクと歩き出す。
「この部屋だ。」
ジェイクがドアを開けると、部屋の中が見えた。部屋には、たくさんのドレスが置かれており、隅には試着スペースも作られている。そして、仕立て屋らしき女性が頭を下げている。
「我が家が世話になっている仕立て屋だ。」
「プルメリア·オパールです。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願い致します。」
私達はソファに座る。
仕立て屋の女性は、床に立ち膝で話を始める。
「まず、どんなドレスにしたいか希望はございますか?」
「白いドレスにしてくれ。」
「白でございますか?」
「他国で白は、花嫁の純真や純潔を表し、『相手の家風に染まります』という意味があるらしい。」
「そんな意味があるのですね。分かりました。白をベースにしましょう。その他に希望はございますか?」
「グレーで刺繍を入れて頂ける?」
「ジェイク様の瞳の色ですね。畏まりました。華やかさを考えて、宝石も散りばめましょう。ジェイク様の服も合わせて、白に致します。そして、プルメリア様の瞳の青を差し色に入れます。うんうん!いい!それでは、ドレスの形を決めましょうか。こちらへどうぞ。」
私は、試着スペースへ移動する。
ジェイクは変わらず、ソファに座ったままだ。
私は小さな声で女性に話しかける。
「ねぇ、1つ言っておきたいことがあるのだけれど…。」
「何でございましょうか。」
女性が身構えたのが分かる。
「身構える様なことではないのです。実は、」
私はジェイクへのサプライズプレゼントのことを話した。デザインを決めるに当たり、ブローチの事を言っておいたほうがいいと思ったのだ。
「分かりました。教えて頂いて良かったです。それを念頭に入れて、デザイン致します。」
「ありがとう。よろしくお願いします。」
「ジェイク様は素晴らしい方をお嫁さんに貰えますね。」
「そうでしょうか。」
「そうですよ。」
小声で話しながら着付けをして貰う。
「1パターン目は、裾がふんわり膨らんだものです。」
完成すると、試着スペースから出て、鏡の前で全身を見る。
「どうでしょうか?」
「「もうちょっと、シンプルな形が…」」
私と、ジェイクの声が重なる。
「ッ。…それなら、こちらを着てみましょう。」
笑いをこらえているのが分かる。
すぐに、2パターン目に着替える。
「えーと、これはちょっと、恥ずかしいです…。」
試着スペースから出ると、ジェイクの目が見開かれる。
「これは駄目だ!」
「そうですか?スタイルが良いので、綺麗だと思いますよ。」
私が着ているのは、所謂マーメイドラインと言われるものだ。
「綺麗だが、身体の線が出すぎる!」
次のパターン
「これが一番しっくりきます。」
腰から裾に向かって徐々に広がっていくドレス。
「これだな。」
「ではこちらに致しましょう。デザインをおこします。」
形が決まり着替えてから、デザインを詰めていく。
「この形で…パニエは軽い物に…動きを出して…、胸元と腕周りはレースにしましょう。」
「ええ。」
「刺繍は此処と、此処にこうして…宝石はこう。腰には青いリボンをつけます。…如何でしょうか?」
「凄い綺麗!」
「ああ、きっと似合う。」
書かれたデザインは1枚目で気に入り、思ったよりも早く決まった。
ジェイクの服もドレスに合わせて、ペアだと分かるようなデザインになった。
最後に採寸をして終わった。
「リア、疲れたか?」
「少し。でも、楽しかったので大丈夫です。」
「そうか。昼を過ぎてしまったし、お腹が空いただろう?用意させる。」
「ありがとうございます。」
私達はゆっくり食事を楽しんだ。
「また、リアの手料理が食べたいな。」
「学園に戻る前に、ぜひ。」
「次の休みが決まったら、連絡する。」
「はい。腕によりをかけて作ります。」
「楽しみだな。」
食後は、お茶も出して貰った。
「ジェイク。私、そろそろ…」
「ああ。もうこんな時間か。」
ジェイクは、侍従に馬車の用意を指示した。
帰りもジェイクが送ってくれる事になっている。
馬車の中では、最近膝抱っこばかり。
たまにはこちらから、仕掛けたい。
…でも、何を?
こちらから膝抱っこ!…私がジェイクにするのは無理ね。
膝枕!…馬車の中では窮屈よね。
うーん…。
私はお茶を飲みながら考える。
「馬車の準備ができました。」
結局、思い付かなかったわ。
リカーナお母様が、玄関まで見送りにきてくれた。
「今日はお邪魔致しました。」
「またいらっしゃいね。」
「はい。」
玄関を出て馬車まで行くと、ジェイクはいつもの様に、私を先に馬車へ乗せてくれる。
私は1度席に座り、ジェイクが座るのを待つ。ジェイクが座り、ドアが締まったことを確認すると、ジェイクの膝の上へ移動した。
「っ!?」
「ジェイク?」
「いや、何でもない。」
ジェイクは、誘う前にプルメリアが膝に座った事に驚いた。プルメリアは、図らずしもジェイクへの仕掛けが成功した事になる。
「そうですか?」
ジェイクの顔がうっすら赤い。
照れてる?なんで?
………あ、座るように言われてない!
「し、失礼しました。」
私は、ジェイクの膝から立ち上がろうとする。
「危ないから、座ってろ。」
ジェイクに抱きかかえられる。
「で、でも…。」
「気付いたか?」
「…はい。」
顔が熱くなる。
「俺はびっくりしたが、嬉しかった。」
「…それは良かった、です。」
「リア、可愛いな。」
「照れているジェイクも可愛いです。」
「いや、リアの方が。」
「いえ、ジェイクの方が。」
「ふっ。」
ジェイクが吹き出す。
私も可笑しくなる。
「クスクス。」
「そうだ。リカルド殿下がリアの事を気にしていて、侘びたいと言っていた。」
「そんな必要は無いのですが。」
「黒幕が黒幕だからだろうな。」
「…ですね。」
「今度、リカルド殿下の所へも一緒に行くか?」
「ジェイクの休みの時に?」
「ああ。」
「学園に戻る前にやる事が盛りだくさんですね。」
「そうか?」
「そうですよ。えーと、騎士団の見学と、料理と、リカルド殿下への顔見せ。」
指を折りながら、思い出していく。
「リカルド殿下への顔見せは、早い方が良いのですよね?」
「まぁ、それに越したことはないな。」
「次の休みに手料理を…と話しましたが、」
「リカルド殿下の所へ行くか。殿下へ伝えておく。」
「よろしくお願いします。それから、手料理については、騎士団を見学させて頂く時に、お昼ご飯を作って持っていきましょうか?」
「それは、嬉しいが良いのか?」
「もちろんです。師匠や皆様の分も作ります。」
「それは、しなくていい。俺の分だけ頼む。」
「…?そうですか。分かりました。」
楽しい時間はあっという間に過ぎ、我が家に到着してしまった。
「また、近いうちに…。」
「はい。」
あ、来る。
ジェイクの顔が近づき、私は目を瞑る。
チュッ。
ジェイクと軽い口付けを交わしてから、馬車を降りた。




