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34 家への呼び出し

次の日の朝食。

食堂に行くと、クレマも後からやって来た。


「プルメリア!」

「クレマ。元気だった?」

「ええ。あの時はありがとう。私達のせいでごめんなさい。」


クレマは申し訳無さそうに、身体を小さくした。


「バートンくんは?」

「大事を取って、まだ休んでいるけれど、大丈夫そうよ。」

「そう。良かった。」

「足は大丈夫?」

「ええ。もう治ったわ。あれから、変わった事はない?」


学園は見廻りや護衛が増えている。手を出しづらい環境ではあるだろう。しかし、射撃事件のこともある。


黒幕が分からない限り、危険な状況に変わりはない。


「それも、大丈夫。何もないわ。あの後は話を聞かれたけど、犯人達のことも何も教えては貰えなかったわ。」

「それは、私も聞いていないわ。知ると危険な事もあるから、こちらからは聞かない様にしているの。私に関係のある事なら、きっと話してくれるでしょうし。」


聞かなくても、想像はできるけれど…。


「そうね。…あと、リカルド殿下の事なのだけれど。」

「ん?どうかしたの?」

「話しかけてこないの…。」

「私もバートンくんもいないから、立場上二人きりになるのは避けているとか?」


この場合、護衛と侍女は数に入れていない。


「挨拶も無しよ?」

「そう…。クレマはどうしたい?」

「殿下は、もう友達よ。それは変わらないわ。……いつも通りでいいのに。」


クレマは肩を落とす。

クレマも気付いているのだろう。私達が狙われた理由を。


まぁ、自分が原因で友人が危険な目にあったら、私も離れるわ。

だから、理解はできるけど…。


「殿下と話しましょう。」

「でも、避けられてるわ。」

「あら、私の婚約者は誰かしら?」

「公私混同はしないのではなくて?」

「うーん、撤回?」


首を傾ける。

クレマはそれを見て笑った。


私は、この事をライラから、ジェイクへ伝えてもらう事にした。


「ライラ、お願いね。」

「私と致しましては、今のままで良いと思いますが。」

「危険は去っても、それでは寂しいでしょ?それに、犯人を誘き出すのにも、必要な事なのよ。思う通りになるのも癪だし、早くこの問題を終わりにして、また穏やかに過ごしたいわ。」

「囮になるおつもりですか?」


私はそれに笑顔だけで返す。

それを見て、クレマが身震いする。


「プルメリア。貴方、怒っているの?」

「あら、友達を傷つけられて怒らない人はいないわ。」

「…私、貴方と友達で良かったわ。」


言葉通りに受け取っていいのか…。色々含まれているような気もするが、気にしない。


午前は授業が無かったので、ライラたちを説得し、ネーロと準備運動程度の組手をしていた。

そこへ、ジェイクがかけてくる。ライラの姿はない。


あの速さで走ってきて、息が切れていないなんて。ライラは追いつけなかったのね…。


「リア、聞いたぞ。」

「ジェイク。仕事は?」

「グレイに任せてきた。それで、囮になるとはどういう事だ!?」

「ネーロ、周りの警戒を。」

「畏まりました。」


ネーロがその場を離れた所で、私はジェイクの腕に触れる。


「ジェイク、落ち着いて。声が大き過ぎます。」

「すまん。」

「囮の事は置いておいて、」

「置いておけない。」


ジェイクの声がかぶる。


「はぁ…。クレマが殿下が離れた事を気にしているの。せっかく仲良くなれたのだから、今まで通りでいたいと…。でも、殿下の私達を危険に巻き込みたくないという気持ちもわかるの。」

「ああ。親父達も、侯爵達も犯人確保に尽力している。」

「きっと、目星は付いているのでしょう?でも、まだ捕まえていないと言う事は、決定打にかける。」

「…そうだな。」

「もし、他国の貴族が黒幕であっても、公爵子息の婚約者に手を出したら国で罰する事が出来る。」

「リア、危険すぎる。」

「それでも、ジェイクが守ってくれるでしょう?」

「無茶な事を…。」

「まぁ、それはお父様達に相談するとして、リカルド殿下にはいつも通りにしてほしいの。クレマと私にリカルド殿下と話す機会をください。」

「………リカルド殿下の件は、分かった。但し、囮云々の話をする時は俺も同席するぞ。」

「ええ。もちろんよ。」


この後、ノアに頼んで、お父様へ手紙を届けて貰うと、すぐに家へ呼び出される事になった。





家へ帰ると、応接室にはお父様、お兄様、師匠が座っていた。

私も空いているソファへ座る。


「あとからジェイクも来る。話はそれからだ。」

「はい。」


そこから誰も口を開かず、時間が過ぎていく。


チクタクチクタク

時計の音も聞こえる。


静かすぎる…。

ジェイク、早く来て!


少し経って、ジェイクがロバートに連れられて応接間にきた。


「遅れて、すみません。」

「いや、こちらこそ急に呼び出してすまない。座ってくれ。」

「はい。失礼します。」


ジェイクは空いている席に座る。


席順は私の向かい側の三人がけソファへお父様とお兄様が間を空けて座り、左右に2つある一人がけソファへ師匠と、ジェイクがそれぞれ座った。


なんだろう。

こちらへの圧がすごいんだけど…。


「リア。」


お父様に名前を呼ばれる。


「はい。」

「私が、いや、私達が何を言いたいのか分かるかい?」

「…馬鹿なことを考えるな、ですかね。」

「分かっているなら、解決するまでリカルド殿下と距離をとって置いてくれ。」

「危険だから、以外の理由があるならお聞きしますが?何か作戦でもお有りなのですか?」

「…」

「お父様。今、仰ったことは本心でしょうが、お父様も私と同じ考えを持ったから、私だけではなく師匠もお兄様もジェイクもこの場にいるのではないですか?」

「…はぁ。」


お父様が溜息をつくと、師匠が口を開く。


「ウェルク。だから言っただろう?プルメリア嬢は敏い。簡単には頷かんと。」

「分かってはいましたよ。父親ですからね…。しかし、聞いてみてもいいではないですか。もしかしたら、素直に頷いてくれたかもしれません。」

「父上、リアにそれは無理だと思います。」

「リア。囮をお願いできるか?」

「はい。」

「ジェイク、君には娘との婚約を破棄してもらう。」

「何を…」


ジェイクは驚き、その続きが出ないようだ。


「実際に、そうしなくても噂でいい。」

「私が婚約を破棄し、リカルド殿下へ近付く演技をするという事ですか?」

「そういうことだ。」

「犯人は甘い汁を吸うため、リカルド殿下に国に戻って自分の娘と結婚して欲しいと考えている様だ。その為に、親しくしている我が国の女性は邪魔でしかない。」

「恋仲にでもなって、こちらに残ると言われては困りますものね。」

「そういう事だな。」

「…駄目です。演技でもリアが殿下に近付くなど見たくない!」


ジェイクは声を荒げる。

お兄様は、こうなる事を分かっていたようで驚いてはいないが、師匠とお父様は目を丸くして驚いていた。


「お父様、ジェイクと二人で話をして来ても?」

「あ、ああ。」


私は一度部屋を出て、私室に向かった。



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