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32 事件後

目を開けると、見慣れない天井が見える。


「ここは…」


…そうだ、ジェイクの家。


私はベッドから上体を起こした。

幸い骨折はしていなかったが、腕と足がズキズキ痛む。


昨夜は怪我を見てもらい、痛み止めを飲んで、お風呂も貸してもらって。

そしたら、疲れなのか、副作用なのか、眠くなって寝てしまった。


コンコンコン

侍女が部屋に入ってくる。


「はい。どうぞ。」

「お目覚めですか?朝食はお部屋に用意しますが宜しいでしょうか?」

「はい。ありがとうございます。…あの、リカーナお母様やジェイク…様は?」

「お呼びしますね。その前にこちらをどうぞ。」


その侍女はガウンを手渡してくれる。


「えーと、私の着替えは…」

「今、手入れをしております。」

「そう、ですか。…こちらをお借りします。」

「はい。それでは、一度失礼致します。」


侍女は部屋を出ていった。その間にガウンを羽織り、前を閉める。


コンコンコン


「はい。」


ジェイクがドアを開け、顔を覗かせる。


「入っていいだろうか?」

「どうぞ。」


ジェイクはラフな格好をしている。


こういう格好も良いわ。


部屋の中に入ってくると、ベッド横にあった椅子に座る。


「調子はどうだ?」

「少し痛みます。」

「そうか。薬は食後だが、我慢できそうか?」

「はい。大丈夫です。…リカーナお母様にもお礼をしたいのですが、会えますか?」

「ああ。起きたことは知らせてあるだろうから、すぐ来ると思うぞ。」

「分かりました。」

「朝食はここで俺も一緒に食べてもいいか?」

「はい。一人は寂しいので嬉しいです。」


そこへ、リカーナお母様と、師匠も来てくれた。


「大変だったわね。今日はゆっくりしてね。」

「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしてすみません…。」

「良いのよ。」

「プルメリア。大丈夫なら、昨日の話を聞きたいのだが。」

「ジェイソン!」


リカーナお母様が師匠を止めようとしてくれるが、こういう事は早く話した方が良い。


「大丈夫です。…昨日の事ですが、外に出ていた時に、庭園に視線をやると、女性が黒尽くめの人たちに囲まれているのが見えました。只ならぬ雰囲気だったので放ってはおけず、そちらに向かいました。その女性がクレマだという事、近くにバートンくんが倒れていた事に気付いたのは近づいてからです。あの黒尽くめ達は、私とクレマを連れ去ろうとしていたのだと思います。名前を確認されましたし、『用事があるふたり』と言っていたので。」

「用事があるふたり、か…。心当たりは?」

「私達ふたりが狙われる心当たりは、1つです。」

「…リカルド殿下か。」


ジェイクも思い当たった様だ。


「そうです。私だけなら他の事も考えられますが、クレマと一緒となると、それが一番濃厚です。」

「どういう事だ?」

「リカルド殿下は今、リアとアメシスト嬢と行動を共にしている。他の生徒とは必要な時にしか交流がない。」

「なるほど。ふたりを邪魔に思うものがいると…。疲れている所すまん。話してくれてありがとな。」

「いえ。」


そして、師匠は部屋を出ていった。


「あの人は本当にもう…。ごめんなさいね。」


リカーナお母様は師匠を追うように部屋を出た。それと入れ替わりで、朝食が運ばれてくる。

ベッドの横にテーブルと椅子も用意された。私がベッドから足を下ろし、立ち上がろうとすると、ジェイクが支えてくれる。


「ありがとうございます。」


椅子に座り、朝食を目の前にすると、お腹がぐぅとなった。


「…すみません。」


恥ずかしい…。


「お腹が空いて当たり前だ。昨夜は舞踏会で、ほとんど食べてないだろう?食べよう。」

「はい。頂きます。」


朝食を食べ終えると、白湯と薬を用意してくれたので服薬する。


「今日は休みを貰っているんだ。1日中、一緒にいよう。」

「それは嬉しいですが、お暇しないと…。」

「何故だ?」

「学園への欠席申請が今日までなのです。家に帰って、準備をしないといけません。」

「それについては、侯爵から連絡が来ている。」


ジェイクがお父様からの手紙を見せてくれる。


『学園には連絡をした。成績に問題はないし、怪我が治るまで休んでも良いそうだ。リアを宜しく頼む。しかし、落ち着いたら我が家へ帰すように!』


「落ち着いたら、家へ帰るようにとあります。」

「そうだな。」

「なので、やはり、」

「まだ落ち着いていない。」

「?」

「約束も果たされていない。」

「約束?」


何かあったかしら…?


私が首をかしげると、ジッと見つめられる。


「覚えていないのか?」

「ごめんなさい。」

「馬車の中といえば、分かるか?」


馬車の中…?


『「口付けもしたいのだが。」

「それはできません…。」

「なぜ?」

「お化粧が、崩れてしまいます。」

「そうか…。」

「…帰りなら。」

「楽しみだ。」』


!!


昨夜の行きの馬車の中でのやり取りが頭に浮かび、私は一気に顔が熱くなる。


「思い出したようだな。」

「…はい。」

「では、約束を果たそうか…。」

「待ってください。」


私は近づいてくるジェイクを止める。


「?」

「着替えたい、です…。あ!お化粧も!」


私、スッピンだった!

起きてから今まで気付かなかった。

顔も洗ってないけれど、目やには?ヨダレの跡は?

うわぁーー!


今更なのだが、思わず顔を手で隠す。


「そのままで美しい。」


ジェイクは顔から手を剥がそうとする。


「せめて、顔は洗わせてください!」

「…用意させる。」


私はテーブルについたまま、用意してもらった洗面用具で顔を洗う。

その間、ジェイクもいたので、そちらに背を向けて行なった。


はぁ、さっぱりした。


洗顔が終わると、侍女がすぐに用具を下げに来た。


「ありがとうございます。お湯の温度も丁度良く、気持ち良かったです。」

「!…失礼致します。」


侍女が部屋から出ると、ジェイクは私の横に来た。


「リア、いいか?」

「お化粧していませんし、ドレスでもありません。…良いのですか?」

「昨夜のリアも見惚れるくらい綺麗だったが、今のリアも美しいと思うぞ。それに、ドレス姿でないリアを見れるのは、限られた者だけだろう?俺は嬉しい。」

「そ、そうですか。」


私は恥ずかしくなり、視線を反らす。


「…リア。」


ジェイクに頬を撫でられ視線を戻すと、ジェイクと目が合った。

私が目を閉じると、ジェイクの顔が近づいてくるのが分かる。


そして、私達の唇が重なった。


始めは軽いものだったが、段々と深くなる。


「ん、…ジェ、イク…ふぁ…」

「リア…」

「ふ…んっ…はぁ…」


どうしよう…。気持ちがいい。


「はぁ…やばいな。」


ジェイクが唇を離した。それが寂しく感じて、無意識に追ってしまう。


「もっと…」

「!」


ジェイクは、手で目元を覆い、深呼吸を始めた。


「ジェイク?」

「リア、これ以上は止まれなくなる。」


頭の中がポワンとしていたが、我に返った。


「…!?そ、そうですね!やめましょう!」

「それはそれで、寂しいのだが…。着替えを用意させる。」


そう言うと、ジェイクは部屋を出ていった。

少しすると、リカーナお母様と侍女数人がドレスを持ってやって来た。


「昨夜のドレスは手入れが終わっていないの。私の若い時の物なのだけど、こちらを着てくれるかしら?」

「はい。ありがとうございます。」


私はピンクベージュのドレスを受け取り、着替える。その後はヘアメイクもしてもらい、身支度が完成した。


「とても似合うわ。良かったら、それ貰ってくれる?」

「良いのですか?」

「ええ、着てくれた方がドレスも喜ぶわ。」

「ありがとうございます。」

「さて、これはつける?それとも、仕舞っておく?」


リカーナお母様が昨夜していたネックレスとイヤリングを指す。


「…仕舞っておきます。」

「そうね。このドレスには合わないかもしれないわね。今度、形はこのままでアクセントを赤系の宝飾品にして作りましょう。」

「え?いえ、滅相もございません。」

「そう?残念。気が変わったら言って頂戴ね。」

「…はい。その時は宜しくお願い致します。」

「よし。きっとジェイクが廊下で待っているわ。私はこれで失礼するわね。」

「度々来て頂いてありがとうございます。」

「良いのよ。何かあったら、また言いなさい。」

「はい。」


リカーナお母様と入れ替わりで、ジェイクが入ってくる。


「俺は明日からまた学園だ。今日のうちにリアを家まで送るから、それまでゆっくり過ごそう。」

「はい。お言葉に甘えます。…それから、あの、ジェイクに言って良いのか分かりませんが、学園へ行ったらクレマの事も気にかけてくれませんか?今回の事もありますし、また狙われる可能性も…。」

「それは、親父との話でも出ていた。学園の見廻りや、護衛を増やす予定だ。」

「良かった。よろしくお願いします。」

「…今回、俺が異変にもっと早く気付いていたら、こんな怪我をさせずに済んだのにすまん。」

「何を言っているのですか。すぐに駆けつけてくれたから、この程度で済んでいるのです。」

「しかし…。」

「…確かに、外に出てすぐ気付いていたら、何か変わっていたかもしれません。」

「…ああ。」

「でも、どの時にどうなっていたのか、正確には分かりませんし…。気付いてすぐに動いてくれた。それが事実なのは変わりません。」

「…」

「ジェイク。私は貴方に感謝しています。」

「リア…。」

「何かあったら、また助けてくださいね。」

「…なにもない事を祈る。」

「ふふっ。それが一番ですね。」

「足が治ったら、結婚式のドレスの話し合いを始めよう。」

「それから、エメラルド家の伝統等、教えて下さいね。」

「そんなものないと思うが。」

「…今度、リカーナお母様に聞くことにします。」

「すまん。その方が確かだ。親父も当てにはならない。」

「そんな気がします…。」

「くくっ。」

「ふふふっ。」


私達は顔を見合わせ、笑い合う。


その日はゆっくり過ごし、夕方には家へ送ってもらった。

そして、ジェイクはその足で学園に向かった。



---ジェイクside---


リアを家へ送り届け、学園に戻ると、王城から帰っていたグレイに様子を聞いた。


「グレイ。変わりはないか?」

「…」


返事がなく、顔が曇っている。


「どうした?」

「1日と言うか一晩で、俺とリカルド殿下がデキていることになっている。」

「は?」

「彼女にも振られた…。」

「そうか。」

「ジェイク。婚約者殿に、この状況の打開策を聞いてくれ。」

「何故、そこでリアが出てくる。」

「これは、オパール様のせいでもある。」

「何を、」

「リカルド殿下を、男色にしたのはオパール様だろう。」

「あー…。」


そういえば、リアがリカルド殿下へ女性を近づけない為に、協力したと言っていたな。


「それが原因か?」

「それしかないだろうが。」

「う~んと、後で手紙で聞いておいてやる。」

「頼んだぞ。」

「ああ。」

「絶対だぞ。」

「分かった。」


…グレイ、必死だな。


しかし…、あんなことがあった後とは思えないくらい平和だな。


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