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29 舞踏会前日

祭りの舞踏会前日


「只今帰りました。」

…「「「おかえりなさいませ。」」」…


使用人の皆が出迎えてくれる。

家族の姿はない。


「お父様とお兄様は仕事よね?お母様とお姉様はいらっしゃる?」

「はい。旦那様は明日の舞踏会の最終確認の為王城へ。若様はレオン殿下の補佐。奥様と若奥様は、明日の準備で部屋にいらっしゃいます。」


私の問にロバートが答えてくれる。


「分かったわ。挨拶をしに行きます。」

「畏まりました。」


私はまずお母様の部屋のドアを叩いた。


トントントン


「お母様、只今帰りました。」

「リア、出迎えられなくてごめんなさい。」

「いえ。前日なのですから、明日の用意で忙しくて当たり前です。」

「ジェイク様から贈り物が届いていたわよ。部屋へ入れてあるから確認なさい。」

「はい。ありがとうございます。」


次にお姉様へ挨拶に行くと、やはり忙しそうだった。すぐに部屋からお暇する。


貴族の女性は、舞踏会前に髪から足の先まで、全身を磨き上げる。

私が祭りの日の舞踏会に行くのは、初めての事だ。さらに、社交界デビューになるから、この優雅だが慌ただしい日を過ごすのも初めてだ。


私が自室に行くと、ジューン、カルア、メイがドアの前で待っていた。


「準備は出来ております。」

「…ありがとう。」


この世界、お風呂も侍女に手伝ってもらう人が多い。私はいつもひとりで入るが、こういう日はそうも言ってられない。

社交会デビューの前日ということもあり、全身マッサージと言う名のエステを裸で受ける。これまでも美容のためだと何度もしてもらっているが、慣れない。


「とりあえず部屋に入って、ジェイクからの贈り物を見たいのだけれど。」

「畏まりました。」


部屋に入ると、ジューンがネックレスとイヤリングが入った箱を持ってきてくれる。


「こちらです。」

「ありがとう。…箱も可愛いわね。」


スライド式の蓋を開けると、デザイン画でみたネックレスとイヤリングが輝いている。



「綺麗…。デザイン画のときも素晴らしいと思ったけれど、実物も思っていた以上ね。…私が付けていいのかしら。」

「「「「?」」」」

「私、負けそうなのだけれど…。」


それを聞いたジューン、カルア、メイ、ライラの四人の声が揃った。


「「「「そんな事ありえません。」」」」

「そ、そう?ありがとう。お世辞でも嬉しいわ。」

「本当にプルメリア様は変わりませんね…。」

「もう少し自分に自信をお持ちください。」

「誰よりも美しいですよ。」

「…それは言い過ぎ。」

「言い過ぎではございません。その美しさをより際立たせる為に、お手入れ始めさせて頂きます。」

「もう?」

「「「「はい。」」」」


私は4人に連れられお風呂場に行き、全身マッサージ、全身パック等を受けた。

そして全てが終わる頃には夕飯の時間になっていた。


「ツルツルのテカテカね…。」

「しっとり、すべすべと言ってください。」

「…そうね。」

「プルメリア様。旦那様と若様もお帰りです。支度をしましょう。」

「お化粧もする?」

「はい。」

「せっかくお手入れしたし、家族だけなのだから、要らないと思うの。」


カルア、メイ、ライラの3人は、ジューンを見た。


「では、軽くにしましょう。」

「…ええ。お願い。」


スッピンという選択肢は無かったようだ。


ま、しょうがないか…。

スッピンにドレスだとバランスも悪いしね。


私は支度を終えて、食堂に向かった。

食堂に着くと、すでにお父様とお兄様が着席されている。


「お父様、お兄様。お待たせしました。」

「久しぶり。元気だったかい?」

「はい。おふたりもお元気そうで、良かったです。」

「リア、この間はお酒をありがとう。美味しかったよ。」


実はケーキ屋で会った日に、悪いことをしたと思い、あの後にジェイクと探したお酒を贈っていた。


「いくら美味しくても飲みすぎては駄目ですよ?」

「…うん。そうだな。」


歯切れが悪い。


「お父様?」

「…」


お父様はそっぽを向いている。

もしかして。


「リア、あれもう無いよ。父上は送られた日に飲み干していたから。」

「やはりそうですか。強いものだから、飲み過ぎないようお手紙も書きましたのに…。あれを1日でですか?」

「…」

「まぁ、気持ちは分かるから、そこまでにしてあげてね。」

「…分かりました。」


自分で言うのもなんですが、娘とその彼氏のイチャイチャを見たら、お酒を飲みたくもなるのでしょう。

お兄様にも言われたし、それ以上は言うのをやめた。


その後は、お母様とお姉様もやって来て食事が始まった。


「明日はジェイクが迎えに来るのだろう?」

「はい。途中にしなくてはならない仕事があるそうですが、その前後は問題ないとの事でした。」

「まぁ、レオン殿下の挨拶回りは仕方ないな。」

「その間は私達と一緒にいればいい。」

「お父様とお兄様は仕事がないのですか?」

「私は裏の仕事があるが、表には立たないから普通に参加するよ。表部分は宰相に任せるよ。」

「私は挨拶回りに、付き合わなくてはなりませんね。早く次期宰相を決めてくれないから…。」

「候補はいないのか?」

「いるけど、即決できない人物ですので…。彼以上の人がいないしどうしよう、と考えて今に至りますね。」

「ああ、なるほどな。」


えーと、これは私も聞いていいことなのかしら?


「さあさあ、お仕事の話はそこまでにしてくださいな。」


そこでお母様が止めた。


「そうだな。まぁ、そういう事でリアもジャスミンも、レオン殿下の挨拶回りの時には私達といような。」

「それは助かります。」


それに同意する様にお姉様も頷いている。


「明日が楽しみです。」


私はみんなと話した後、明日の社交界デビューを楽しみに、早めに就寝した。



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