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28 デビューの衣装合わせ

結婚式の日付が正式に決まった。


これから、社交会デビューの準備の他に、結婚式の招待状とドレス準備もしていく事になる。


招待状に関してはお父様達の付き合いが中心になる。私はクレマとバートンくん、よく話してくれる何人かに手渡しするつもりだ。

リカルド殿下は、立場が立場なだけに来てもらうことは難しいだろう。しかし、話だけはしておこうと思う。


ドレスに関しては、早めにお願いしなくちゃ。えーと、オパール家御用達の仕立て屋に連絡をしてもらって…。あれ?エメラルド家の仕立て屋だっけ?ジェイクに確認。

お母様にも連絡しないと…。


「手紙でやり取りって時間がかかるわ。電話とか、メールとか出来たらいいのに…。」

「でんわ?めえる、ですか?」

「遠くの人と会話ができる機械よ。」

「そのような物があったら便利ですね。」

「そうなのよ!…でも、仕組みが分からない私が作るのは無理だけどね。」


私は便箋を用意し、先にジェイクに手紙を書いた。


ジェイクへの手紙はノアが届けてくれたので、返事もすぐに返ってきた。

ジェイクは、エメラルド家の仕立て屋で新郎新婦両方の衣装を作ろうと。

その旨を含め細かな確認を、お母様の手紙に書く。


「プルメリア様。今度の舞踏会のドレスの調整をしたいと連絡が来ております。」

「今度の休みにお邪魔すると言っておいてくれる?」

「畏まりました。」


家にいる時には仕立て屋が来てくれるのだが、寮にいるとそれは難しいので、こちらから赴く事になる。





そして、休みの日…


馬車で仕立て屋の前まで行き、ライラと降りるとジェイクがいた。


「ジェイク?何故ここに?」

「俺はオパール家の馬車が見えたから挨拶をしようと思って。リアこそ、どうした?」

「舞踏会のドレスの調整に来たところです。」


目の前の仕立て屋を指す。


「舞踏会?祭りのか?」

「ええ。」

「一緒に行っても良いか?」

「良いですが、いつ終わるか分かりませんよ?他にも用事があるのでは?」

「いや、明日から学園に戻るから、その前に店を見てきただけだ。…リアのドレスも気になる。」

「そうですか。…あ!エスコートをして頂くのに、気づきませんでした。ドレスの色を言っていませんでしたよね。…すみません。」


エスコートをして貰うのに、衣装の色の相性もある。失念していた。


「いや、デビューのエスコートだ。こちらが合わせるから気にするな。無難な色にするつもりだったし、その方がドレスを邪魔しないだろう?」

「お気づかいありがとうございます。」

「それでは、行こうか。」

「はい。」


私達はオパール家御用達の仕立て屋にはいった。


「オパール様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」


女性店主が頭を下げ出迎えてくれる。


「今日は、婚約者も一緒なの。ドレスを一緒に見ても良いかしら?」

「畏まりました。こちらへどうぞ。」


私達は店の奥の個室に通された。

そこには、緑色の生地に、胸元から裾に向かって銀の刺繍が施されたドレスがあった。


「綺麗。刺繍を銀にしてもらって良かったわ。」


グレーを入れたかったけれど、デビューのドレスにしては落ち着きすぎてしまうというので、それに近い銀の刺繍を入れてもらったのだ。


「ああ。きっとリアに似合う。」

「調整始めますが宜しいですか?」

「ええ。」


私とジェイクの間にはパーテーションが用意された。


「俺は外で待つ。」

「パーテーションがあるし、大丈夫ですよ?」

「しかし…」

「廊下に居たら、お仕事の邪魔になります。」

「…」


私が言うと、ジェイクは室内に置かれているソファへ静かに座った。

それを確認した店主は作業に入る。

私は着てきたドレスを脱ぎ、緑のドレスに袖を通す。


「ここを少し詰めます。こちらは少し緩めましょう。…これで調整は終わりましたが、着た所を婚約者様へお見せになりますか?」

「うーん。…ジェイクはどうしたいですか?」


私はパーテーションの横から顔を出し、ジェイクに聞いてみた。


「…見たい。」

「それなら、そうしましょう。」

「畏まりました。」


そう言い、店主がパーテーションの半分を退かしてくれた。


「!」


ジェイクは目を丸くして、動きも話もしない。


「ジェイク?おーい、ジェイク?」


反応なし。


見かねたライラがジェイクに近づき、大声で声をかける。


「エメラルド隊長!!」

「んあ?…すまん。」

「ジェイク、大丈夫?待ち疲れました?」

「いや、疲れていない。…すごく似合っている。」

「ありがとう、ございます。」


照れる…。


そして、緑のドレスを脱ぎ、着てきたドレスに着替える。


「本日は終わりになります。完成品はご自宅へのお届けでよろしいですか?」

「ええ。お願いします。」


私達は仕立て屋を後にした。


「リア、この後用事はあるか?」

「いいえ。」

「門限までは時間があるし、少し良いか?」

「ライラ、良いかしら?」

「はい。私共は学園へ先に戻っております。エメラルド隊長、プルメリア様をよろしくお願い致します。」

「ああ。門限には無事送り届ける。」


ライラ達は馬車に乗り、学園に帰っていった。


「行こう。」

「何処へですか?」

「すぐそこだ。歩きながら話そう。」

「分かりました。」


何処かに向かって歩き出した。

この通りは貴族達御用達の仕立て屋や、宝石店が並んでいて、静かな通りだ。


「実は社交会デビューの祝いを何にしようか考えていたんだ。あのドレスを見て思いついた。」

「?」

「ここだ。当日に付ける宝飾品をプレゼントさせてくれ。」


ジェイクが立ち止まった場所は、宝石店の前だった。

中に入ると、ここでも奥の個室に通され、男性の店主が応対してくれる。


「エメラルド様。本日は何をお探しですか?」

「婚約者が社交会デビューなんだ。グレーダイヤモンドとグリーンダイヤモンドで宝飾品を作って欲しい。金はいくらかかっても良い。」

「え?」


私が驚いている内に話が進んでいく。


「デザインはどうしましょうか。」

「ゴテゴテし過ぎず、上品なものが良いな。」

「ドレスはどのような形でしょうか?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい。」

「どうした?」

「どうしたって、お金…。」


かなりの値段になりそうだけれど…?


「ああ。使い道がないから貯まっている。こういう時に使わないとな。祝いなんだから、気にするな。」

「ゔっ、…はい。」

「では改めまして、ドレスについてお聞かせください。」


私は、さっき見てきたドレスを思い浮かべながら、店主へ説明をした。


「ドレスは緑の生地に胸元から裾に向かって銀の刺繍があります。胸元は鎖骨下まで開いていて、スカートは広がっていています。」

「なるほど。…長さは出さずに、このくらいで。…ブルーダイヤモンドも入れましょうか?そうするとおふたりの瞳の色が入る事になります。グレーダイヤモンドを多く使い、ブルーとグリーンをアクセントで散らすというのはどうでしょう?」


店主は話しながら、紙にササッとデザインを書き見せてくれた。


「それ良いな。リアはどうだろうか。」

「はい。素晴らしいです。」

「イヤリングも合わせて如何ですか?」


またもや、ササッとデザイン画を書き、見せてくれる。


店主さん、商売上手。


「頂こう。祭りの日までに仕上がるか?」

「はい。なんとか致します。」

「頼んだ。」

「よろしくお願いします。」

「畏まりました。」


私達は店を出て、来た道を歩く。


「ジェイク。ありがとうございます。」

「当日が楽しみだな。さて、思っていたより、早く終わったな。お茶でも飲んでいくか?」

「はい。あの…行ってみたかった所があるのですが、そこでも良いですか?」

「ああ。何処だ?」

「我が家で飲んでいるお茶のお店が、ケーキ屋を開いたそうなんです。」

「そうか。どこにあるんだ?」

「えーと、確か…」


以前にライラから聞いた場所をジェイクに話すと、場所に思い当たった様だ。


「それならこっちだな。…ほら。」


手を出されたので、私はその手に触れる。

私達は手を繋いで店に向かった。


「言っている所は、ここだと思うんだが。」


私は、店名を確認する。


「はい。ここです。」

「では、入ろうか。」

「楽しみです。」


ドアを開けると、お茶の香りで溢れていた。


「良い香り。」


店内はイートインスペースと、持ち帰りスペースに分けられている様だ。

イートインスペースはお客がたくさんいる。

私達がドア付近にいると、店員が走ってきた。


「オパール様。いらっしゃいませ。いつもご贔屓にして下さりありがとうございます。」

「こちらこそ、いつも美味しいお茶をありがとう。それにしても、良く私だと分かりましたね。直接会うのは、初めてだと思うのだけれど…。」

「以前、お茶をお持ちした際に、お見かけしました。」

「そうなのね。」

「今日はお持ち帰りですか?」

「いいえ。休憩がてらケーキを食べに来たのだけれど、席は空いているかしら?」

「はい。ご案内致します。」

「あれ?リア?」


店員に付いて行こうとした時、後ろから声をかけられた。

声のした方に振り返って、私もジェイクも驚いた。


「お父様!?師匠!?」

「近くを通ったから、ミディアに土産をと思って寄ったんだ。」

「俺もついでに土産をな。…まあ、仲良くやっているようで良かったよ。」


チラッと手をみられる。


手…?

わ!手を繋いだままだった!


私は手を離そうとするが、ジェイクはそのつもりは無いらしい。しっかり握られている。


「親父も土産とか買ったりしてたんだな。」

「当たり前だ。」

「怒らせたから何か良い詫びの品がないか、と相談してくる事もありますもんね。」

「おい!」

「あの…すみません。ここでは何ですのでお席の方へ…。」


店員が恐る恐る声をかけてきた。


「あ、ごめんなさい。そうよね。お父様、師匠、一緒に如何ですか?ジェイク、良いですよね?」

「…ああ。」


あ、不服そう…。


「そうかい?それならお言葉に甘えて。」

「おい!」

「いいじゃないですか。あとは帰るだけなんだし、久しぶりに愛娘に会えたんですよ。」

「だからってなぁ、」


また、話が続きそうになった時、店員に再度声をかけられた。


「あ、あの、そろそろ移動をお願いします。」

「そうよね。ごめんなさい。ほら、行きますよ。」


私はお父様と師匠に声をかけ、ジェイクの手を引いて店員の後ろをついて行った。

私達は、半個室の様な席に案内された。

ジェイクと手を離し、私とジェイクが隣り、私の向かいにお父様、ジェイクの向かいに師匠という形で席に座る。そして、メニューを見ながら、それぞれお茶を頼んだ。


「お父様、師匠。ケーキはどうしますか?」

「私は、ベリーのケーキにするよ。」

「俺はいらん。」

「ジェイクは?」

「俺もお茶だけで良いな。」

「そうですか?それなら、私はティラミスを。」

「畏まりました。」


店員はオーダーを聞くと、テーブルを離れた。


「ところで、ふたりはデートだったのかい?」


お父様が直球で聞いてきた。


「デートといいますか、今日は社交会デビューのドレスの調整に来て、店の前で偶然ジェイクに会いました。」

「ふーん。それでその後ここに来たと。」

「お父様なんか、取り調べの様ね…。」

「そんなことないさ。娘が大切にされているか気になるだけだよ?」


私はジェイクの顔を見る。


お祝いの事話していいのよね?

私から話す?

ジェイクから?


それが伝わったのか、お父様の問いにはジェイクが答えた。


「ドレスの後に社交会デビューの祝いを見ていました。今まで何にしようか考えていたのですが、ドレスを見て決まったので。」

「何にすることにしたんだい?」

「それは俺も気になるな。」


師匠も話に加わる。


「当日に付ける宝飾品です。」

「ほぉ、お前もやるなぁ。で、どんなのだ?」

「それは、当日見てくれ。」

「おまたせ致しました。」


そこで、お茶とケーキが運ばれてきた。

各々頼んだものを口にする。


「ジェイク。このティラミス、甘すぎず美味しいですよ。ひと口食べませんか?」


私はひと口分乗ったスプーンを、ジェイクに向けた。


「!」

「ジェイク?」

「リア。嬉しいのだが、今はちょっと…。」

「ん?あ、すみません。こちらからひと口、如何ですか?」


あ~ん状態だったことに気づき、スプーンをお皿に置いて、お皿ごとジェイクへ渡した。


「…頂く。」

「どうですか?」

「ほろ苦い。これならいける。」

「良かった。もしかしたらと思ったんですよね。」

「リア。…もしかして、それでこれを頼んだのか?」

「まあ、それもありますが、私が食べたかったのも嘘ではありませんよ。」

「…リア。」

「ゴホン。我々は何を見せられているのだろうか?」

「!」

「お父様。すみません。」


私達の顔は赤くなっているだろう。思わず俯いた。


「ほらな。だから言っただろうが。親がデートに参加して、良いことは何もない。」

「…言ってないですよ。」

「そうだったか?とりあえず、食べたらもう行こう。」

「そうですね。」


お父様は黙々と食べ、食べ終えるとお茶を一気に飲みほした。


「では、次は祭りの前日かな?」

「はい。前日のお昼前には帰ります。」

「楽しみにしているよ。…ジェイク、邪魔してすまなかったね。」

「いえ。」

「ジェイク、プルメリア。またな。」

「今日は会えて良かったです。ふたりとも、気を付けて帰ってくださいね。」


お父様は、すでにお茶を飲み終わっていた師匠と、店を出ていった。




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