表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/72

ウェルクside

私はウェルク·オパール。候爵家の当主だ。うちは代々国の情報を扱い、さらに、陛下から密命が下る事もあるため、命を狙われる事が多い。そのため、身を守る手段はいくつか身に着けている。

無表情になってしまうのもそのためだ。自分だけでなく、家族を守る為にも感情の乱れは悟られないほうが良い。


しかし、ミディアと結婚し子どもが生まれると、私の心は乱れ始めた。


可愛い………


「おぎゃー!!!!!!!!」


息子のスターチスをジッと見ていると泣き出した。


「ウェル様、そんなに見てはチスが、びっくりしますよ。」


ミディアがクスクス笑いながら言う。

ミディアとは恋愛結婚ではないが、上手くいっているとは思う。


「しかしなあ、可愛すぎて…ずっと見ていたいのだが…」

「その怖い顔では…こどもを見るときくらいは笑っても。」

「ロバート…」


後ろにいるこの執事は長い付き合い、こうなった(無表情)理由も知っているのに容赦ない…


「この顔はもうどうにもならん。……怖がらせてしまうか…」


それから、私はスターチスを遠くから見守る事にした。


「あの子はもう歩いたぞ!」

「もう話し始めた!」

「うちの子は優秀だな!」

「今日も可愛いぞ!」


毎日、そんな話をしていると、ついにロバートが切れた。


「うるさいですよ、親バカ。そんなに可愛いなら、もっと遊んで差し上げてください!仕事など、貴方ならどうとでもなるでしょ!」

「でも…怖がらせてしまうのではと怖いのだ。」

「仕事は出来るのに、いつからそんなにヘタレになったんですか。威厳はどうしました、威厳は!」

「そんな事言っても…」


そのまま、スターチスと距離を縮められずにいた。そんな中、2人目ができた。

産まれてきたのは、女の子。花のように可愛い子で、プルメリアと名付けた。


プルメリアは産まれたときから、泣く事は少なかったようだ。顔を合わせる時には、私をジッと見てきて何かを探っているようだった。


可愛い………

うちの子は天使だったのか…


とは言っても、スターチス同様、距離をはかれずにいた。


そして1~2年経ったとき、


「いただきましゅ。」


食事前に手を合わせているプルメリアを見た。


「それはなんだ?」

「あっ!……ゆめでみたの…でしゅ。たくさんのどうぶつしゃんと、おはなしゃんと、おやしゃいしゃんがでてきました。みんないきていたのでしゅ。だから、わたしのからだのためにありがとうなのでしゅ。」

「そうか。」


不思議な子だ。何もかも分かっているような、見透かしているような気さえしてくる。


この子の将来が楽しみなような、怖いような…。まぁ、何があっても守るがな。


   ◇


さらに1年…


「うちの子たちはなんでこんなに聡明で、可愛いのだ。」

「聡明なのは認めましょう。しかし、可愛さはうちの子も負けていない。」

「ロバート…お前も大概だよな…」


こんな会話が日常になっている。

そんなとき、ロバートからある話を聞いた。


「ジューンから旦那様の休日を聞かれました。なんでもプルメリア様が気になさっているようです。」

「どうかしたのか!?」

「いえ、プルメリア様は重要な事柄ではないと仰っていたようです。」

「………すぐに仕事の調整をしよう。」

「了解しました。」


私は後に回せる仕事には手を付けず、仕事の調整をして時間を作った。


「今日は、昼過ぎに帰る。」


朝食の時にそう切り出すと、子どもたちは目を丸くしてこちらを見た。


そんなに驚く事か…?


そして、私は約束通り昼に帰る事ができた。



「ウェル様、おかえりなさい。お仕事お疲れ様でした。」

「あぁ、ただいま。」

「今日の昼食はウェル様の好物ですよ。」

「それは、楽しみだ。」

「お父様、おかえりなさい。」

「おかえりなさい。」


みんなで出迎えてくれる。


こんな事、久しく無かったな。


何時もの出迎えはミディアとロバートだけ。時間によってはミディアがいない時もある。


こういうのも悪くないな…。気持ちが穏やかになる。


昼食を食べ終えた後に、プルメリアを執務室に呼ぶことにした。


トントントン


「プルメリアです。」

「入りなさい。」

「失礼します。」

「座りなさい。」

「はい。」


本当に3歳だろうか。プルメリアはもうしっかり話し、礼儀作法も問題ないと報告を受けている。これから教師を付けようと思っていたのだが、独学で勉強もしているようだ。


まぁ、まずは何を気にしているか聞かないとな。どう切り出したら良いものか。

考えていると時間が空いてしまい、しびれを切らしたのかプルメリアから話しかけてきた。


「あの…お父様。お話とは?」

「話があるのは、プルメリアの方ではないのか?」

「え?」

「何か気にしていたと耳に入ったが。」

「もしかして、そのために今日早く帰ってくださったのですか?お仕事は本当に大丈夫なのですか?」


驚きながらも、私の仕事の心配もしてくれる。


なんて良い子なんだ!


「ちょうど、区切りがついたのは本当だ。それに、いつも余裕を持って仕事をしているから問題ない。…それで?」

「私付きの侍女たちのことです。手当をつけてくださっているそうで、お礼を言いたかったのです。」


プルメリアは、侍女を多くは必要としない。自分で出来ることは、自分でしているようだ。貴族としては変わっているが、私はその考え方が嫌いではない。そのため、無理に増やす必要もないかと思っている。


「何だそんなことか、子どもが気にすることではない。彼女たちを雇っているのは私だからな。」

「それでも、お礼を言いたかったのです。それと……お父様ともお話をしたかったの」


だんだん声が小さくなり、俯いているプルメリア。


「ゔっ…」


私と話をしたかっただと…

可愛い…なんて可愛いんだ!


顔に手をやり、口元を隠した。


「お父様?」

「いや、すまん。…話だな、何を話そうか。」

「……お仕事、忙しそうですね。」


ここの所、周りの国が物騒になっている。陛下に言われて動くことも多く、外回りも増えている。そんな仕事の話をしていると休日の話になった。


「休みが取れないくらい忙しいのですか?」

「休みは取っているぞ。」

「でも、お休みにも仕事をしていると聞きました。」

「領地のことの確認なんかもあるから、それをしているんだ。」

「それはお休みとは言いません!」

「………」

「身体を壊さないか心配です。」


天使!…ここに天使がいる!なんて優しい!!


「そうか…心配してくれてありがとう。これからは少し気をつけてみるよ。」

「はい」

「ところで、プルメリア」


私は1つ、ずっと気になっていた事を聞く事にした。

 

「私もリアと呼んでいいかな?」


そう、私は子どもたちを愛称で呼びたかったが、タイミングが掴めずにいたのだ。


「??お父様は私のお父様なのだから、許可など必要ないと思いますが??」

「……嫌われたくなくてな。」

「え?お父様、私を愛称呼びすると嫌われると思っていたのですか?」

「仕事で忙しくしていて、交流も少ないのに呼ぶタイミングも分からなかったのだ。」

「もしかして、お兄様をスターチス呼びなのも?」

「…そうだ。」


大丈夫だろうか…嫌われてないか?子どもたちに嫌われたら私は…


「お兄様もお呼びしましょう!」

「え?」

「私達親子には会話が足りません!」


話を聞いたロバートによって、スターチスはすぐに連れてこられた。


なんと言えばいいのだ…自分で情けなくなる。こんなの自分ではない…


「お父様、お兄様にも!」


リアに促され口を開く。


「…スターチス、お前をチスと呼んでもいいか?」

「……………は?」


当然の反応だ…私でも親に言われたら、「は?」だ…


「駄目ならいいのだ。今まで通りスターチスと呼ぶ事にする。」

「いえ、失礼しました。別にいいのですが、どうしたのですか急に。」

「呼ぶタイミングが分からなかったそうです。私も先程、リア呼びになりました。」


スターチスは何とも言えない顔をした。


そこから、私達は色んな話をした。時間が経つのも忘れ話していると、話し声を聞いたミディアがやってきた。


「私は除け者ですか!?」


拗ねたミディアの機嫌は後で取る事にして、今はただ、子どもたちとの交流を大切にしよう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ