26 信者?
次の日の朝…
食堂でクレマとリカルド殿下と一緒になった。
「お菓子ありがとう。」
「こちらこそプレゼントありがとう。」
「土産、私にまですまなかったな。」
「あら、リカルド殿下にも?婚約者は何も言わなかったの?」
クレマは、リカルド殿下の後ろに控えているジェイクを、チラリと見た。
「ジェイクと選んで、ジェイクから渡してもらったわ。」
「そう。それなら、大丈夫なのかしら。」
「あれだけ好いていれば、ヤキモチくらい焼くだろう。俺は貰ったときに、ヤラれるのではないかと思ったぞ。」
「まさか。そんな事はしないわよ。…まぁ、ヤキモチは嬉しいけれど。」
私は、頬に手をやる。
少し、熱い…。
「プルメリア。よく本人がいる所で、それを言えるわね?当の本人も表情を崩さないし…。」
「ん?」
「分かっていないのね…。」
「あっ、クレマ。婚約者くんがこちらに来るか迷っているみたいよ?いつも一緒に食べているのでしょう?」
こちらに来ようかやめようか迷って、オロオロしているバートン家の次男が見える。
「ああ、私がいるからか?気にせずに呼んでくれ。」
「それなら…。マルタ、ヒィを呼んできて。」
「畏まりました。」
クレマの侍女マルタはクレマの1歳下の婚約者ヒスイ·バートンを呼びに行った。
「クレマ…。僕はここにいていいのだろうか…。」
「殿下が良いといったのだから良いのよ。殿下、こちらが私の婚約者です。」
「バートン家の次男ヒスイと申します。よろしくお見知りおきを。」
「ああ、よろしく。私は友達が少ない。良かったら仲良くしてくれ。」
「勿体ないお言葉です。」
「ヒィ。殿下の言っている事、本当だから気を使うのは無駄よ。」
「クレマ、言い方…。」
「いや、その通りだ。もう少し楽にしてくれて良い。俺の友と言えるのは、この二人だけだから。」
そうなのだ。
リカルド殿下は、あれからずっと私達と一緒に行動している為、他の生徒との交流は授業のみだ。それさえも拒むことがあり、戦闘授業もどうしているのか不思議なくらいだ。
殿下曰く「必要な事はきちんと話している。王になる気はないし、貴族との交流もほどほどで良い」との事。
あまり、交流を増やしても臆測を生むだけなのでそれで良いのだろう。
私とクレマはそう話し、今に至る。
「ヒィ。それよりも、プルメリアとも、きちんと会ったのは初めてよね?」
「そうなのか?」
「そういえば、話は聞いていたから会った気がしていたけれど、はじめましてね。」
「はい。ぼ、私はバートン家次男ヒスイと申します。」
バートンくんがまだ立ったままだったので、私も椅子から立ち上がり挨拶をする。
「私はオパール家長女プルメリアです。よろしくお願い致します。」
!
「す、座ってください。」
バートンくんは慌て始めた。
「ヒィ、これがプルメリアよ。慣れなさい。さぁ、2人とも座って。食べましょう。」
確かに話をしていて、時間がだいぶ経っている。授業開始はまだ先だが、料理が冷めてしまう。
バートンくんは黙々と食事をしているが、私達は食べながらも、会話を続ける。
「プルメリア。さっきから気になっていたのだけれど、そのネックレス似合っているわよ。」
「ふふっ。ありがとう。プレゼントなの。」
「誰からなのかは言われずとも分かるな。…うん。独占欲丸出しだ。」
クレマとリカルド殿下は、ジェイクを見る。しかし、ジェイクは動じず、表情を変えない。
「殿下は、婚約者はいらっしゃらないの?」
「今の所、結婚する気は無いからな。」
「でも、周りがうるさいのではないの?」
「まぁ、それもあってここにいる。」
「そうなのね。大変ですね。」
リカルド殿下の事情は限られた人しか知らない。先日の襲撃があるので何かあるとは思っているだろうが、クレマも詮索はしなかった。
「まぁな。しかし、ここではふたりのおかげで静かにすごせる。これでも感謝しているんだ。」
私とクレマは顔を見合わせ微笑む。
「大丈夫です。ちゃんと分かっていますわ。」
「ええ。始めは面倒くさい事になったと思ったけれど。」
「クレマ!」
「バートン、いいんだ。その通りだから。現に嫌がらせなども起こって可笑しくない。」
リカルド殿下は、表情を少し暗くする。
それを、クレマの明るい声が打ち消した。
「でも、それが全く無いのよねぇ。」
「何かあったら離れようと思っていたのだが、何も聞かないし、怪我なども無いようだったから、今まで来てしまった。本当に何もなかったのだな。」
リカルド殿下は、酷いものは無いにしても、もしかしたら、なにかあるかもと思っていた様だ。安心している事も伝わってくる。
「ええ。ね、プルメリア。」
「そうね。特に何も。」
「そうか。良かった。」
「リカルド殿下。あの時、プルメリアを選んで正解でしたよ。プルメリアでなかったら、こうはなりませんでした。」
「「?」」
リカルド殿下は不思議そうな顔をした。
私も、どういうことか分からない。
「皆、プルメリアの事が大好きだと言うことよ。」
「よく分からないのだけれど?」
「うん。それで良いのよ。」
「気になるわ…。」
しかし、クレマはそれ以上教えてはくれなかった。
まあ、悪いことでは無さそうだし、気にしないようにしよう。
食事後、授業開始にはまだ時間があるため、クレマとバートンくんはその場に残り、私とリカルド殿下は1度寮へ戻る事にした。
戻る時にジェイクを見ると、ジェイクもこちらに気づき一瞬胸元を触った。
付けてくれているのね。
私は嬉しくて、思わず笑みがこぼれ、首元のネックレスを触った。
…「「「「「!」」」」」…
その場にいて、プルメリアの笑みを見た者は、全員動きが止まる。
プルメリアはそれに気づかず、部屋へ戻っていった。
「ああ、また信者が増えたわね。」
クレマのそんな声もプルメリアには聞こえない。




