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25 感謝

街歩きの後、帰りの馬車で寝てしまった。

しかも、ジェイクの肩を借りて…。


恥ずかしい!

ヨダレは出てなかったかしら?イビキとか、白目とか。


「はぁ…。」


私は今、部屋でライラにお茶を入れてもらっている。


「どうなさいました?」

「なんでもないの。ライラ、これをクレマに届けてくれる?」


私が帰った時、クレマから誕生日プレゼントのハンカチが届いていた。


お土産買ってきておいて良かったわ。


私はお土産の焼き菓子をライラへ預けた。


「直接、渡されなくて良いのですか?」

「うん大丈夫。あ、ライラ達はご飯はいつ食べたの?」

「…?お昼に食べましたが?」

「「私達もです」」

「夕飯は、もちろんまだよね?」

「「「はい。」」」

「分かったわ。じゃあ、ライラ。クレマによろしくね。」

「…行ってまいります。」


さてと、あとはノアとネーロね…。


「ノアはカップを3つ持ってきてくれる?ネーロはナイフをお願い。」


私の言葉にふたりは顔を見合わせている。


「私がナイフも持ってきますが?」

「あっ、お皿もお願い。」

「…はい。」


ふたりは諦めて出ていった。


と思わせて、ネーロがいるわね…。


「ネーロ?食堂に行って夕飯はいらないと言ってきてね。」

「…バレてましたか。しかし、どういうことでしょうか?」

「いいから。私だけではなく、貴方達の分もよ。よろしくね。」

「…はい。」


ここまでしても、分からないのだろうか?


まぁ、分からないか…。


実は、街歩きのお土産として色々買ってきていた。始めはお菓子を、と思っていたのだが、見て回っているときに、思いついてしまった。


皆で夕飯を食べたい。


そして、キッシュ、パン、お肉、サラダ等など買い込んでいた。


使用人が主と食事を共にすることはない。我が家でも、これは守られていた。


でも、たまには良いよね。

私の完全なる自己満足だけど、私の誕生日だし最終学年だし、普段の感謝として…。


「ふんふんふ~ん。」

「只今戻りました。」


鼻歌を歌いながら、準備をしていると、まずはライラが戻って来た。


「プルメリア様?何をしていらっしゃるのですか?私がやります。」

「まあ、まあ」

「「只今戻りました。」」


ノアとネーロも戻ってきた。


「さてと、夕飯には少し早いけれど、始めましょう!」

「「「?」」」

「ライラ、ノア、ネーロ。ありがとう。本当は手作りが良いのだけれど、ここでは無理だから、今日のお土産で一緒に食事にしましょう。」

「「「はい?」」」

「だからね、」

「いえ、あの、それはできかねます。」


ノアとネーロも首を縦に振っている。


「今日は私の誕生日よ?ひとりで食べさせるの?」

「それならば、クレマ様を呼びに行ってきます。」

「そう…。私は貴方達と食べたいのに…。」


俯くと、3人が顔を見合わせている。


「分かりました。…今回だけ。」

「本当?ありがとう。さぁ、座って!」

「いえ、準備は私がします。」

「あら、ライラ。それでは、感謝の食事にならないわ。」

「感謝の食事ですか?」

「あれ?言っていなかったかしら?」

「聞いておりません。」

「では改めて…。学園生活を快適に過ごせるのも、寂しくないのも貴方達がいるからよ。最終学年だし、良い機会だから普段のお礼をしようと思ったの。貴方達に食事してもらって私が奉仕する事も考えたのだけれど、」

「「「それは、やめてください!」」」

「そういうと思ったから、一緒に食事にしたのよ。いつもありがとう。感謝しているわ。」


3人は目を見開き、ライラはその後に涙を流した。


「…え!そんなに嫌だった?考えれば、そうよね。主と食べても、気を使って落ち着かないわよね。やめましょう!」


私がそう言うと、ライラは涙を拭いて話し始めた。


「いいえ、すみません。落ち着かないのは確かですが、泣くほどではございません。…嬉しかったのです。私は、プルメリア様の様な主にお使えできて幸せです。」


ノアとネーロもそれに続く。


「「私達も、幸せです。」」

「私も幸せよ。…えーと、食べましょうか。キッシュを切るわよ。」

「いえ、それは私がやります。」

「お願いするわ。」


私達は食事を始めた。


「これ美味しいわね。」

「はい。こちらも美味しいです。」

「ノア、ネーロ、足りるかしら?一応多めに買ってきたつもりだけれど…。」

「はひ!おひひひです!」

「ネーロ、何を言っているか分からない…。」

「行儀が悪いわよ。」


ネーロが2人に注意を受けている。

きっと、いつもこういう関係なのだろう。

私の前と違うのは当たり前だけれど、こういうところが見れるのは嬉しい。


「ふふふっ。良いのよ。食べたいように食べましょう。貴方達へのお礼なのだから、気にしたら負けよ。」


その後は、他愛のない話をしながら食事をした。


「「「ごちそうさまでした。」」」

「3人とも、私の自己満足に付き合ってくれてありがとう。」

「また、そのような事を…。」

「違うのよ。感謝とか色々言ったけど、結局は私の為なの。結婚したら、貴方達とも離れてしまうでしょ?学園生活を支えてくれている貴方達と思い出が欲しかったのよ。」


そうなのだ。

結婚は嬉しい。嬉しいのだが、それは別れも意味する。きっと、簡単に実家と行き来する事はないだろう。お母様が実家に帰っている所なんて、ずっと見ていない。

ジェイクから『卒業してすぐ結婚しよう』と言われて、それが頭を過ぎった。


「プルメリア様…。」

「「付いていきます。」」

「あなた達は、我が家の大切な宝よ。他の家へ行くのは難しいと思うわ。」

「「…」」

「しかし、私なら。」


使用人は宝だ。我が家の場合特に、彼らがいないと成り立たない。

確かに、ライラについてきてもらうことは可能かもしれない。しかし、ライラも戦闘訓練云々を受けている我が家の宝に変わりはないのだ。


「…そうね。そうなったらよろしくね。」



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