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23 誕生日

あっという間に、誕生日当日


都合よく、今日は授業もなかった。


外出申請OK!

持ち物の準備OK!

服、靴OK!


今日の服は、街歩きをしていてもおかしくない私好みのシンプルなワンピースだ。

色は青灰で、腰には大きめのリボンがひとつ付いている。ライラが選んでくれた。

髪もシンプルにポニーテール。しかし、編み込みが入っていてちょっとおしゃれ。

これもライラが…。


あら?私、ライラがいないと駄目になりそう。


「お綺麗です。」


ライラの言葉に、ノアとネーロも頷いている。


「ありがとう。ライラのおかげよ。朝から準備をお願いしてしまったけれど、今日はゆっくりしてね。ノアとネーロも。」

「「「はい。ありがとう御座います。」」」

「寮の前までジェイクが来てくれるから、もう大丈夫よ。」

「いえ、お見送りさせて頂きます。」


そう言うと、3人はジェイクとの待ち合わせ場所まで付いてきてくれた。

寮を出ると、既にジェイクが居た。


「待たせてしまいましたか?」

「いや、先程来たところだ。大して待っていない。」


私とジェイクは3人と離れ、学園を出た。

街まではジェイクが用意してくれた馬車で向かう。


「今日は晴れて良かったですね。」

「ああ。」

「よく考えたら、街に行くのは初めてです。」

「そうか。」

「食べ歩きとかできますか?」

「ああ。」

「でも、お昼も食べるのですよね。お腹いっぱいになってしまうのが心配です。」

「そうか。」

「…」


ジェイクはこちらを見ているが、『ああ』『そうか』だけ…。

これは、


「聞いていませんね。」

「ああ。」


もう!


私の眉間に皺が寄ってきたのに気づいたのだろう。ジェイクが焦りだした。


「どうした?酔ったか?」

「分からないのですか?」

「…すまん。聞いていなかった。」

「もう!」

「リアが美しすぎて見入っていた。今日の服も似合っている。」

「な!」


なんて事を言うの。それを言われたら、怒れないじゃない…。


「…ライラが選んでくれました。」

「良い色だな。」

「青灰色です。」

「青灰…。リアの目と俺の目の色を合わせた色だな。」

「!」


思わず、言葉を失う。


そう言われればそうだ。

確か相手の目の色を身につけるって、この世界では、私はあなたのものとか、ずっとそばにとか、そんな意味があったんじゃなかった?

もう、ライラ!


「おっ、着いたようだな。」

「…はい。」


ジェイクは先に馬車から降りると、手を差し出してくれた。私はその手に手を乗せて降りる。その手は馬車から降り終わっても、そのまま強く握られる。


「さぁ、行こう。」

「はい。」


私達は、手を繋いだまま歩きはじめた。


街は賑やかで、人が行き交い、道の両隣には屋台もある。


「お祭りみたい。」

「この辺はいつもこの状態だな。祭りはもっと人が増える。」

「来たことがあるのですか?」

「騎士団が警備に当たるから、仕事でな。仕事以外では、舞踏会に出なくてはならないから来れないな。」

「お祭りの日は王城でも舞踏会が開かれますものね。」

「今年はリアも参加できるな。」

「はい。少し不安ですが、楽しみでもあります。」

「エスコートは俺がするからな。」

「仕事があるのでは?」

「仕事があったら、誰と出るつもりだ?」

「それは、まだ…。」

「リアの横は俺だ。しかも、社交会デビューになるのだろう?」

「まぁ、そうなりますね。」

「それこそ、俺が隣りにいたい。」

「ジェイク…。嬉しいです。余計に楽しみになりました。ジェイクが一緒に行ってくれるのだと思ったら、不安もなくなります。」

「それは良かった。」


私達は手を繋いだままぶらぶら歩く。


「あ、たこ焼き!焼きそば!じゃがバター!クレープも!」

「ハハッ。食べ物ばかりだな。」


ジェイクに笑われたが、気にしない。

家では食べられないものが沢山ある。

クレープは家で出るが、上品にお皿に盛られている。

そうではない!

クレープは、たっぷり生クリームを、歩きながら食べたいのだ!


「ジェイク。お昼はどうする予定ですか?」

「まだ決めていないが?」

「それなら、」


私が食べ歩きを希望すると、了承してくれた。


「まずはクレープです。ジェイクは何にしますか?私は生クリームスペシャルで!」

「はい。」

「俺は甘いものより、ソーセージ入りがいい。」

「はい。」


店員さんは2つのクレープをパパッと作って渡してくれた。支払いをしようとするとジェイクに止められる。


「今日はリアの誕生日だろう。そうでなくても、リアに払わせる気はない。」

「でも…」

「高給取りだから安心しろ。」

「…ふふふっ。ありがとうございます。」


雑貨屋の前を通ると、天然石のアクセサリーが置かれていた。


「私、こういうの好きだったんですよね。」

「好きだった?…ああ、そういうことか。覗くか?」

「良いのですか?」

「もちろんだ。」


私は、ウキウキしながら見て回る。


「これは、グレームーンストーン。実物は初めて見たわ。綺麗ね。」

「いらっしゃいませ。お客さんよく分かりましたね。…絆、円満などの意味を持つから、恋人に贈るのに丁度いいですよ。」

「あ、すみません。もう一度言ってもらえますか?」


私は、最後の方が聞き取れず、商品から顔を上げて聞き直したが、店員はニッコリ笑っただけだった。


「これを頂こう。」


私の横からジェイクが財布を出しながら、私が見ていたティアドロップ型のネックレスを指す。


「え?」

「これが気に入ったのだろう?」

「いえ、別にそうではなくて。それに、買うなら自分で買いますよ。手持ちもありますし。」


お父様から、自由に使っていいとお金はある程度貰っているので、私はきちんと財布を持ってきていた。

学園や家にいると、ほとんど使わないので、使うのを楽しみにしていたところもある。


「彼女さん、そういうのは彼氏さんに買ってもらいなよ。彼氏さんだって自分のお金で、自分の目の色をしたアクセサリーを贈りたいはずだよ!」


見ていたグレームーンストーンの色は、ジェイクの目の色と同じだった。

だから、私も見入ってしまったというのは確かだ。


「そういう事だ。」

「ジェイク…。それなら、私からもプレゼントさせてくださいね。私の目の色の物。」

「今日はリアの誕生日だったはずだが?」

「では、ジェイクの誕生日の前祝いと言うことで。」

「まだ、2ヶ月も先だぞ?」

「お願い…。」


ジッとジェイクを見つめると、ジェイクが折れた。


「…分かった。」

「ふふっ。形は何がいいでしょうか?」

「リアに任せる。」

「ブレスレット?ネックレス?カフス?ピン?ゔーん…。」


ブレスレットも、ネックレスも動きの邪魔になる?気にならない人もいるだろうけど…。

カフスやピンは騎士服に使えないわよね?せっかく買うならいつも使えるものがいいわよね…。


なかなか決められず色々見ていると、私が考えている間、店内を見ていたジェイクが話しかけてきた。


「やはり、俺が決めていいか?」

「すみません。なかなか決められなくて…。」

「いや、よく考えて選んでくれているのは嬉しいし、ずっと見ていられる。そうではなくて。」

「ん?何か気に入ったのがありました?」

「ああ。買ってくれるなら、これがいい。」


それは、シルバーの四角い台座にタンザナイトがはめられたネックレスだった。


「ネックレスは動くときに邪魔になりませんか?」

「…もしかして、そういう事を考えて悩んでいたのか?」

「ええ。仕事に差し支えがなくて、いつも身につけられる物はないかなと…。」

「リア。」

「はい?」

「抱きしめていいか?」


!!!


一気に顔が赤くなる。


「な、な、なんて事を。ここでは駄目です!」

「では、後でな。」

「あ、後!?」

「今、していいのか?」

「…あ、とでお願いします。」


しない選択は無いのね…。


店員に笑われた。


「これなら大きくもないし、動きに影響はない。何よりこの石の色が、リアの目にしか見えない。」

「あ、ホントですね。彼女さんの目をそのまま取り出したような…。いや、表現が悪いな。すみません。」

「いや、俺もそう思ったからな。」

「では、これを。」

「はい。チェーンは長さと太さを決められます。こちらから選んでください。」


チェーンは6種類あった。

私はトップが鎖骨辺りに来る細いチェーンを、ジェイクはトップが胸辺りにくる長めのチェーンを選んだ。


店員は2つのネックレスをそれぞれ紙袋に入れてくれた。


「ありがとうございました!」


私達は、街歩きを再開した。




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